近年、「Z世代」と呼ばれる世代が、企業のマーケティング対象としての面でも人材育成の面でも注目を集めています。Z世代とは、定義に諸説はありますが概ね1997年~2012年生まれの人たちを指し、スマホやSNSに代表される技術進化や生活の変化を幼少期の共通体験として持つのが特徴です。
そんなZ世代の中の“年上組”が大学を卒業してビジネスパーソンとしてもようやく歩み出しつつある2022年、筆者がZ世代の皆さんにおすすめしたい書籍が、この『MBA 2030年の基礎知識100』です。
本書は、「昨今の経営環境の大きな変化に鑑み、2030年にビジネスパーソンにとって必要になるであろうスキル・知識を9章に分け、100項目で説明」したものです。9章の構成は、
- 第1章 メガトレンド
- 第2章 テクノベート(テクノロジー+イノベーション)
- 第3章 グローバル
- 第4章 組織と人のマネジメント
- 第5章 金融
- 第6章 マーケティング・経営戦略
- 第7章 事業創造
- 第8章 組織変革・事業再構築
- 第9章 個人のキャリア・生活
となっていて、たとえば第1章であれば「カーボンニュートラル」「新しい資本主義」「超少子高齢化」、第2章では「デザイン・シンキング」や「AI×ビッグデータ」「情報リテラシー」といった具合に、これからの時代に重要な意味を持つ変化や潮流、新たな知識について。それぞれコンパクトに解説しています。
「2030年」をタイトルに冠した本といえば、GLOBIS知見録でも以前おすすめした『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』(ピーター・ディアマンディス、スティーブン・コトラー著)がありますが、同書が「最先端ではこんなことが起きている!」という驚きを紹介し、刺激的に近未来を予測することに比較的フォーカスしているとすれば、本書は一人ひとりのビジネスパーソンの視点に立った、知っておくべきことの網羅性と、身近な自分事として引き寄せて考えられる手触り感に特徴があります(前者は翻訳書なのに対し、本書は日本視点で書かれているという差も当然あります)。
筆者が本書を「Z世代の方におすすめ」と考える理由も、正にこの網羅性と身近な手触り感にあります。ともするとZ世代の方にとって、本書で紹介されている時代の変化は、すでに空気のように当たり前に内面化していることかもしれません。しかし「空気のように当たり前」だからこそ、かえって意識せずに見過ごしがち、理解があいまいなままで流してしまいがちな危険もあるものです。ビジネスパーソンが知っておくべきこととして言語化された本書の解説に触れ、自分事として「このトピックはどんな意味があるだろうか?」と考えを巡らせてみることは、これからの長い活躍の第一歩として、きっと役に立つことと思います。
『MBA 2030年の基礎知識100』
著者:グロービス 執筆・編集:嶋田 毅 発行日:2022/9/22 価格:2,145円 発行元:PHP研究所