デジタル・シフトに遅れたら負け

デジタルマスター今年9月発売の『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略』から「待っている時間はあるか?」を紹介します。

デジタルマスターに達している比率は、業界ごとに異なります。比率が高い業界にもかかわらず、そこに達していない企業は、すぐにアクションを取らなければ負けてしまいます。また、比率が低い業界だからと言って安心するわけにもいきません。比率はあくまでも傾向にすぎず、先行している競合は必ずいるからです。結局、どのような業界にせよ、デジタルマスターに向けたデジタル・シフトの波に乗り遅れたら負けなのです。特に日本企業はデジタル・シフトについてはアメリカ企業に遅れている傾向があります。グローバル競争を考えた時、もう残された時間はあまりないと考えた方がいいでしょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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待っている時間はあるか?

デジタルへの移行が他の業界よりも早く進んでいる業界がある。旅行業界や出版業界では、何年も前からデジタルに特化した競合やデジタルでの販売に直面してきた。しかし、まだデジタルがあまり脅威になっていない、医薬品や公益事業(電気・ガス・水道)のような業界もある。そのような業界にいる場合は、待っていても大丈夫だろうか。

デジタル熟達度

図には、業界別のデジタルの熟達度を示した。それぞれの点は、20社以上が集まった業界の、平均的な熟達度を表している。デジタルマスターの象限にすでに入っている業界もあれば、まだ遅れている業界もある。ハイテク業界の多くの企業はすでにデジタルマスターである。一方で、医薬品業界のデジタルの熟達度ははるかに低い。通信や消費財などの業界は、デジタルマスターまであと一歩のところにいるが、デジタルマスターになるためには、デジタル能力かリーダーシップ能力、あるいはその両方をもう少し備える必要がある。あなたの会社が業界平均以下なら、急いだほうがいい。

しかし、業界に後れを取っていない場合はどうだろうか? あなたの業界が、消費財や医薬品、製造業などの「初心者」の業界であれば、まだ時間があると思うかもしれない。つまり、業界全体が遅れているのであれば、わざわざデジタルマスターになるためにコストや労力をかける必要はないと考えるのだ。このような考え方は理解できるが、間違っている。

あなたの業界がデジタルマスターの象限に入っていない場合、「自社は他のどの企業よりも先に、デジタルでの優位性を確立できる」と考えることもできる。この考え方は先ほどよりは少し正しいが、やはりまだ間違っている。

あるいは、競合他社を観察し、素早くその後についていけばいいと思うかもしれない。この姿勢もあまり正しくない。競合を出し抜くには遅すぎるし、デジタルマスターにならなければ素早く後を追うこともできないのだ。

あなたの会社がデジタルマスターでないなら、下図は良くない知らせかもしれない。下図では、業界別に象限ごとの企業の割合を示している。ほとんどの業界では、調査対象とした大企業の4分の1以上がすでにデジタルマスターだ。さらに重要なことは、すべての業界ですでに少なくとも1社のデジタルマスターがいることだ。言い換えれば、医薬品から製造、ハイテクまであらゆる業界で、すでにデジタル優位性で成果を上げている企業がいる。つまり、そのほかの企業は出遅れているのだ。

デジタルマスター

このような状況において、行動を起こさないわけにはいかないはずだ。考えてみてほしい。デジタルマスターになるには3、4年しかかからないものの、業界の一部の企業はすでにデジタル優位性を確立している。しかも、あなたが必要な能力を構築しはじめる間にも、デジタルマスターはすでに持っている能力を活用できるのだ。あなたが追い付こうとしても、デジタルマスターはもっと先に行ってしまう。

(本項担当翻訳者:許勢仁美 グロービス・ファカルティ本部主任研究員)

『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略』
ジョージ・ウェスターマン、ディディエ・ボネ 、 アンドリュー・マカフィー (著)、グロービス (翻訳)、
ダイヤモンド社、3,024円

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