今年5月発売の『MBA 言語化トレーニング』の「Part3 Lesson12 言葉で気遣いを示し、共感する」の一部を紹介します。
人間関係の基本はまず相手に気遣いを示すこととも言えるでしょう。それによって信頼関係を構築しやすくなりますし、コミュニケーションをよりポジティブなものとすることができるからです。「実るほど首を垂れる稲穂かな」ということわざもある通り、本当に仕事ができる人ほど、傲慢にならず、相手のことを考え、気遣いをしているものです。
無駄に敵を作る人は大成できません。良き協力関係を作るためにも、ちょっとした気遣いをわかりやすく示すことが大切です。言語化はここでも役立つのです。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、PHP研究所のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
気遣いを言葉にする4つのプロセス
よほど特殊な職業を除き、仕事は一人で行うものではありません。普通のビジネスパーソンであれば、普段から同僚と一緒に仕事をしたり、顧客とコミュニケーションする機会も多いでしょう。
そうした時に必要となるのが、ちょっとした気遣いや配慮です。気遣いや配慮を示すことによって、彼らとの良好な関係を築き、信頼を維持することが可能となります。
気遣いや配慮を示すことは、チームワークを強化し、職場の効率性と生産性を高めることにもつながります。「最近どう?」といった声掛けや、「頑張ったじゃない」といったちょっとした褒め言葉も非常に効果的です。お互いを配慮しあえる環境において、人々はより積極的に組織に貢献しようと考えるようになります。また、心理的な安全性が高まることなどから、創造的なアイデアの考案などにもつながります。
気遣いを示す典型的なプロセスは図に示したようになります。
最初の「相手の立場を理解する」では立場や感情を理解するために丁寧にコミュニケーションをします。その段階で「なるほどそうだよね」といった共感を示しておくと、最後のコミュニケーションもより効果的になります。
2つ目のプロセスの「自分のできることを考える」は、相手の立場に立って、「こんなふうに言われたり、何かをされたりしたら嬉しいのではないか」ということを考えます。独りよがりになるのではなく、先のプロセスを通じて知った相手の立場や感情をペースに考えます。
ポイントは3つ目の工夫でしょう。これにはさまざまな方法があります。具体的には前段のプロセスを踏まえたうえで、以下のようなやり方をとると効果的です。
・ポジティブな言葉を選ぶ
・自分の経験を語ったり、人となりを際立たせたりする
・感謝の気持ちを伝える
・励ましの言葉を選ぶ
・安心感を与える
本レッスンでは、ものの見方を変え、ポジティブな言葉とする例を紹介します。 ありきたりな表現ではなく、少し違うものの見方を提示することで、相手に対する気遣いや配慮を際立たせるのです。
演習問題1
設定
あなたはある企業に勤める課長。後輩のAさんが取り組んでいた新規事業がなかなか軌道に乗らず、2年で撤退となってしまいました。
ただ、それはAさんのやり方が悪かったというわけではなく、市場環境による部分が大でした。彼女を励ます言葉を掛けたいと考えています。ただし、Aさんはエネルギーをつぎ込んで取り組んだプロジェクトだっただけに、精神的にはかなりダメージを受けています。
回答例・解説
以下は極めて普通の声掛けです。
[NG例]
外部環境が悪かったんだから、Aさんが悪かったわけではないよ。ドンマイ、ドンマイ。これからも頑張ろう!
回答例や他の演習問題をごらんになりたい方は本書をご覧ください。
『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』
著:グロービス 執筆:嶋田 毅 発行日:2024/5/22 価格:1,870円 発行元:PHP研究所