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交渉が強い人になるためには?心理的戦術は使うよりも見破ることが大事

投稿日:2017/09/02更新日:2019/04/09

目次

『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本』から「交渉戦術」を紹介します。

交渉の理想はお互いの取り分を最大化するWin-Winの問題解決型交渉です。しかし、現実にはいかに相手をトリックにかけるか、あるいはブラフ(はったり)でごまかすか、といったことが横行しています。特に、その後の継続的な付き合いがない1回限りの交渉や、原理主義的な相手との交渉では、Win-Winの合意に至る誘因が弱くなり、そうした心理戦が使われがちです。一般のビジネスパーソンに対してこうした戦術を多用することは、長期にわたる信用を毀損する可能性もあるため決してお勧めしません。しかし、相手に出し抜かれたり、予想外の事態に遭遇して混乱したりしないためにも、基本的な交渉戦術を知っておくことが重要です。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

交渉戦術

交渉術に関する書籍などで取り上げられることの多い「交渉戦術」について主なものを解説します。

ただし、こうした呼び名のついた戦術は交渉術の書籍で紹介されているだけあって、ある程度手口が知れ渡ってしまっています。一方で、これらの戦術の多くは、第3章で解説したような心理的バイアスを利用しているため、相手に手口が知られていると効果はそれほど期待できません。また、心理的バイアスを「利用」して交渉を有利に進めようとする姿勢自体が、誠実さに欠けるとして、相手からの信頼を損なう危険性があります。やはり筆者としては、序章でも書いたように、心理操作的な仕掛けはなるべくやめて相手に対して誠実に向き合い、信頼関係を作りながら、一緒に価値を創造していこうという姿勢が重要だと考えます。

こうしたことから、こちらから敢えてこうした交渉戦術を用いることはお勧めしませんが、相手から仕掛けられたときの防御という意味では、どういうメカニズムでこうした戦術が「効く」とされてきたのか、理解しておく必要があるでしょう。

瀬戸際戦術

自分のBATNAを明らかに損失の大きいものにする一方で、妥結に至らないと相手にも大きな損失が及ぶことをほのめかし、譲歩を迫る戦術です。

身近な例では、わがままを認めてくれないと悪事に走るぞと親や教師を脅す子供が典型的です。ビジネス寄りの例では、このままでは倒産だ、そうするとウチに貸した金は返ってこないだろうと脅して、融資をより有利な条件にしようとする借り手などが挙げられます。

相手の「損をしたくない」心理を利用し、破談の際の損失を過大評価させることで、譲歩を促すわけです。したがって、対策としては、起こり得る損失を冷静に受け止めること、そしてそれを相手にも示すことです。

脅し

瀬戸際戦術もこの一種ですが、相手にとって痛みのある損失を与える状況を意図的に作り出して譲歩を迫るやり方全般も、一種の交渉戦術と呼ぶことができます。対策として『新版ハーバード流交渉術』でフィッシャーらが推奨するのは、相手の脅しをこちらが認知していると明らかにしつつ、やはり交渉の原則に従うことです。すなわち、「このような脅しの手口に対しては、われわれも対抗手段を用意しています。しかし、脅し合いをするより、もっと建設的な手段があるのではないでしょうか」「そんな脅しには乗りません。私は問題の本質的な価値について話し合うつもりです」といった応対をすることです。

やりすごし(時間切れ狙い)

相手の方に時間的なプレッシャーが強く、また自分の目標値とBATNAとの落差がさほど大きくない場合、自分からは交渉妥結に向けたアクションをあえてとらず、相手が早く妥結したいと焦って譲歩するのを待つという戦術です。

対策としては、時間的制約の緩いBATNAを開発するか、相手の関係者から相手に交渉に取り組むよう促せないかを探ることがあります。

「よい警官・悪い警官」

相手に対して高圧的に接する「悪い警官」と、温情をもって接する「よい警官」とに役割を分担して交渉を行う手法を指します。イメージは、警官が容疑者に対して取り調べをしている場面です。「悪い警官」が厳しく当たった後で、「よい警官」が「あいつも若くて未熟なところもあってな」などと悪い警官に否定的な評価をすることで、相手から好意を引きだし、そのうえで「お前も苦労してきたんだな。しかし、このままいくと家族も悲しむだろう。自白して、少しでも罪を軽くしてはどうか」などと自白を勧めるやり方です。

この手法は、最初の「悪い警官」が強気な交渉態度をとった後で「よい警官]が妥協的な提案を出した時、実態以上に譲歩してくれたように感じる錯覚を利用(悪用)します。つまり、後者が前者をいさめるシナリオまで含めて予め仕組んだもので、後者による一見妥協的な提案さえも自分に有利に設定しておく、という仕掛けです。

対応策としては、悪い警官役に動揺させられたまま合意しないよう時間的間隔を置く、よい警官役が出てきたと気付いたら「初めからこういう筋書きなのでは」と気付いていることを相手に知らせる、そもそも一人対複数で交渉する場面をなるべく作らないようにする、などが挙げられます。

ただ、こうした一種の「だまし」のシナリオを抜きにすれば、感情面の対立も予想されて難しい交渉になりそうなときに、複数名で交渉に臨むことにして、感情的なやり合いを引き受ける役に相手の感情の矛先を向けさせておき、それ以外の者はその陰で冷静に判断できる状況を作るというやり方は、一考の余地はあるでしょう。

(本項担当執筆者:書籍・GLOBIS知見録編集部 研究員 大島一樹)

『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本』
グロービス経営大学院  (著)
1600円(税込1728円)

 

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