仮説検証に役立つアンケート作成のコツ 

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『ビジネス仮説力の磨き方』から「アンケートのコツ」を紹介します。

アンケートは、仮説の検証に関して最も身近でありつつ、多くの落とし穴が潜んでいる方法です。筆者もアンケートの実態把握を兼ね、アンケートモニターをやったことがありますが、「これでは何も検証できない」「そもそも適切な選択肢がない」「選択肢の作り方が良くない」「答えるのに時間がかかり過ぎて適当に答えてしまう」「アンケートの設計者が欲しい答えに誘導しようとしている」といったアンケートが散見されました。

定量分析の世界には、「Garbage in, garbage out(GIGO:屑データを集めて分析しても意味のある結果は出てこない)」という戒めの言葉があります。今回ご紹介するようなアンケートの典型的な落とし穴を知ることはもちろん、可能ならばいったん時間を置いて回答者の立場に立ってアンケートの設計を見直す、あるいは第三者の意見を聞くなど、ちょっとした努力を惜しまずに実行するか否かが往々にして大きな差につながるのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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アンケートのコツ

アンケートは非常に多用され、適切に使うと非常に有効ですが、「落とし穴」もあります。調査費をドブに捨てないためにも、仮説思考が不可欠となる最も身近な作業と言えるでしょう。

アンケートをとる目的を押さえる

アンケートの設計、実施は、時々細部のテクニカルな要素に深入りしすぎ、データはたくさん集まったものの、結局何もわからなかった、という結果を招きやすいものです。何を検証し、何を確かめたいかをまず明確にし、それを意識し続けることが重要です。

状況によっては、そもそもアンケートではなく、社内のメーリングリストで関係者に聞いてみるだけでも事は足りるかもしれません。目的をしっかり押さえておくと、おのずと予算や期間、方法(ウェブか対人かなど)、対象ターゲットなども明確化してくるものです。

仮説検証できる対象者や項目になっているかを確認する

当たり前のことではありますが、アンケートの対象者(サンプル)が適切かは必ずチェックしましょう。極端な例ですが、富裕層向けのサービスの検討にあたって、中堅ビジネスパーソンにアンケートをとっても何の示唆も得られないでしょう。

また、少なすぎるサンプルは、統計学的な有意性が担保されない場合があります。検証に求められる精度の度合いにもよりますが、どのくらいのサンプル数が必要かも意識してください。ここでは割愛しますが、統計や社会調査の専門書には必ず書いてあります。

対象者の妥当性が確認できたら、仮説検証のための頂目が網羅されているかもチェックします。とりあえず思いついた点から質問を作成する、というやり方は避けてください。

たとえば、価格を決定するためのアンケートであれば、「そもそも、購買にあたってどの程度価格を重視するか」ということに加え、
「それ以下になると信頼性を損ないかねない下限の価格」
「それ以上だと競合に流れてしまう上限の価格」
「顧客が直感的に妥当だと思う価格」
など多面的に聞くと、価格設定の是非や、望ましい価格帯に関する仮説は検証しやすくなります。

個別質問項目は正しく被調査対象に理解されるかを確認する

書面やウェブサイトにおけるアンケートの場合、その質問項目は、対面のインタビューとは異なって、言い換えや、詳細な説明を十分にはしきれません。それゆえ、聞きたいことが相手に正しく伝わるような文言を慎重に選ぶ必要があります。たとえば、「年収」という言葉一つをとってみても、税込みなのか手取りなのか、本業のみなのか副収入や投資利益なども含むのかなど、さまざまな解釈が成り立ちます。

さらに実務的には、正しく伝わることに加え、「正しく答えてくれるだろうか」ということにも注意を払います。アンケートが長くなりすぎるのはもちろんのこと、レイアウトが見づらいとか、ウェブアンケートの場合は操作性が悪いと、答える方が面倒くさくなって、いい加減に答えてしまうことがあります。たとえば、ウェブのスピードが遅く、アンケートで20分以上かかるようなものでは、すべて真面目に答える人は多くありません。

また、内容自体の特性から、無記名だとしても本当のことを書かない場合もあるでしょう。「これまでに付き合ったことのある異性の数」などは、見栄で多めに書くかもしれません。 重要なのは、調査対象の人々の気持ちになりきることです。

質問文や選択肢などの「落とし穴」をチェックする

アンケートや社会調査には、いくつかの有名な「落とし穴」やバイアスがあります。すでに述べたものも含め、代表的なものを図に列挙しました。ぜひ意識しておいてください。


 

『ビジネス仮説力の磨き方』
グロービス経営大学院/嶋田毅  (著)
1600円(税込1728円)

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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