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W杯日本対ポーランド戦に見る確率思考とダウンサイドリスク回避思考の是非

投稿日:2018/07/02更新日:2019/04/09

サッカー今回は、サッカーW杯のグループリーグ第3戦、日本対ポーランドの試合を振り返りながら、確率思考とリスクというものについて改めて考えてみましょう。

詳細な状況はすでに各所で紹介されていますし、複雑になるので省きますが、およそ10分の試合時間を残し、日本は「攻めない、イエローカードを受けない」という戦略に徹し、時間を消化するパス回しに徹しました。ポーランドも勝利はほぼ確定しているため、必要以上の追加点は狙ってきませんでした。同時刻に行われたセネガル対コロンビアでセネガルが1点差で負けた結果、今大会から導入されたフェアプレーポイント(イエローカードやレッドカードの数によって決まる)の差で日本は決勝トーナメントに進むことになりました。

決勝トーナメント(ベスト16)に残ったことを考えれば成功ともいえるこの戦術ですが、一部には非常に不評を買いました。特に現地で観戦していたサポータには不評だったようです。

「もしセネガルが同点に追いついていたら、みすみす負けに行ったようなものだ」
「スポーツの理想やスポーツマンシップに反する」
「とにかく醜い」
「サッカーファンを減らしてしまう」等々

しかし、確率論から考えて、この戦術は本当にまずかったのでしょうか?ゲーム理論的には、厳密にいえば今回の状況は同時進行ゲームになるわけですが、ここでは話を単純にするため、セネガル対コロンビアの試合結果は基本的に独立に決まるものとします。セネガルも最後に猛攻を仕掛けましたが、コロンビアも真剣でした。仮に同点に追いつかれ、日本がアディショナルタイムに2点を入れることにでもなったら(実際に韓国対ドイツ戦ではこれが起こりました)、彼らがグループリーグ敗退となってしまうからです。

セネガルが真剣に守る強豪チームのゴールを残り10分間で割れる確率の判断は難しいのですが、ここでは7%程度(※)と考えましょう。日本の決勝トーナメント進出の利得を100、敗退の利得を0とすると、期待値は100×93%+0×7%=93となります。日本が首尾よくカードを出されずに0:1の敗戦のまま試合を終えられれば、93の利得を得られるわけです。

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一方で、あくまで自力進出を狙ってたらどうでしょう。筆者も試合を見ていましたが、点を取れる可能性は3%程度(※)、逆にカウンターを食らって点を失ったり、カードを出されて敗退がほぼ自動的に決まってしまう可能性は15%程度(※)あったと思います。そうすると得られる利得の期待値は、100×3%+93×82%=79.26となります。机上の議論の域は出ないのですが、実利面に注目した利得を比較すると、今回の戦術は理には適っているのです。

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西野監督や日本代表の名声面はどうでしょうか? 名声の利得を計算するのは難しいのですが(さらに言えば、同じ尺度で評価できるかという問題もありますが、ここではほぼ同等のものとして考えます)、仮に図3や図4のような前提を置けば、西野監督はまさに「名を捨て実を取る」戦術を選択したことがわかります。

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今回、筆者が感心したのは、「名を捨て実を取る」に徹したこともさることながら、「もしセネガルが同点に追いついていたら」という可能性を過大に評価しなかったことです。もし現状維持戦略をとって、(可能性が低いとはいえ)セネガルが同点に追いついたら、西野監督は永遠に愚将としてサッカー界に名を残すことになったでしょう。下手をすると家族にまで迷惑が及びかねません。人間はそうしたダウンサイドのリスクに直面すると、それが小さな確率であっても過大評価したり、避けようとするものです。おそらく西野監督もそうした悪夢が頭をよぎったことでしょう。

しかし、あくまで確率思考に徹し、最善の(と筆者には思われる)戦術を徹底した点は、ビジネスパーソンにとってもヒントがありそうです。

※いずれも筆者がこれまで観戦してきた中での感覚値です。これらの計算は、確率の見積もり次第で変わってくることを断っておきます

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