「幻滅期」の今こそ、本当に知りたいNFTーー『未来ビジネス図解 これからのNFT』 

2008年に投稿された一通の論文から始まった暗号資産ブーム。その基盤となるブロックチェーンという言葉は知っていても、それが「どんな技術で世の中をどう変えたか?」という問いに答えるのは意外と難しいものです。こうした目に見えない先進的な技術が内包する意味をわかりやすく解き明かし、身近なモノやサービスへ応用されるイメージを見事にビジュアル化してくれた書籍がありました。それが『未来IT図解 これからのブロックチェーンビジネス』です。

同書の出版から4年、同じ著者が次に筆を執ったのは「NFT」です。

いまNFTはどんなフェーズにあるか

NFTは”Non-Fungible Token”の頭文字を取ったもので、「非代替性トークン」と訳されます。端的に言うと「改ざん困難なデジタル資産」のことです。一般のデジタルコンテンツは、複製が容易でオリジナルとの区別が難しく、「資産」とは言い難いのに対して、ブロックチェーン上で発行されるNFTは、”替わりが効かない”と証明されたデジタルデータのため”資産”として取引しやすいという特徴があります。著者によると、そのアイデアは2011年ごろから存在していました。では、なぜ今、NFTなのでしょうか。

コロナ禍によって多くの人がデジタル空間での体験に価値を見出した今、一部のイノベーター向けだった暗号資産ブームと違い、アートやゲームアイテムといったNFTの目に見える分かりやすさと「所有する価値」が新たな消費者の関心を惹きつけたと著者は見ています。
一方で、この「所有する価値」の先行が、暗号資産の新たな使い道や値上がりを「過度に期待する」投機的なブームを一気に加速させました。そしてその反動から、世界最大のマーケットプレイスであるOpenseaの10月の取引量は、今年1月のピークから90%以上減少する事態[1]となり、NFTはまさに今、先進技術に対する「過度な期待」が一巡した「幻滅期」に入ったと見られています。

幻滅期の先を見据えたキャッチアップを

では、NFTはこのまま下火となって消えていくのでしょうか。著者はNFTの持続的な市場形成について、「所有価値」と「利用価値」の2つの価値をバランスよく高めていくことを提唱しています。具体的には、既に多くのユーザを抱えるプラットフォームがNFTを起点にオープンにつながることで利用環境を広げたり、所有者が他のユーザへNFTを貸し出して手数料を得るなどの機能的側面を充足させていくことで、投機的意味合いを小さくしていったりということがあげられます。つい先日の11月4日にも、前者については、独自開発でないオープンなブロックチェーンやウォレットに対応したNFTの発行から販売までを、米Meta社が傘下のInstagramでまもなく開始する[2]と発表して話題となったばかりです。

折しも、三次元の仮想空間であるメタバースで過ごす若者や現実世界をデジタル空間に再現したデジタルツインを駆使する企業が台頭しはじめ、ブロックチェーンを基盤とした自律分散型の組織(DAO)とトークンエコノミーと呼ばれる新たな経済圏に総称される「Web3(※)」のうねりも着実に動き始めています。こうした新しいデジタル空間と、発行者と購入者のつながりを深めやすいNFTは相性がよく、これらの融合から新たなビジネスが生まれるであろうことは想像に難くありません。これからのデジタル社会にNFTが無くてはならないものになる日も遠くはないのです。そして、幻滅期の先にある持続的な市場で覇者となるには、失敗も含めた小さな経験値をたくさん積んでおくことです。今からでも遅くはありません。

本書は、NFTを買ってみたい一般の方から、事業機会を手にしたいビジネスパーソンまで、幅広い読者に対して、NFTの基礎的な知識、技術的な仕組み、ビジネスへの応用と法的な論点までをカバーする最良の入門書となるでしょう。

未来ビジネス図解 これからのNFT
著者:森川 夢佑斗 発行日:2022/10/11 価格:1,980円 発行元:エムディエヌコーポレーション

[1]OpenSea CEO Devin Finzer discusses staying on top of a turbulent NFT market at TC Sessions: Crypto(TechCrunch)

[2]Meta社のTwitter公式アカウントより https://twitter.com/meta/status/1587929277864910849

※Web3の概念については、本知見録の連載コラムをご参照ください。

RELATED CONTENTS

RELATED CONTENTS