インターネットの次の社会は?―DMM亀山会長×スマートニュース鈴木氏×グリー田中氏の大放談 

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本記事は、第10回G1サミット第6部 分科会「ネットの次のフロンティア~トップランナーたちの大放談2.0~」の内容を書き起こしたものです。(全2回)前編はこちら>>

トレンドは人口生命とAI

高宮:では、続いてBeyond Internetのほうはどうでしょう。この先の5~10年後にどんな社会が来て、そこでどんなビジネスチャンスがあるのか。まずは大きな社会ビジョンを語らせたら天下一品の健さんから。

鈴木:僕はトレンドを読むのが得意なわけじゃないんですが、何かのトレンドが来るずっと前からそれをやってることがすごく多かった。修士論文のテーマもニューラルネットワークで、当時は「計算パワーが早くなるとこういう時代に来るんだ」と思ってました。

その意味で、今はトレンドもぜんぜん来てないけど、「これから来るよ」と、皆さんを説得したいのが「人工生命」です。(フロアを指して)今日は北野(宏明氏:株式会社ソニーコンピューターサイエンス研究所 代表取締役社長)先生もいらっしゃいますが、あえて言うと人工生命がくるんじゃないかって。僕ももともとはArtiificial Lifeということで研究をしていて、東大の池上(高志氏:東京大学大学院情報学環教授)先生のところで指導教員をやっていました。

北野先生も人工生命に関して初期のムーブメントをつくり出したお一人ですけれども、人工知能が今「来てる」のは、基本的にはコンピュータのパワーが大きくなったのと、カナダのジェフリー・ヒントン教授がディープラーニングでインパクトの大きな結果を出したから。それが数年前の話で、そこから一気に現在のような状態になったわけです。「真面目にコツコツやってると、ああいうことが起きるんだな」というのは、僕にとっては結構衝撃でした。

人工知能と人工生命は、ある種、双子の分野というか、互いに影響や批判を交わしながら進化してきた分野です。人工生命の分野というのは、人工的に生命をつくろうと考えることで、生命とは何かを理解しようという分野なんですよね。それで、ある種オモチャみたいなモデルをつくっていろいろな実験をしてきた。そのなかで、今までは何か役に立つアプリケーションが出てきたわけでもなかったけど、恐らく今後は違う。コンピュータが速くなって、そしてライフサイエンス等の分野とも結びついていくことで、かなりインパクトの大きい分野になっていくんじゃないかなと思います。

高宮:ちなみに人工生命では具体的にどんなことができるようになるんですか?

鈴木:まだ「こういう風に役立ちます」といったフェーズではないんです。人工知能と同じです。人工知能も「知能とは何なのか」を探求するため、知能そのものについて探求して考えるのでなく、つくるということを通して知能を理解していこうという分野。今はそれが実際にアプリケーションのレイヤーでブレイクしてますが、それは膨大な基礎研究があったからです。「そもそも知能とは何なのか」を、人工知能という研究分野を通して理解しようとしていたんです。それが今、応用の分野で花開いてる。人工生命も同じで、アプリケーションの話を今するのはちょっと早い。今は「生命とは何なのか」を皆が探求しようとしていて、そこから応用分野も花開いていくと思うんですよね。

ただ、どんな世界になるかといった話をすると、インターネットの次って「インターセル」だと思っています。細胞同士がコミュニケーションする。インターネットによって何が変わったのかというと、たとえば僕の脳と田中さんの脳が、TCP/IPや網膜を通じてコミュニケーションしていたわけです。ラインやフェイスブックでチャットするときも、基本的には脳と脳でコミュニケーションしていた。でも、体の中では細胞同士もさまざまなシグナルを使ってコミュニケーションしているわけですよね。

で、次はその細胞同士が上のレイヤーというか、テクノロジーのレイヤーを通してコミュニケーションする時代が来ると思うんです。僕はあまり細胞や生物学について詳しくないんですが、おそらくはそこにブロックチェーンみたいなテクノロジーが関係してくるのではないかなと思ってます。

高宮:いい感じで皆さんポカーンとしたところで(会場笑)、続いて「インターネットのなかさえまだやり尽くされていない」とおっしゃっていた田中さんはどうでしょうか。

田中:僕は、ビジネスとしてはもっと地味なレイヤーを。たとえば今は藤田(晋氏:株式会社サイバーエージェント代表取締役社長)さんがAbemaTVをやってます。あれも「ネットでテレビを観ることができたらいいじゃん」ってことがまだ実現していなかったから、誰かがある形で実現するわけですよね。同じように、世の中には実現したら良くて、でもまだ実現していないことがいっぱいあると思うんですよ。そういうのを地道に1個ずつ実現するってことが、ビジネスレイヤーでは意味があるのかなと思ってます。

ただ、もう少し“放談レベル”の高い話をすると、今一番注目してるのはやっぱりAIですね。たとえば囲碁で「人間が理解できないけれども、なんだか知らないけれども、一番勝てる打ち手」が発見されたなんていう話を聞いたとき、衝撃を受けました。僕は今まで人間の英知や長年の結晶というのは人工知能も届かない大変なレベルにあると思っていたんですが、そんなものも余裕に超えるものが存在していたわけですよね。

何がヤバいかって、それが合理的なところ。人間に理解できない合理的なことがまだ世の中にはたくさんある、と。人間が一生懸命考えた合理性なんて、合理性のほんの一部しかなかったと立証されしまった。それが僕にとっては驚異的でした。そうなると、今まで合理的だと思っていたいろいろな物事もどうなるのかって。もっと合理的なことが一杯あるなんていう考え方になっちゃうと、一体何を信じて生きていけばいいかよく分からない。そういう巨大な問題に今は到達して、それで困ってますね。

高宮:基本的に、AIっていうのはビッグデータを投入して学習させると「なんで正しいか分からないけど、必ず正しいことを返してくる」ということですね。

田中:「なんでこの診断なんですか?」「いや、ちょっと分かんないけど、AIは当たるんです、囲碁みたいに」って言われたらどっちを信じていいのか。悩んじゃいますよね。

高宮:そうなると、また先ほどの制度論みたいになって、「責任はどこに生じるのか」「AIに責任は取れるの?」なんていう話になっちゃいますね。

田中:車を運転していて、人間は「ここで右ハンドルを切ればいい」と思ったけど、AIは「左に切った方が事故にならない」となったとき、どっちを信じていいのか。もう囲碁の場合は人間が悩んで出した打ち手よりもコンピュータが考えた打ち手のほうが正しいってことになってるから、それならコンピュータを信じればいい。でも、生命や財産が関わる問題でどこまで依存していいのかって考えると、結構悩ましいと思いました。

ソーシャルエコノミーはビジネスになるのか?

6高宮:亀山さんはいかがですか?

亀山:たとえば息子に「今何が欲しい?」って聞くと、「今は『いいね』だよね」って言うわけ。そういえば、たしかに最近の若いやつは「ガツガツしてない」とか「お金に執着してない」とか言われるけど、「いいね」の数にはこだわったりするようなところがある。俺も少し前にYouYubeをはじめたんだ。バーチャルYouTuberみたいに顔だけCGみたいにして。相手は出すんだけど俺だけ顔が隠れてるってやつをはじめた。これも「いいね」欲しさかな。

結局、「100万円よりも100万『いいね』のほうが価値はある」みたいな感覚が、特に今の若い層にはある。たぶんそれは今後も増えてく気がする。お金の収入より、そっちに対するモチベーションのほうが大きくなってきて。だから別セッションでシェアエコノミーの話になったとき、「皆でシェアしても車は売れます」「皆、それをベースにしてモノを買うんです」って言ってだけど、あれはウソ。実際には買わなくなるよね。

自転車がレンタルで済むようになったら、たしかに最初のうちは売れるけど、そのうちみんな買わなくなって効率良く使うようになる。自動車の場合も台数は減ると思う。ただ、そんなこと言うと製造業に怒られるからみんな言い訳をしてるんじゃない。「僕たち、製造業の邪魔はしません。GDPも下げません」って。でも、実際にはGDPにしたって下がるんじゃないかなっていうのが俺の考え。効率を高めれば、どうしてもモノの生産量は下がってもいいって話になる。

だから、これから先はGDPみたいな生産力や総生産の大きさに価値や幸福があるっていう考え方自体から離れないといけない。GDPじゃなく、国民総「いいね」(会場笑)。幸福に関わる価値観が少しずつ変わっていくことになると思う。

最近は、たとえば株式市場だって地球に良いことをしてる銘柄とか、社会のことを考えてる銘柄に投資しようなんて方向に、比較的なってきてる。大手の機関投資家でさえそういうことを言い出して。世の中全体で「良いことしたい」っていうトレンドになって、それが経済や株価にも影響を与えたりしてる。逆にブラック企業は株価を下げたりして、いくら儲けても「ちょっと違うよね」って思われたり。そういうことが、これからのトレンドになってきてるような気がする。

田中:ただ、そんな風にして「いいね」を集めたい皆さんがビットコインに張りまくって投機の波に飲み込まれているわけじゃないですか。「『いいね』経済」とビットコインみたいな投機に走ることにはどんな関連があるんですか?

亀山:ビットコインに張るのは、あれははっきり言って金欲しさだよね(会場笑)。でも、もともとビットコインがつくられた流れとしては、中央集権型じゃない通貨をつくろうっていうのがあった。あれがなぜ生まれたかっていえば、結局は国や会社が担保するんじゃなくて、みんなが認証する通貨にするっていうのがあったから。

なぜフェイスブックをみんなが使えるかっていえば、みんながつながっているからそれが担保になってる。「あ、この人とこの人が友だちだから、この人も信用できる」みたいな。どっかの国や肩書きじゃなくて、それが信用できるということじゃない? ブロックチェーンも同じで、国や会社は信用できないけど大量の個人なら信用できるってことで通貨を担保する。だから信用っていうのもすごく広い。誰かが決めるんじゃなくて多くの人が決めたりする。「いいね」もみんなの信用で決めるっていう。

田中:もう1つ、ビットコインで壮大な矛盾というかアイロニーとして面白いのが、「政府が関わらないからいいんだ」と言いながら、何か問題が起きたら「なんで政府が取り締まらないんだ」となるところ。そういうよく分からない大衆感覚が存在してる。何か起きたときに保障して欲しいなら政府の管轄下に入らなきゃまずいし、逆にそれならビットコインじゃなくなっちゃう。「どっちかハッキリしてくれ」という思いもあるんですよね。

亀山:国や金融庁からすれば、はじめは「開放しろ」とか言って、次はいきなり「どうしてちゃんと見てないんだ」なんて言ってくるわけだから、割に合わないって感じるとは思う。でも、大衆ってわがままなもんですからね(会場笑)。ただ、もともとの概念としては今言ったような考え方がある。今はそれをよく知らず、友だちに「儲かる」って言われて「じゃあ買ってみようか」なんて言ってた人たちが、「なんでこんなにいい加減なんだ」って文句言ってるわけ。でも、誰かが「いいね」を付けてることで、その人の信用を周りの人間がつくるという世界は変わらないっていうイメージがある。

テクノロジーっていうのは、どうしても流行りはじめる段階で「それが儲かる」とか、投機的な話が出たり、欲望がらみの話になったりする。たとえばVHSだって本来は「お茶の間でいろんな録画ができますよ」って話だったけど、はじめの頃は「これでアダルトが観れます」なんてことで普及した。だから本来の目的以外の話が起爆剤になるっていうことはどうしても出てくる。でも、そこがイコールだと思ってもらうと、それはちょっと違うのかなと思う。

高宮:そういう意味では、今は金融業界で使われている「信用」という言葉が、社会で一般的に使われている「信用」という言葉と同じような概念で使われる感じになってきていますよね。いわゆる「ソーシャルエコノミー」というか。世界で最初のモバイル SNSをつくったグリーとして、そのあたりのソーシャルエコノミーがどういう感じでやってきて、そこでビジネスチャンスがどの辺にあると思ってらっしゃいますか?

田中:最近の中国が超いい例だと思います。今週だったか、警察官がAR機能の付いたメガネをつけて瞬時に顔認識をして、たとえば不法な労働者をバンバン捕まえているなんてニュースがありました。「それで1日で30人捕まえました」みたいな。そんな風に、今はすごい勢いで顔認証のテクノロジーを国家が採り入れてる。で、今まではアリババなんかがそういうサービスをやっていたんだけど、「これは国のサービスだからお前ら全部やめろ」と。民間の顔認識や信用のサービスがすべて止めさせて、国家がすべて接収するってことを今週のニュースで知って衝撃を受けました。

でも、それが一番安全っていう仮説もありますよね。今の中国で無人コンビニが発達してるのは、そういう顔認証システムがあってモノを盗んだらばんばん捕まっちゃうから。それなら盗むのは止めようっていう、よく分からない、ある意味では最も安全な社会に到達しはじめてる。そういう「国家が全部握ったほうが実は安全」説と、「国家に握られたらまずい」説のどっちが正しいのかというのがよく分からなくなってきています。

亀山:その意味だと今の日本だってみんなグーグルに抑えられてる。顔認識にしたって、たぶん検索すればみんなの顔もだいたい出てくるよね。で、それが「グーグルグラス」みたいなものとくっついたら、パッと見て「あ、この人は年収がいくらで肩書は◯◯だ」とか、会場にいるみんなの正体だってすぐ分かっちゃう。唯一分かんないのは俺だけ、みたいなね(会場笑)。

高宮:実際、中国では現場の警察官にグーグルグラスみたいなものが支給されて、顔認証で犯罪者が分かるなんていうことがはじまっているわけで、これは(ジョージ・オーウェルの小説に登場する)「ビッグ・ブラザー」的な世界観が見えてきちゃっていますね。

田中:しかもそれが毎週進化してる。再来週ぐらいにはまた違うニュースがあるかもしれませんよね。

インターネットは中央集権的なのか、民主主義的なのか?

高宮:健さんは、テクノロジーが社会に与えるインパクトについてすごく深い思想をお持ちじゃないですか。今お話に出たような中央集権的な側面と、民主主義的な自由とのバランスについて、どんな風に見ていますか?

鈴木:インターネット自体はすごく民主的なテクノロジーだと思いますが、実際には時間が経つに従ってどんどん集約化されるわけです。メディアの歴史を見てみると同じようなことが結構あった。ラジオだってもともとはP2Pで無線通信をしていたのに、ラジオ局ができて音楽を流すようになったらマスメディアになってしまった、みたいな歴史もあります。そういうことはよく起こるわけですね。

実際、インターネットを今支配してるのはフェイスブックやグーグルじゃないかといった話はありますし、そういう現象自体は起きる。ただ、今はイノベーションのスピードが早いから、基本的にはそういうことが起きても次のイノベーションのレイヤーが立ちあがって、それほどたいした問題にはならないか、なったとしても限定的でした。ところがイノベーションのスピードが落ちると、強いところが強い存在のままになってしまう可能性がある。そこで、「そうした強い存在に対してしっかりとした法規制が必要ですよね」という議論は当然あると思います。

一方で、インターネット全体の長期的なトレンドはすごく民主主義的な考え方になっていくと思うんですが、バランスを取るという意味では、僕は共和主義になると思っていて。僕は大統領選の視察で1週間ほどアメリカに行って、トランプさんやヒラリーさん、あるいはオバマさんが登場するキャンペーンを見てきました。そのあとトランプさんが大統領になったのを目の当たりにして、「これは歴史的なすごく大きな変化だな」と思って、今年の正月に合衆国憲法の理念等を勉強してみたんです。

それで知ったんですが、実は合衆国憲法の理念って民主主義じゃなかったんですね。共和主義。アメリカ建国の父たちは民主主義をあまり信頼していなかった。フランス革命がある種失敗したというその反省を受けて、当時の知識人たちは、基本的には「民主主義は衆愚政治に陥りがちだ。うまく機能しないだろう」と考えていた。

共和主義は、そういう部分でしっかりチェック機能を働かせていく。それでさまざまな機関が人体のいろいろな臓器のように、それぞれに役割を果たす。アメリカ合衆国の憲法で初めて三権分立が成立したと言われますが、そうして各機能が役割を果たしていく。実際、トランプさんが大統領になってどうだったか。当初想定されていた以上のことだって起きたかもしれないけど、やっぱりチェック機能がすごく働いていて、法律のなかでしか物事が動かせていないわけです。

(インターネットも)そういう形にならざるを得ないのかな、と。テクノロジーはすごい勢いで進化していって、長期的には根本的な変化が絶対に起きるんです。でも、やっぱり今の段階ではチェック機能を相互に働かせながら、今いる人たちを幸せにしなきゃいけない。未来の人たちを幸せにすることだけがテクノロジーの目的ではなくて、今生きている人たちを幸せにしなきゃいけない。そのためにしっかりとしたチェックアンドバランスを働かせることが必要だと僕は思います。法律は守ります(会場笑)。

田中:健さんに思想的な部分で聞きたいんですけど、さっき話したような、「実は国民が一番安心するのは、中国のように顔認識で国家がすべての人の身元を常に明らかすること」説についてはどうですか?

鈴木:安全という意味では絶対にそうなりますよ。ただ、それで実際に人々にとって本当に良い政治が行われるかというと…。民主主義は、基本的に「人は絶対に間違える」と、完全に正しい判断をする人間が存在しないということを前提にしてるわけです。完全に正しい判断ができる人間がいるなら民主制を採用する必要はなくて、独裁でいいわけで。「すべての人が『自分は間違える可能性がある』と認めることからはじまるわけで、だから民主主義では対話が必要になるわけですよね。

その意味で、すべてのデータによって何者かに監視されているという状況が、人々がそれに対して「問題だ」ということに、つまり言論の自由や思想の自由に、なんらかの損害を与えるなら、それはやっぱり大きな問題として歴史はそれを証明すると僕は思ってます。

田中:その結果、マイナンバーも広まらないという問題に、日本ではなっていると思うんですけれども。

高宮:今すごくいい投げかけをいただいたので、この辺で会場の皆さんからもご意見・ご質問をいただければと思います。

会場:法律というものはそもそも中央集権的なものだと思っています。でもブロックチェーンのようなテクノロジーは分散型の考え方なので、取り締まる相手がいない。コインチェックの件でも、仮想通貨が取り締まられているように見えて、実際には中央集権的な取引が取り締まられただけ。仮想通貨自体にはなんのメスも入っていません。今後、そうした分散型社会やサービスが普及していったとき、中央集権型サービスそのものであるインターネット業界はどういった脅威にさらされるとお考えでしょうか。

亀山:脅威って意味だと、これからは国家じゃなくて企業の脅威に晒されることがあるかもしれない。たとえばマイニングをしている人間が、その通貨についてある程度の権限を持つ可能性があるわけよ。サーバーをたくさん持って認証させて、ビットコインを最後まで掘り終わったあと、「じゃあ今度はそこから手数料を取るか」とか、いろいろ考えるかもしれない。そういった、今は裏側でビットコインを支えている人たちが今後何かの脅威になる可能性が、ないことはないかな。でも、まあ、それでも分散されるから国家よりはいくらかマシかなっていうのが、たぶん今の理念なんじゃないかな、ブロックチェーンについては。

鈴木:「法律や国は中央集権だけれども、ビットコインやブロックチェーンは分散型」というご指摘ですが、実際には国家にもいろいろな形態があって、本来は分散的な仕組みでもできる筈なんです。でも、テクノロジーや文明がまだ未達だからこそ、それができていない可能性がある。

ブロックチェーンのテクノロジー自体が目指してるのは、むしろそこなんですね。スマートコントラクトですとか、「イーサリアム」のファウンダーの人たちが考えてるのは、ある種、契約というもの自体が分散的テクノロジーで実行可能ということ。もちろん、その契約レベルのレイヤーと憲法等で保証しているレイヤーは違います。でも、たとえば僕が5年前に書いた『なめらかな社会とその敵』(勁草書房)でも、最終的には社会契約を、ある種の人工言語と自然言語のハイブリッド…、そのときは「サイバーラング」という言葉を使っていて今はスマートコントラクトと言われていますが、それで記述することが可能かということを論じていました。

ここまで来ると、中央集権的と思われているものに関しても分散的なテクノロジーでガバナンスを記述できる可能性がある。コアで「イーサリウム」の運動をしてる人たちは、そこを目指してるし、そこは僕も昔から考えていたことだからすごく共感しています。ところが、今はそういう話とはまったく違うことが…、たとえば「ICOが云々」とか「お金が儲かった云々」とか、そんな話ばかり出ちゃってる。だから規制等の話になるんですが、とにかく最終的にはそういうことを目指しているという感じです。

高宮:思想と社会実装にまだ乖離があるという感じですよね。

亀山:でも、いろんな風に混ざったほうがね。国家だけっていう単純な構造じゃなくて、「金儲けでも互いに関係する」とか、「通貨の認証が世界中でバラバラに分かれてる」とか、いろんなものが混沌としていたほうが戦争は起きにくいよね。国家や国境しかなかったらぶつかりやすいけど、いろいろな通貨も共通でやってたりするほうが世界的にちょっとマシかな。せいぜい金の奪い合いぐらいで血は流れない。そういうのがいいなって思います。

P2Pのあるべき姿とは?


会場:「ネットは民主主義的なものをバックアップする」と言われていたのに、今は巨大なトップダウンみたいなものが世界を席巻しようとしています。それに対して日本のビジネスはどうあるべきでしょうか。今はトランプさんや中国、あるいはロシアのパワーってすごいじゃないですか。そういうものに対抗していく「ネクスト」として、皆さんはどういうビジョンを描いていらっしゃるんでしょうか。それと民主主義との関係がどうなるのかということも併せて伺いたいと思っています。

高宮:残り4分。今日はせっかくなので北野さんにもコメントをいただいて、そのあと今の質問に対してどなたかに答えていただけたらと思います。

北野:今はグーグルやアマゾンやIBMやフェイスブックがつくった「パートナーシップ・オン・AI」という研究団体があります。そこのメンバーが知り合いばかりだったから「ソニーもどう?」と言われてすぐ入ったんですね。それで最初のミーティングを昨年11月にやったんですが、「AIが世の中を変える大きな技術になるだろう」という認識のもと、そこに来た人の3割はヒューマンライツ系の人でした。ヒューマン・ライツ・ウォッチとかアムネスティとか。で、その基本的なトーンセッティングは「社会的に大きな変革があるだろうけれど、そこで絶対に歪みが出る。それに対して早く手当てをする」ということ。それと「‘AI for Social Good’である」と。人類を救うにはもうAIしかないというのを前面に出す方向に、今はなっています。

そうした議論のなかで皆が一番危惧しているのは、「この場に中国企業がいないよね」という点。「じゃあ、どうやって中国企業を入れるか」という話と、「入れたときに彼らのルールになっちゃうとまずいね」という部分が、かなりのシリアスイシューになっています。ルールが違うから。しかも、あの社会主義的な部分とビッグデータというのは非常に相性がいいということが分かっちゃったから、「これ、どうしよう」ということで今はすごく頭を痛めています。その辺をちょっとシェアしておきたいと思いました。

それともう1つ、さっきの分散の話について。どうやって分散するかという点で言えば、たしかにイーサリアムも「Distributed Autonomous Organization」ということでずっとやっています。UberやAirbnbもP2Pと言いつつ、「でもUberって中央集権型だよね」というのは当然議論になっていて、あれを全部バラして本当のP2Pにするんだという議論を彼らはしているわけじゃないですか。

でも、よく考えてみるとスマートコントラクトですべて成り立つような金融トランザクション等は良いにしても、物理的なモノが入ってきたときはどうか。P2Pでサービスを提供するところがろくでもなかった場合も当然あるわけです。でも、そこで文句を言う先がないんだよね。その状態で本当に分散にしちゃったとき、サービスを受けるサイトが大変なカウンターパーティリスクをすべて背負わなきゃいけなくなるという問題がある。そこをきちんと解決できないと本当のP2Pはできない。逆に人が介在するとまずいから、そこはすべてAI等にやらせるという風にして、人のいない経済をつくらないと本当のP2Pはできないんじゃないかなと思っています。そのあたり、どんな風に考えていらっしゃるかなというのをお聞きできればと思います。

高宮:めちゃくちゃ大きなイシューが出た状態で残り2分になっちゃいました。

田中:まさに今のUberが完全にP2P化しちゃうとか、今日のブロックチェーンの話とか、あとは最近のフェイクニュースの話とか、全部同じだと思ってます。「完全にP2Pになったら何が起きるか、皆、分かってます?」みたいな。「それで本当に耐えられる人が世の中にいますかね」っていう壮大な問いだと思うんですよ。

しかも、たとえばグーグルのすごく頭の良い人たちが絶え間なく考えに考えてアルゴリズムをつくっても、フェイクニュースのほうがバンバン広がったりしているわけで、「どうやら無理らしい」と。フェイクニュースのほうが人類の英知を結集したAIよりも上という、しょうもない結論にも今は達しつつあって(笑)。タイムラインでさえ制御できない状態で、P2Pのお金や移動手段をつくっちゃったら何が起きるのか、もはや分かんないっていうのが恐怖ではあります。

鈴木:何が起こるかわからないから人生楽しいですよね。何が起こるか全てわかっちゃうとつまらないじゃないですか。結局、イノベーションっていうのはそういう未知のものに向かってやっていく必要がある。やっぱり世界って複雑なわけです。会社の経営とか国の運営をしていると、なるべく単純化したくなる気持ちは出てくると思います。でも、その一方では世界が複雑であることを包容していく気持ちというか、受け入れる気持ちが一番重要で。

子育てにしたって同じです。自分が予想していない方向に子どもが育ってしまったとき、それを楽しめるか。自分自身がどんどん変化してしまうとか、人生のなかで自分が予想してなかったことが起きたとき、それを楽しめるかどうか。世界の複雑さを増大させて、それを許容していくというのが、僕は今のテクノロジーが持つ最大の価値だと思っています。あるいは、そこで僕らはなるべく早めに…、もう会長なんでなるべく早く引退して若い人たちに考えてもらう、と。早めに世代交代していくぐらいが良いのかなとも思っています。

亀山:最後に1つだけ。日本は比較的、ビットコインも流行ってるとは言われてるけど、結構みんな日本円を信用してると思うんだよね。中国が怖がってるのは、下手をすると誰もが「元から仮想通貨に移行しちゃうんじゃないか?」みたいな。そう考えると、日本ではタクシーも円も信用度が高い。誰もが信用せず互いにチェックし合う機能ってのが世界的には普及しやすいけど、日本は比較的「今のタクシーでいいんじゃない?」「ビットコインをやっても別に円はなくならないよね」みたいなのがあって…、あ、(進行にボードで)「終了」って言われちゃった。さよなら(会場笑)。

高宮:複雑性を包容して世界を信用できるようにするテクノロジーということで、「その未来は明るい」と。いい感じで締まりました。ありがとうございます。(会場拍手)

19歳で露天商に師事し、様々な地域でアクセサリー販売を手掛ける。その後、24歳の時に家族が経営する飲食店を手伝って欲しいと請われ石川に帰郷。雀荘やバーなどの経営を経て、1980年代後半レンタルビデオ店を開業。その後、卸売を通さないDVDの販売ルートの確保や、販売時点情報管理(POS)の開発/無料配布により事業を拡大。インターネット黎明期であった1998年には他社に先駆けてネット配信事業(現DMM.com)を開始し、動画配信、通販、レンタル、オンラインゲーム、英会話、FX、ソーラーパネル、3Dプリンターと多岐にわたり事業を手がけ現在に至る。

1998年慶應義塾大学理工学部物理学科卒業。2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。情報処理推進機構から天才プログラマーに認定。
著書に『なめらかな社会とその敵』(勁草書房)。東京財団研究員、国際大学グローバル・コミュニケーションセンター主任研究員等歴任。現在、東京大学特任研究員。
2012年スマートニュース株式会社(旧:株式会社ゴクロ)を共同創業。2014年9月SmartNews International Inc.を設立、Presidentに就任。同10月SmartNews 2.0を日米同時リリース。世界中の良質な情報をなめらかに発信中。

1999年、日本大学法学部を卒業後、ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソネットエンタテインメント)を経て、2000年2月、楽天株式会社入社。2004年2月に個人の趣味としてGREEを開発。同年10月、楽天株式会社を退社。同年12月、グリー株式会社を設立し、代表取締役に就任。

モデレーター

グロービス・キャピタル・パートナーズでコンシューマ・インターネットの投資を担当。戦略コンサルティング会社アーサー・D・リトルに て、プロジェクト・リーダーとしてITサービス企業に対する事業戦略、新規事業戦略、イノベーション戦略立案を主導。東京大学経済学部卒(卒論特選論文受賞)、ハーバード大学経営大学院MBA(二年次優秀賞)。

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