G1 FM特別セミナー
「成功するリーダーに必要な歴史観とは?」
(2023年6月13日開催/グロービス経営大学院 東京校)
ユニークリスナーは約24万人、”歴史を愛し、歴史を知りすぎてしまった歴史GEEK2人と、圧倒的歴史弱者がお届けする歴史インターネットラジオ「コテンラジオ」”でおなじみの株式会社COTEN・深井龍之介氏。多くの歴史を学んできた深井氏が考える、成功するリーダーに必要な歴史観とは一体何なのか?時代によって変わってきたOS(オペレーション・システム)とは?(肩書等は2023年6月13日開催当時のもの)
00:20 深井氏のプレゼンテーション「成功するリーダーに必要な歴史観」
-3000年分くらいの歴史書、1500冊の本を読んだ。古今東西のリーダーに共通していることは、正確な現状認識が出来ていること。ホモサピエンスが正しく現状認識をすることは難しい。 -現代という時代を知ることが大事。それは構造的に社会変化を理解し、歴史を知ることが大事。
03:25 各時代の常識=OSは変化してきた
-世界史上重要なOS転換期は、「神話OS」「知の爆発OS」「帝国OS」「キリスト教OS」「フランス革命OS」の5つ。
08:38 近代に入りOSのマイナーチェンジが重ねられている
-フランス革命OSから短いスパンで、「国民国家OS」「戦後OS」「新自由主義OS」「インターネットOS」が誕生。この変化のスピードの速さには、コミュニケーション技術の発達に相関性がある。
-過去の人類は、人生の中で一度OSの変化があるかないかだったが、我々が生きている間で4-5回のOS変化を経験する可能性がある。
12:48 フランス革命OSへの転換の背景
-当時のフランスは絶対王政。人口の2%が富を独占し、98%が重税に苦しんでいた。そんな中で財政破綻が起こり、ブルジョワの出現、啓蒙思想(ホッブズ、ジョン・ロック)の登場した。
-ルソーが提唱した、全人類は自由で平等であることと社会契約論をきっかけに民衆が蜂起した。
-フランス革命OSの三大要素は、「民主主義」「人権(幸福追求権)」「資本主義」。我々のOSはこれがベースになっている。
18:11 近代OSの変遷は「拡大」の歴史
-三大要素が、参政権の拡大、人権適用の範囲の拡大、市場の拡大と、拡大していき、今後も拡大し続けている。
-これらの拡大では解決が難しい課題が顕在化している。人権は、「幸福追求権」から「世界観私有権」へ。その先には人間の科学的な基準はない。
-現代の我々は、きわめて哲学的な問題にぶつかっている
27:22 プレゼンテーションのラップアップ
-今の時代のOSの変容は早いので、マイナーアップデートが数回行われる可能性があり、メジャーアップデートも行われる可能性がある。過去、OSの変遷が起こっている時は必ず哲学的な問題に直面している。
29:55 堀と深井氏による対談
30:12 どのような現状認識によって、勝敗が分かれているのか
-外的環境理解、ステークホルダーの感情理解、自分が所属している組織の大戦略の理解の3つ。
-JFEホールディングスの数土氏がおっしゃっていたのは、孫氏の兵法は今も有効。大義名分、天の時、地の利、人の和、将の人徳。
33:40 新しいものがどういうOSになり得るのか
-過去、戦略的にやろうとした人はいたが、結果的に本人が思ったのと違う状態になっている。
-G1を創設した時に、国が変わったのはどの時代で、どうやって変わったのかを徹底的に分析した。ルネッサンスの時代、フランス革命、ロシア革命、明治維新で大きく国が変わった。共通項はスローガン・思想があること、少数のリーダーがいたこと、武力行使。民主主義における武力はコミュニケーション。民主主義や資本主義、人権に代わるものは何かわからない。
38:51 一番の不確定要因・AIはどう世界を変えていくのか
-歴史上にアナロジーとして使えるものはないが、すごく変化が起こりそうなのはわかる。
-AIの第一人者でも、多くのことが分かっていない。人間は何をやるのか、人間は何者で何が幸せなのか、今後議論されていくと思う。
-AIに意思がない、人格がないという場合は、なぜ我々に意思があって人格があると言えるのか、という問いとつながる。そこからマジョリティが哲学っぽいことを考え始める端緒になる。自分のこの自分を客観的に見るためにAIを使って客観的に見る、みたいな現象がこの後起こりやすい だろうなと思っている。
42:26 歴史上から見て、このリーダーから学ぶべきと言う人は?
-複数のリーダーのタイプを知ることが重要。自分がトレースできる人を知るとか、自分が置かれている状況に類似した世界史のパターンを20個くらい知っておくことが大事。
-まさに数土氏も同じことをおっしゃっていた。深井氏から見てどういった方々を学ぶいいと思うか。
-春秋戦国時代の諸子百家が好き。孟子が言った五十歩百歩は王様に向けて言った言葉。すごく尖っていた。今は変遷が早い時代なので、いくつかの時代のポイントを押さえながら変遷を捉える時代感を持った方がいい。
47:30 フランス革命から拡大していてコミュニケーションが早くなった今、何を学ぶべきか。
-現代人の起業家が学ぶべきことは、フランス革命、第一次世界大戦、第二次世界大戦、オイルショック近辺の経済政策の変更。日本史では、幕末、日露戦争。
50:30 歴史の中でうまくたってきた人物で、学ぶべき人は?
-例えば小松帯刀。トップリソースとボトムリソースのつなぎ役みたいなことを機能 させて成功に導くスタイル。超戦略家系では、ビスマルク。保守派なんだけど状況を理解していて、時代の変遷を理解していたがために結果彼が生きてる間はうまく立ち回ってプロイセンを大国まで成し上げるということをやり遂げた。力技系では、春秋戦国時代の晏嬰。派閥形成では、秦檜。優秀な人たちが同じビジョンを持ってタッグを組んで国を何と かするパターンが、徳川家光。
56:48 OSの変化でチャンスを掴むためには
-状況理解は前提条件でありながら、しかるべき場所にいるいとができる才能。フランス革命でもロベスピエールは意思があってその場所にいた。偶然性を担保しているのは本人の意思。
58:40 (質疑)ルソーのようにOSを転換できる人の育て方、新しい側から古い側へのコミュニケーションの取り方
-ルソーやニュートンは外れ値。正統派じゃない環境や教育を受けさせてる人材が、人類全体のポートフォリオの中で存在しているのはアリだと思う。
-トランスレーションに関しては直接やったらダメで、40~50代が代わりにやったら機能する。
1:02:28 (質疑)歴史上大きな出来事の前にある、マグマの地殻変動みたいなものを捉える方法、死生観の変遷
-端緒で言うと、今まで起きていなかった現象が起きる。小さいけど潮流として今まで存在しないものの領域を捉えることが大事。
-死生観の話は、ルソーの言っていることを踏まえていない議論。前の時代に戻るだけで、アップデートにならない。
1:05:46 JFEホールディングス名誉顧問・数土文夫氏のコメント
-歴史を学ぶことは重要だが、歴史だけに頼るのはどうかと思う。歴史は後から人間によって作られたもの。性根を持って学ばなければならない。
-歴史で成功した人は、みな命を懸けている。命を懸ける気概がないのに、歴史を学んで成功しようとするのはダメ。
1:12:07 (質疑)生き残りやすい人材を作るためには教育は何を変えなければならないのか。
-変曲点で駆逐されるのは特権階級なので、そちら側に行かないこと。変節点が何回も来るぞと言う教育をすべき。
-アンラーニングする力が必要なのでは。教育はスタンダード化していくが、新しい知識を独学で獲得することが重要。
1:15:08 (質疑)我々がメタ認知の力を磨くには、どういう努力をすべきか。
-メタ認知をしている人が大量に出てくる時代には3つのポイントがある。1つ目は、自分の考え方と全然違う考え方の人が近くにいる環境。2つ目は、今のままじゃヤバいと思うこと。3つ目は、暇であること。この3つを揃えていこうとすると、メタ認知しやすい。
1:16:45 (質疑)結局リーダーに必要な要素は、現状を完全に認識し、過去も勉強したけど、少し先の未来を掴んで理解でき、周りを巻き込める人、これだけなのでは。
-その通りだと思う。思想家系、世の中を変えようとする系、運用する系と3つのフェーズがある。能力値のところは、リーダーで能力がない人もいるので、それほど重要ではない。
1:20:02 (質疑)失敗から学んで次の失敗の再現性を下げることの方が重要なのではないか。歴史上の人物で、歴史から学んでいた人はいたのか。
-失敗のエピソードは、律令制の失敗、明治維新から第二次世界大戦への流れ。同じような失敗をしている。
-歴史については、参照できるようになったのはすごく最近のこと。例が少なかった。以前はかなりアクセスコストが高かった。
1:23:58 (質疑)思想家が影響力を持つ過程で、新しいことをやりながら権威性をどう担保するのか。
-思想家の人は全員炎上している。炎上しているけど、サポーターがゼロじゃない。少数でも変わる。
1:25:43 数土氏からのコメント
-後世に影響を残しているソクラテス、キリスト、釈迦、孔子の4人の共通点は、エクセレント・チームビルダー。一人が成功しても長く続かない。
1:27:08 議論のラップアップ
-残るのは、ビジョン、ミッションなどのソフトの面。仲間を作っていくこと。リーダーとしては死ぬ気になってやるかで変わってくる。