日本を代表するマーケターの語るリーダーシップ
業績の低迷していたユニバーサル・スタジオ・ジャパンを卓越した戦略眼とリーダーシップでV字回復に導いた、日本を代表するマーケター、森岡毅氏。現在はマーケティング集団「刀」を立ち上げて日本全国の企業の再建に動いている。
そんな彼が、自身の経験や志を同じくする「刀」の優秀な社員の皆さんの経験を織り交ぜながら、非常にわかりやすい言葉でリーダーシップを語ったのが本書だ。
全体を通じてひしひしと伝わってくるのは、筆者の「誰でもリーダーになれる!」という強い確信と、日本を信じ憂う「この本を通じて、多くのリーダーを日本から輩出しなければ」という強烈な危機感だ。
リーダーシップは「欲」で身につく
まず本書では、冒頭で人の属性を3つに分類し、タイプ別にどんなリーダーシップの特徴があるのかを紹介している。
<3つの属性>
- T型(Thinking:思考力を強みとする人)
- C型(Communication:伝える力や人々と繋がる力を強みとする人)
- L型(Leadership:人々を統率して動かす力を強みとする人)
そして、この3つの属性それぞれの特性を活かしたリーダーシップの姿が明示されている。
例えば、T型であれば「戦略思考を武器としたリーダーシップ」、C型であれば「相手の強みを引き出す『プル型』のリーダーシップ」、L型であれば「目的思考から生み出される情緒的衝動に根ざしたリーダーシップ」といった具合だ。
これを読むと「ふむ、確かに誰でもリーダーシップを取る素養は持っている」と思えてくる。
また、更に続けて筆者は、3つのタイプに共通して「強い『欲』が必要だ」と提唱する。
「自分にとって『やりたいこと』を、どうすれば周囲を巻き込んで、自分が望むカタチへ自分の景色を変えていけるか?ということ。そこにどれだけ執着できるのか?」
この強い欲求を満たすための手段として身につくのがリーダーシップなのだ。
長年マーケターとして常に人の心と向き合い、人はいかにして動くのかを見つめ続けてきたからこその視点で、筆者は日本人が根底に持つ「欲」を持つことへの後ろめたさを否定し、重要性を説く。これには読みながら「その通りだ」「その通りだ」と膝を叩かずにはいられなかった。
その後は日本でリーダーシップを育てる手法を、そもそもなぜ日本でリーダーが育ちにくいのかの原因から紐解いていく。加えてリーダーが人を動かすための関係性づくりに言及し、危機時のリーダーシップについて、自身が手がけた事例を引き合いに出しながら提唱していくのである。
世界を変えるのは、人が本気で欲する力
森岡氏は言う。
「世界を変えるのは、人が本気で欲する力。それさえあれば、きっと切り口は見つけられる、その勝ち筋へ皆を動かすことができる」
今はまだ混迷を極めるコロナ禍の状況も、幾度となく困難から立ち上がった日本人なら必ず元気な社会を取り戻すことができる。2020年から猛威を奮い続けているコロナウイルスになんか負けてはならない、という並々ならぬ筆者の想いと日本人への期待に、心の底から現状を打破する勇気と決意が湧き起こった。
最後の章のタイトルは「未来は我々がつくる!」。本書はまさに未来をつくるための要諦が随所に散りばめられた一書だ。ぜひ手に取り、次への第一歩を踏み出す勇気を手に入れていただけたら幸いだ。
『誰もが人を動かせる! あなたの人生を変えるリーダーシップ革命』
著者:森岡毅 発行日:2020年12月10日 価格:1,870円 発行元:日経BP