インターネットは終わっていない―DMM亀山会長×スマートニュース鈴木氏×グリー田中氏の大放談 

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本記事は、第10回G1サミット第6部 分科会「ネットの次のフロンティア~トップランナーたちの大放談2.0~」の内容を書き起こしたものです。(全2回)

インターネットのなかにもチャンスはあるのか?

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高宮慎一氏(以下、敬称略): 皆さん、おはようございます。顔出しNGの亀山さんをリアルに見られるということで、大人気のセッションになりました(会場笑)。さて、「ネットの次のフロンティア」ということですが、今回は「インターネットのなか」で次にどんな事業機会やトレンドが来るかというNext Internetのお話と、Beyond Internet、つまり「インターネットの次」に何が来るかというお話の2つにざっくり分けて進めたいと思います。

かつてグロービスがパートナーとして提携していたApax PartnersのAlan Patricofさん…、インテルやアップルにも投資をしていた伝説の投資家のような方は、2000年代のインターネットバブルがはじけた際、「Internet is dead」と言いました。でも、結局死ななくて普通に普及していったわけですが、今はインターネットが成熟してきてブロックチェーンやAI、あるいはVR等々、次々と新しい技術が出てきました。そうした現状について御三方はどうお考えですか? インターネットは死んだと思いますか?…おお、誰もいない。まだまだインターネットのなかにもチャンスがあるという立ち位置ですね。

田中良和氏(以下、敬称略):ぜんぜんあるんじゃないですかね。今もUberとか、いろいろ出てきてるじゃないですか。Uberは日本で今まったく普及してませんよね。「あったらいいな」というものが今まったく普及していない状態ですから、それなら可能性がないわけはないと思ってます。

高宮:亀山さんはどうですか? よくおっしゃってる「ピンクオーシャン」から、あえてインターネットに入ってきたわけですけれども。

亀山:インターネットは死んでないかもしれないけど、(自分たちを指して)ここのメンバーはもう死んでるんじゃないかな(会場笑)。さっき聞いたら「もう40代になりました」とか言ってるから。ほぼほぼ次のテクノロジーについていけないような年寄りが今話をしてるという(笑)。

鈴木健氏(以下、敬称略):さっき気付いたんですけど、今は壇上3人とも会長になっているんですよね。

亀山:そうそう。これからは会長として生きてく人生で。

田中:最近はヤフーさんも世代交代したし、僕らのほうだとKDDIさんが大株主なんですけど、あちらでも社長が交代されたりして。結構、僕らが昔から知ってる方々が今は社長になりはじめてる。あと10年ぐらいしたらみんな会長になったり引退したみたいになるんですよね。「早いな」って。

亀山:だからさっきも「俺たち、ネットの未来を語れないよね」なんて話してた(会場笑)。

高宮:とはいえ、たとえば田中さんはインターネット黎明期から活躍していて、ナナロク世代(1976年前後に生まれた起業家)のど真ん中ですよね。ゲームで一気に急成長して、今度は「新規事業で再び成長しよう」とされています。それで自ら陣頭指揮を執ってメディアやサブスクリプションの事業を手掛けていらっしゃいます。今後世代的に消費者の感覚についていけるかどうかといった部分についてどうお考えですか?

田中:今はインターネットユーザー自体が普遍化してるから、その意味ではついていけると思います。ただ、僕もまだ若手扱いされるときがあるんですけど、もう15年会社をやってますから。逆に今40歳で「15年やってもたいしたことになってないな」と思って愕然として、すごく疲れる昨今です。もっと頑張んなきゃいけないと思いつつ、「これ、いったいいつまで続けていけるんだろう」とか、そういうことは思いますね。

亀山:でも、もうみんな一発当ててるというか、ゲームで当てたり、ニュースで当てたり、エロで当てたりしてる。事業家なんてだいたい一発屋でさ、1つ当てたあと、「じゃあ、もう1個やってくださいよ」って言われてもなかなか難しいよね。一発当てるだけでもかなり難しいのに、「次も」みたいなこと言われても、だいたいうまくいかない。

フェイスブックがすごいなと思うのは、自分らで当てたくせに、そのあとインスタとかWhatsAppとか、パクればいいのに買収とかしてたところ。結局、一発当てて資産ができたり会社が大きくなったりしたら、基本的には若いやつらを買収してくとか、資金提供していくっていう方向にしないとたぶん難しいよね。「パクろうと思えばパクれるな」と思って自分たちでやってたら間違ってたと思わない?

田中:最近はインスタがスナップチャットを劇的にパクったりしてますけどね。

亀山:あぁ、そうなんだ。そういうベンチャー同士はパクリ合いや人の取り合いが激しいからね。メルカリもあっちこっちから人を抜きまくってるっていう話で(会場笑)。

田中:最近はそこからさらにDMMが引き抜いてるって噂も聞きました。

亀山:そう(会場笑)。もう血みどろの人材獲得合戦みたいになってる。

田中:メルカリに入るとそのさらに給料2倍でDMMに行けるという。

亀山:メルカリで2倍になって、さらにDMMで2倍に(笑)。

高宮:DMMもFXやゲームで急成長してますよね。そのあたり、「若い力に任せる」といったお話がありましたけれども、実際にはどうやっているんですか?

亀山:なんていうか、この年になるとね…。(鈴木氏と田中氏を指して)彼らはまだ40代でギリギリプレーヤーをやれる年頃だけど、50代になったらまずプレイヤーなんか無理だから。ビットコインとかAIとか言われてもさっぱり分からない。NHKのニュースを観て「あ、そういうもんなんだ。未来はVR?」みたいな、その程度の知識しかないってのは本当の話。だから、「こうなったら若いやつに頼むしかないな」って。だから今は若いやつらのところへ話を聞きにいって、「頼むからやってよ」みたいな話をしてる。

高宮:最近、亀山さんは未上場ベンチャーの社長だった片桐(孝憲氏:ピクシブ株式会社 元代表取締役社長)さんを引き抜いて、DMMの社長に大抜擢したりしています。あるいは亀直(カメチョク)という仕組みをつくって、新規事業を亀山さんの直下に置いて「やってみなはれ」的に何でもやらせたり、すごく大胆な手を打っていらっしゃるじゃないですか。

亀山:たとえば、「メルカリから人を抜く」とか言ったって、俺が行っても無理なわけ。説得力がないというか、おじさんに来られてもみんな怖がるし。でも、やっぱりメルカリのスピード感なんかを見てると「すごいなぁ」と思うわけよ。もうあっちからこっちから、大手からも引き抜きまくって、新しいことをどんどんはじめて。それで「これは勝てないなあ」って思ったとき、じゃあもっと若い20代のベンチャーに来てもらおう、と。

彼らに資金だけ渡して、「あとは好きにやっていい」って。そうすると彼らはメルカリよりもさらに若くて新しいコミュニティとも交流があったりするから、そこで一緒に酒飲んだりいろいろやってるうちに、「うちにおいでよ」ってなる。

だから資金の話だけじゃなく、彼らとコミュニケーションできるかどうかってことまで考えても、やっぱり俺と20代じゃ無理だから。そこを若いやつらがやってるおかげで何か新しいものが生まれやすくなってるのかな。結局、「俺、もう分かんない」とか「彼らについてけない」とか言ったりして。実は俺、謙虚なのよね、こう見えて(会場笑)。偉そうに見えるけど、自分が分かんないってことは分かってる。

Next Internet:インターネットのなかの次は?

2高宮:続いて鈴木健さん。「スマートニュース」というニュースアプリで、スマホへのシフトとともにメディアのあり方も根本的に変えていくような感じでやってらっしゃいますけれども、健さんは「その次」って何か見ていますか?

鈴木:多くの方と同じ結論になると思いますが、スマートフォンの勃興を経て今度は5Gにシフトしていくと、2020年代に「ポスト・スマートフォン」の時代がはじまるというのは、たぶん間違いないと思うんですよね。で、ここも皆さんと一緒だと思いますが、そこでARやMR(複合現実)あたりが1つの大きなカテゴリになると思います。

そこで一体何が本当にブレークスルーを起こすキラーアプリケーションになるのかは、正直、僕もよく分かりません。ハードウェア的にはそれが来るまであと3年ぐらいかかるかなと思うので、じっくり考えていこうかなと思っています。当然、ニュースのカテゴリでもそういうシフトは起きると思うのですが、「じゃあ、実際にはどうなるんだろう」と考えると、今のところまったく分からないので。

ただ、スマートニュースがブレイクしたときはどうだったかというと、もともと東京の地下鉄に乗ってたとき、「なんでみんな地下鉄でニュースを読まないんだろう」って思ったことがはじまりだったんです。で、それは圏外でつながらなかったから。それで「オフラインモード」っていうのをつくった。だから最近も同じように、とにかく街を歩きながら「この空間がARになったら何が楽しいかな」とか、ひたすら散歩しつつ考えてるような感じです。

高宮:ITやインターネットに新技術を掛け合わせて、カンブリア大爆発のようなことが起きるといったお話はまたのちほど伺うとして、インターネットのなかの「次」はどうでしょう。それをスマートニュース等でやるかどうかは別として、何か注目している領域はありますか?

鈴木:普通にブロックチェーン等だとは思います。最もインターネット的というか。

田中:健さんはビットコインとか買ってるんですか?

鈴木:7年くらい前に買ったんですよね。

田中:それを置いとけば今は。

鈴木:いや、今どこに行っちゃったか分かんなくて(会場笑)。

田中:7年前とか! 1BTCとか今半端ないですよ。

鈴木:ちょうど3.11の直前で、ビットコインのコミッターが来日して何か話したいって言うから、「研究会をやろう」という話があったんですよ。そのスケジュール自体は地震で流れたのですが、そのときに買ったんですよね。

田中:あるじゃないですか(笑)。なくなってない。

鈴木:どこかにね、どこかにあるはず(笑)。

高宮:初期に、投機でなく本当にピュアな気持ちで、技術的な実験に共感して買っていた人って、今は意外と「あれ? ウォレット失くしちゃった」なんていう人が結構多いんですよね。「今換算すると何億なのに」なんて言って(笑)。

亀山:俺は個人的に買ったことないんだけど、4年前にマウントゴックス…だっけ? なんか事件があったじゃない。あのとき、「あ、これ面白いな。チャンスかな」って思って社員に「誰かビットコインやりたいやついない?」って言ったんだけど、その頃はイメージが悪過ぎて誰も手を挙げなかった。これが年寄りの弱いところで、自分では面白いと思っても誰かがやってくれないと何もできないっていう(会場笑)。

田中:今は「DMM Bitcoin」で参入して、今後はどうなるんですか?

亀山:今頃になってみんな「やりたい」とか言い出して。まあ、それでも遅いってわけでもないからとりあえずいいかなと思ってオープンしたら、いきなりコインチェックの問題が起きたっていうタイミングだった。で、どうなのかね…。俺もあれを見てビビっちゃって。「もしかして俺も記者会見とか出なきゃいけないの?」みたいな。

田中:そのときは顔バレなしとか言ってられないですよ(笑)。

亀山:でもさ、記者会見でも犯罪者扱いじゃない。基本的には被害者なのに。ちょっとかわいそうって思ってね。

田中:今回のことを見ていて思ったんですけど、今世の中ではホットウォレットやコールドウォレットの話になってるじゃないですか。でも、僕はむしろコールドウォレットでさえ…、たとえばサーバーごと物理的に持っていけば100億手に入るなら、すごく頑張ってサーバーを盗んじゃう人も出てくると思うんですよね。しかもそれがUSBメモリだったら。たとえばUSBメモリを盗んで500億。それなら10人ぐらいで徒党を組んで、それこそ武器なんか用意して盗んでもペイしかねない勢いですよね。だから相当セキュリティレベルを高めないと。

亀山:クレーン車でビルぶっ壊して持ってったら盗めるもんね、あれ(会場笑)。

田中:そう。だから、もはや「ホットウォレットがどうか」どころじゃない。コールドウォレットさえ物理的攻撃に耐えきれないなら、かなり大変なビジネスだと思うんですよね。

亀山:うちらも「10%くらいはホットウォレットに置いておいて、9割ぐらいはコールドウォレットに」なんて言ってる。ただ、実際にはそれでも100%安全じゃないし、「明日は我が身かな」と。そのときが来たら俺がみんなの前で謝んなきゃいけない(会場笑)。

コインチェックの人たちなんて、そのうちパパラッチに追っかけられてさ、和田(晃一良氏:コインチェック株式会社代表取締役)君も、たとえばどこかで女性と歩いてたら「まだ被害者がいるのに女性と歩いてた」とか、カツ丼食ってたら「金も返さずカツ丼食って、なんてやつだ」とか(笑)。そういうことを今から書かれるかもしれない。たしかにセキュリティが甘かったことの責任は大きいんだけど、かといって悪気があったわけでもなくて。責任はあるけど犯罪者にするにはかわいそうかなって。そのぐらい今は叩かれてるから。まあ、それが社会的責任ってやつなんだろうけど、怖いよねぇ。

社会とどう折り合いをつけるか

3高宮:まさに今触れなければいけないようなトピックになったと思うんですが、今はインターネット業界が、皆でわいわいやっていた「ベンチャー村」という小さな村を離れ、メインの産業になってきた。そこで社会性というか、社会との正しい折り合いの付け方を考えなければいけないタイミングに来てるのかな、と。その意味でも象徴的な出来事が去年から何件か続くなか、いわゆる「ど」ベンチャーから大企業になったグリーの田中さんは、その辺の折り合いの付け方についてどうお考えですか?

田中:僕が社内でよく言ってるのは、「自分には2大ポリシーがある」と。「『死なない』『捕まるようなことはしない』っていう、この2大ポリシーに準拠してビジネスをしていて、これに関わることには近づかないでおくのが俺のポリシーだから、みんなお願いします」ということを冗談で言ってます。

違法なことをすれば捕まるのは、ある意味で当たり前のことですよね。問題は「違法ではないけれども、「今」の時点で社会における共通の認識が定まっていないこと」がいっぱいあること。そういう領域が存在していて、そこで大規模なビジネスをするなら、よくよく気をつけなきゃいけない。「そういうことは分かってます?」というようなことは社内で事業担当者にいつも聞いてます。

実際、僕らの周囲でも、この1年間で強制捜査に入られたり、立件されそうになったり、大規模な記者会見をしたり、そういう会社がいっぱいあるわけじゃないですか。それで、僕が社員に対して「例えば、みなさんの商社マンの友達から、商社に強制捜査とかがどんどん入っているって話を聞かないだろ?」って話して。インターネット業界はイノベーションの業界だけどそういう部分はあるから、そこは気を付けてビジネスをしてるつもりです。「だからお願いしますね」ということを会社でも言ってます。

高宮:イノベーションのフロンティアには、制度が追いついていなくて未定義なものが数多くある。そこで、法を超えた自分たちの価値観として「じゃあ、どうあるべきか」みたいなことがすごく求められているような気がします。

亀山:うちも2つ言ってる。「捕まらない」と「絶対捕まらない」(会場笑)。

田中:同じじゃないですか(笑)。

亀山:インターネット業界のグレーもあれば、うちにはピンクもあるからね。両方混ざるとどどめ色みたいになっちゃうし、その辺は気をつけないと大変なわけよ。だから、たとえばシェア自転車なんかも、「もしかして世間で叩かれるかもしれないかな」とか思うと手を出しにくかったりする。でも、「DMM.make AKIBA」「DMMアカデミー」「DMM英会話」みたいなのをやってると、ほら、なんかちょっと評判良くなりそうじゃない? そういうことで誤魔化したりもして(会場笑)。

高宮:スマートニュースも当初は叩かれかけた時期がありましたけど、そこであえて自ら襟を正したような部分があるじゃないですか。その辺のエピソードや背景にあった考え方が何かあればご紹介いただけますか?

鈴木:スマートニュースはリリース後、2週間くらい大ブレイクしたんですけど、その直後に大炎上しました。きっかけは「Yahoo!トピックス」のトップに載ったってことだったんですけど(笑)。

亀山:それヤフーがわざとやったんだよ(笑)。

鈴木:ニュースサイトから記事が1本も出てないのに、ヤフーのアンケートにリンクするトピックがYahoo!に立てられて(笑)、そのあとパブリッシャーさんから連絡がきました。それで僕もスーツを着て、1対10みたいなミーティングにたくさん出ました。ただ、なんというか、僕の基本的なスタンスは御二方と少し違っていて、「捕まってもいいかな」みたいな(会場笑)。

高宮:ええ!?

鈴木:そういう気持ちというか、正しいことをやろうとしているなら捕まってもいいかなという気持ちで、やってましたね。

田中:さっき僕がしたような話を、なんとか事件っていうのがあったA社長に話したら「お前、そんなんだからイノベーション生まれねえんだよ」ってすごく言われたことがありました。でも、そのときは「何言ってんだ、あなた。そんなんだから捕まるんだよ」って思いましたけど(会場笑)。

鈴木:当時も一生懸命話していたんです。「自分たちやってることはメディアのためになるんです」って。それを信じていたんですよね。だから当時もぱっと見ではグレーだったかもしれないけれど、「大丈夫なんだ」という確信を持っていました。それと、法律論として合法か非合法かという論点とは別に、自分たちのやってることが本当に社会の役に立つのかという信念が重要だと僕は思っていて。

それこそブロックチェーンも含めて、コアでやってる人たちってほとんどアクティビストですよね。それが確実に社会の役に立つと思って、実際にはかなり際どいところを進んでしまっている。そういうものに僕はどちらかというとシンパシーを感じるほうで。たとえばブロックチェーンやスマートコントラクトは、基本的にはもう法律の概念そのものを書き換えようとしてるわけです。つまりは既存の合法か非合法という概念自体がアップデートされる可能性がある、と。

そういう未来がすぐ2~3年単位でやってくることは決してないけれども、20~30年経てば本当に変わっている可能性がある。だから、そこのマージナルを突破していくためには、多少捕まる覚悟って必要なのかなって僕は思ってます。(フロアに向かって)ドン引きしてます?

亀山:いや、うちにいる20代とかの若いやつもだいたいそういう感じよ。「とにかく変えたいんだ」とか言って、結構純粋な気持ちで仮想通貨とか、いろいろ新しいことを考えてる。コインチェックなんかもそういうことは考えてたと思う。だから、俺なんかはそこで社会との間に入ったりする。「VALU」っていうのがあったじゃない。それでヒカルが炎上した、みたいな。ほかにもICOとか、いろいろある。そういうところで過激なやつらと社会との間に立って、ほどほどの常識を与える、みたいな。

田中:うちの会社でも数年前、「チケット販売の新規事業をやりたい」っていう提案があったんですよ。でも、そのとき僕が聞いたのは「世の中にはダフ屋を取り締まる法律があるらしい。俺はその業界を一切知らない。知らないけど、とにかく世の中では『いけないこと』になってるらしい」って。「それについて、どういう歴史的経緯で法律ができて、どういう役割で今こうなってるのか、熱く語れる?」って。

それで「こういう歴史的背景があるけど、自分はこんな風にイノベーションを起こしたい」っていうならまだしも、表層的に「これがイノベーションなんだ」と言ってるだけならめちゃくちゃ危ない。「だから、そういうことなら本当に止めて欲しい」って言ったら、やっぱりよく分かってなかったんです。今、世の中がなぜそうなっているのか、歴史的な背景も含めてそのビジネスがどう位置づけられているのか。そういうことを全部聞いたうえで、それでも何かやる価値があって、自分たちなりにイノベーションを起こしたいっていうことならいいんです。だから、そういう部分は聞くようにはしています。

鈴木:この話が分かりやすいと思うのですが、僕はアメリカでの事業立ちあげにあたって、現地の著作権関連の弁護士と話をしたことがあります。それこそGoogleの顧問弁護士をやってるようなシリコンバレーの超一流弁護士に、アメリカの「フェアユース」という概念についてブリーフィングを受けたんですね。

そこですごく衝撃を受けた話があります。フェアユースには3つか4つの要件があるんですね。たとえば「コンテンツホルダーの経済的利益を害しない」とか、いくつかの要件がある。「そこにプラスかマイナスのポイントを入れて、全体でフェアユースの要件が成立するかを決めるんだ」と。

ところが、実際には合衆国憲法の理念に則っていることを主張できると、それらの要件に関わらずフェアユースとして認められるらしいんですよ。びっくりして(笑)。「そんな法律があり得るんだ」と。フェアユースの4要件になっているような判例の積み重ねには、イギリスにおける昔の判例を含めて数百年の歴史がある。ただ、それ以外で合衆国憲法の理念、たとえば科学や教育の増進に貢献できるといったことが証明できるとフェアユースに該当するそうなんです。

要は自分たちのやっていることが社会にとって正しいんだと主張できるかどうかが重要で、法律を書き変えることに対してすごくオープンなんですね。この辺の法律に関しては大陸法と英米法の違いがそもそもあるわけだけれども、とにかく「これはイノベーションが加速するわ」と本当に思いました。

高宮:健さんは「捕まる覚悟」というようなお話をなさいますけれども、実際には今のような「社会にとって意味があるか」といったことを考えてる。だからスマートニュースが叩かれたときも、メディアにきちんと広告収入を返すとか、皆の利になるスキームをつくったうえで「覚悟」といったお話をしていると思うんですね。でも、若者がそこを勘違いしてしまって、ただただ「グレーゾーンに突っ込むとかっこいい」という風に考えてしまうのは違うと思います。

亀山:うちも今後は合衆国みたいにしようとしてる。昔はどっちかっていうと、トップダウンで、俺が「こうやろう」と言って進めてた。もともとは会社のなかで将軍様だったわけ。でも「これからは合衆国にして緩めにしよう」って。だから、結局は憲法も「金は盗むな」と「詐欺はするな」の2大条文しかなくって。

実は、昔は社員に「他の会社から引き抜きをするな」みたいなことを言ってたんだよ。でも、なんだかIT業界だと引き抜きみたいなことも普通にあるというか、文化的にはそれほどおかしくないって話になってた。それで「ダメなんですか?」って言われて、「まぁ、もういいか」って。それで今言った2つだけは守ってね、という話にした。だから最近はグループ内に俺の好みじゃない会社もある。いろいろな会社があっても、その辺を許容できるかどうかってことだよね。

19歳で露天商に師事し、様々な地域でアクセサリー販売を手掛ける。その後、24歳の時に家族が経営する飲食店を手伝って欲しいと請われ石川に帰郷。雀荘やバーなどの経営を経て、1980年代後半レンタルビデオ店を開業。その後、卸売を通さないDVDの販売ルートの確保や、販売時点情報管理(POS)の開発/無料配布により事業を拡大。インターネット黎明期であった1998年には他社に先駆けてネット配信事業(現DMM.com)を開始し、動画配信、通販、レンタル、オンラインゲーム、英会話、FX、ソーラーパネル、3Dプリンターと多岐にわたり事業を手がけ現在に至る。

1998年慶應義塾大学理工学部物理学科卒業。2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。情報処理推進機構から天才プログラマーに認定。
著書に『なめらかな社会とその敵』(勁草書房)。東京財団研究員、国際大学グローバル・コミュニケーションセンター主任研究員等歴任。現在、東京大学特任研究員。
2012年スマートニュース株式会社(旧:株式会社ゴクロ)を共同創業。2014年9月SmartNews International Inc.を設立、Presidentに就任。同10月SmartNews 2.0を日米同時リリース。世界中の良質な情報をなめらかに発信中。

1999年、日本大学法学部を卒業後、ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソネットエンタテインメント)を経て、2000年2月、楽天株式会社入社。2004年2月に個人の趣味としてGREEを開発。同年10月、楽天株式会社を退社。同年12月、グリー株式会社を設立し、代表取締役に就任。

モデレーター

グロービス・キャピタル・パートナーズでコンシューマ・インターネットの投資を担当。戦略コンサルティング会社アーサー・D・リトルに て、プロジェクト・リーダーとしてITサービス企業に対する事業戦略、新規事業戦略、イノベーション戦略立案を主導。東京大学経済学部卒(卒論特選論文受賞)、ハーバード大学経営大学院MBA(二年次優秀賞)。

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