あすか会議 その2-初めてのアルムナイ・アワード 

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一日目、第二部で変革のセッションが終わったあと、間髪入れずに、第一回目のアルムナイ・アワードの表彰を行った。
この『アルムナイ・アワード』とは、「グロービス・マネジメント・スクール(GMS)の受講生の中からビジネスで活躍している人を選定し賞を与えることにより、他の受講生にとってのロールモデルとなり、受講生各位の今後の活躍への励みとする」、ことを目的として今年から始めることとしたものである。

このアルムナイ・アワードは、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のアワードからヒントをもらっている。HBSでは、毎年開催される卒業生の同窓会(リユニオン)で、集っている卒業生全員の前で、学長(Dean)が、特に活躍した模範となる卒業生にアルムナイ・アワードを授与しているのだ。僕が、4年前に参加したリユニオンでは、米国の家庭向け会計ソフト社のクイッケン社の創業社長などが受賞していた。僕は、「すごいな〜」と思いながら、「いつかはもらう立場になれるのかな〜」と漠然と思いながら見ていたのを良く記憶しいてる。

あすか会議の開催決定後、社内会議で名古屋のスタッフから、「欧米のビジネススクールでやっているアワードをグロービスでもやってはどうか」、と提案があった。早速そのアイディアを実行すべく、社内プロセスを経て意思決定した。グロービスでは、意思決定が実に早い。グロービスでそのリユニオンに相当するのが、毎年一回開催されるあすか会議である。ここには、東名阪と通信教育の受講生が毎年一回一同に会する。自然の流れで、第一回目のあすか会議の場で表彰することとした。

アワードの基準は、以下の3つの軸とすることとした。

1)「創造と変革」度:やはり、グロービスらしく創造と変革を一つの基準とすることにした。
2)社会貢献度:お金儲けをどれだけしたかよりも、社会価値の創造に勤める人を表彰することとすることとした。
3)人間性:人間として魅力があるかどうかも一つの重要な指標とすることとした。たとえ、「創造と変革」度が高く、社会貢献をしていても、倫理観に欠如して、人間としての魅力が低い人は、アワードの対象とはしないようにしよう、と決めた。

選考には、受講生、講師の方を含めた「アルムナイアワード選考委員会」を設置して、厳選なる審査を経て対象者を選定をする予定だ。但し、第一回のあすか会議までは時間が無いので、初回は選考プロセスを大幅に簡素化して、グロービス内部で意思決定することとした。そして本日、GMSのアルムナイ(卒業生)から3名、エグゼクティブプログラムから1名を表彰することになった。社内で厳粛な選考プロセスを経て受賞者を選定し、あすか会議の場に向けて表彰状が用意された。

第二部が終わるとすぐに、スターウォーズのテーマソングが流れ始めた。僕が登壇して、アルムナイ・アワードの趣旨を説明した。そして、おもむろに一人目の受賞者の名前を読み上げた。「一人目のアルムナイ・アワードの受賞者は、松崎美沙さんです」。松崎さんは、ビックリされたが、すくっと立ち上がり前に出てきてくれた。

僕は、表彰状を読みあげた。

「あなたはグロービス・マネジメント・スクールで学んだ事を生かし、アガスタという多走行車など国内市場では“値がつかない” 車を海外向けとして輸出する会社を起業し、女性起業家として史上最年少で昨年IPOを実現されました。このような実績により創造と変革の志士として、熱き志によって社会貢献に大いに尽力されました。よってここにその功績をたたえ表彰します」。

そして、表彰状を手渡した。松崎さんは、前職のベンチャーリンク時代にグロービスを受講し、一念発起して自らベンチャーを立ち上げた。数年後、女性起業家としては、史上最年少でIPOを果たしたのだ。しかも、上場企業の社長となった今でも、グロービスを受講しているのである。本当に熱心で頭が下がる。表彰状を受取った松崎さんは、戸惑いながらも、受賞の弁を述べた。

次の受賞者の番である。また、名前を読み上げた。「お二人目は、西濃運輸社長の田口義隆さんです」。田口さんは、西濃運輸の東京勤務であった常務時代にグロービス東京校で何科目か受講していた。とても熱心な受講生であった。岐阜の本社に戻った後も引き続き、通信教育で継続学習していたのである。そして、二年前に社長となり、西濃運輸の改革を矢継ぎ早に実行していったのだ。

僕は、表彰状を読み上げた。「あなたはグロービス・マネジメント・スクールで学んだ事を生かし、西濃運輸の社長として人間尊重経営と挑戦のスピリットという原点回帰の精神を柱に、新サービス「カンガルー超特急便」の導入、ハイブリッド車の導入などの環境対策を積極的に進め、西濃運輸の変革に尽力されました」、と一挙に読み上げて、表彰状を手渡した。

そして、三人目の受賞者である。名前を読み上げた。「カネボウの社長の小城(おぎ)武彦さんです」。小城さんは、通産省時代に僕が教えているクラスを含めて、グロービスで数科目を受講していた。僕は、「なぜ官僚の方が経営学を勉強するのだろうか」、と疑問に思っていたが、暫くして理解できた。小城さんから、カルチュア・コンビニエンス・クラブ社(CCC)が始めたディレクTV事業に転職すると連絡あったからだ。僕が教えているコースでは、偶然にもCCCのケースも扱っていたので、その縁もあったのだろうかと勝手に納得したのを良く覚えている。ディレクTVの経営からCCCが撤退したときに、CCCに移り、ツタヤオンラインを立ち上げた。その後、産業再生機構に入り、カネボウの社長につい最近就任したのだ。

小城さんには、「あすか会議にぜひ来て欲しい」と、招聘したのだが、「行きたいけど、さすがに産業再生しているこの時期には行けない。申し訳ない」、との返事を頂いた。そこで、小城さんへの表彰状は、産業再生機構の冨山COOに手渡すことにした。冨山さんにお願いして、ご登壇いただき、以下読み上げた。

「表彰状、小城武彦殿 あなたはグロービス・マネジメント・スクールで学んだ事を生かし、通産省からディレクTVに転進し、その後CCCにて、iモードにいち早く着目し、ツヤタオンラインを立ち上げ、軌道に乗せました。、現在は産業再生機構のディレクターとして、カネボウに顧客志向を持ち込むことで改革をはかるなど、企業再生に尽力されています。このような実績により創造と変革の志士として、熱き志によって社会貢献に大いに尽力されました。よってここにその功績をたたえ表彰します」。

小城さんの代わりにマイクを渡された冨山さんは、「カネボウのトップである小城さん、そしてカネボウ化粧品社長の知識さん。実は、二人ともグロービスの受講生である。次期ダイエー社長に内定した樋口さんは、グロービスの講師である。今後は、ここにいる皆さんも活躍する機会があると思いますので、日本のためにも多くを学び、積極的に経営に携わっていてください」。冨山さんは、挨拶をしてすぐに、会場を後にし、日帰りで東京に戻られた。

そしてエグゼクティブ・プログラムの受賞者発表である。僕は、「ポッカコーポレーション社長の内藤由治さん」と名前を読み上げた。内藤さんも東京支社長時代に、グロービスのエグゼクティブ・プログラムを受講されていたのである。その後、名古屋本社に戻り7年前に社長に就任し、血のにじむような努力をして、ポッカを再生させてきたのである。僭越ながら、僕から賞を授与することになった。そして読み上げた。

「あなたはグロービス・マネジメント・スクールで学んだ事を生かし、「ポッカ新起業」をスローガンに、ポッカを若い人に活力を与える新時代の会社にするため、社員の権限や役割分担を明確にするなど、多くの改革に取り組まれました。以下同文」。

ということで、今年のアルムナイアワードは、以下メンバーとなった。

小城武彦氏(カネボウ)
田口義隆氏(西濃運輸)
松崎美沙氏(アガスタ)
内藤由治氏(ポッカ・コーポレイション)

会場のみんなからも祝福の拍手を受けていた。次回以降は、知名度が無くとも、地道に活動している方もアワードの対象にしたいと思う。そこで最後に、会場のみんなを激励した。「今後、毎年このあすか会議の場で、アルムナイ・アワードを表彰したい。来年以降のアワードを得るのは、ここにいる皆さんの誰かだと思います。今後の更なるご活躍を祈念しています」。と。

その後、19:00から夕食会が開かれた。和室の大宴会場に約100名が揃ってのの夕食会である。圧巻だ。その場で、翌日開催予定である4つのセッションについて説明があった。皆、主催するセッションに参加して欲しい、と様々な工夫をして、勧誘していた。環境の部のパネラーである星野リゾートの星野社長が、「参加者には抽選で星野リゾートの招待券をプレゼントします」、と宣言したのを見て「裏番組」にあたる日本の部のパネラーである田村耕太郎参議院議員からは、「小泉首相の湯のみ茶碗をプレゼントします」、とお話しがあった。更には、品川女学院の副校長である漆紫穂子さんは、緑色の食券らしきものを出してきて、「これを渡します」、と言っていた。皆、きょとんとしていると、「品川女学院のカフェテリアで食事する権利をプレゼントします」、と説明があった。会場がどっと沸いた瞬間であった。

21:00に夕食会が終わり、皆が二次会に臨んだ。僕は、ゲストスピーカーを、近くの奈良ホテルまでご案内した。明治時代から続く由緒ある洋風ホテルである。伝統と格式の中から醸し出される気品がなんとも言えない雰囲気を創りだしていた。奈良ホテルのバーで、ゆっくりと23時過ぎまで飲んで、あすか会議の一日目を終えた。


2005年4月24日
あすか荘にて
堀義人

 

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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