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第9回 仮説を作るコツ(後編): 知識や情報を組み合わせ、初期仮説を立てる

投稿日:2008/04/17更新日:2019/10/11

前回、前々回と、仮説を作る作業の一つめのステップ「知識の幅を広げ、深く耕しておく」に焦点をあてて、お話をしました。今回は二つめのステップ「知識や情報を組み合わせ、その意味合いを考え(意味づけをし)、ラフな仮説を作る」について解説します。なお、最後のステップは「仮説を検証しながら、肉付けしていく(必要に応じて修正する)」となりますが、これについても、おいおいご説明していきます。

情報のカルティベーションができたら、それを土台にいよいよラフな仮説を作っていきます。「初期仮説」を作り、ラフに肉付けしていく段階と言い換えてもいいでしょう。ここで幾つか意識しておくべきことがあります。

第一に、仮説構築という作業は、スポーツや演劇などとは違って、準備運動と本番の境界があまりないということです。これは、企画や商品開発などの仕事同様、基本的に頭の中で考える作業であるという特性によります。準備運動のつもりで、布団の中で考えていたことから、仕事上の大きなヒントが生まれることは往々にしてありうることです。

第二に、同じ「仮説を立てる」といっても、求められる精度や飛躍感は千差万別だということです。一般的には、より長期的な(緊急性が低い)テーマについては、ラフな仮説でもかまいませんが(言い換えれば、検証の結果、否定されてしまっても大きな影響はありませんが)、短期的で緊急性の高いテーマであれば、実際の解に近い仮説を立てることが望ましいということになります。

第三に、仮説(特にある程度複雑な仮説、たとえば新事業プランなど)は、一気に立てるものではなく、まずはラフな初期仮説を立て、修正したり、「練り上げる」プロセスが必要だということです。

そうしたことも意識した上で、ここでは主に、(1)準備運動ではなく、仕事上、仮説構築が必要、(2)長期的で緊急性が比較的低い、(3)初期仮説の場合について解説していきます。なお、(2)については、「緊急性が低い=重要度が小さい」ではありません。たとえば経営者が20年先の自社の「あるべき姿」について仮説を立てることは、緊急性はないかもしれませんが、非常に重要な作業といえるでしょう。ここではまた、個人として仮説を立てる場合にフォーカスします。組織としての仮説構築については、後日、改めて解説します。

今回はまず、仮説思考のための心構えとして、「パッション」を持つことの重要性について指摘します。そして次回、具体的なコツとしての「創造的に考えるためのTips」について解説します。

仮説とパッション

多くの方は、心構えとしていきなり「パッション(情熱)」という言葉が出てきて驚いたのではないでしょうか。「一つの考え方に拘らない」とか、「FACTを正しく見る」などの心構えを予想された方も多いでしょう。もちろん、これらも非常に重要であり、私としても強く言いたいポイントです。しかし、本稿ではあえてパッションという要素に拘りました。パッションは、「強い内発的動機」と言い換えても構いません。パッションに拘るのは、これがないと、結局はものの見方が表層的になるし、集中力も出ない、結果としてありきたりの仮説しか出てこないからです。

パッションを持つことの効果についてもう少し整理して考えてみましょう。

第一に、上にも書いたように、パッションは集中力やエネルギーを高め、好奇心や能力開発、そして創造性へとつながっていきます。これは最近の研究でも支持されています。パッションがあるからこそ、知識や情報を貪欲に吸収し、それまでに誰も考え付かなかったような新しい仮説が生まれてくるのです。ヤマト運輸の前会長である小倉昌男氏のケースなどはその典型でしょう。

第二に、パッションは行動を促します。ビジネスを大きく変えるような仮説は、デスクで考えるだけではなかなか出てきません。実際に街に出かけて顧客の動向を見たり、さまざまな人々と議論をする中で、その種が育っていきます。これは、意外に億劫なものであり、強い動機がないとなかなか実行できないのです。行動をすることは、検証のスピードを速めることにもつながり、仮説の再構築を促します。

第三に、パッション(を持っている人)は人を引きつけます。そこには自社の同僚だけではなく、顧客や外部パートナーも含まれてくるでしょう。彼らがもたらしてくれる情報や新たな視点は、仮説を作りブラッシュアップしていく上で大きな力となります(もちろん、それがたとえば事業アイデアであれば、実行の際にも大きな味方となるのは言うまでもありません)。

ところで、想像力に関する書籍などを読むと、「新しいアイデアや仮説を生むために、歯を食いしばって考えることは必要ない」、「リラックスできる環境が必要」などと書いてあるケースが多いようです。これらは一見、パッションを持つということと相反するようにも見えますが、私は必ずしもそうは思いません。

確かに、強いパッションが視野狭窄や独善をもたらしたり、過度な長期労働による生産性低下をもたらしたりする場合は少なくありません。しかし、これらは工夫で回避できる話であって、本質的な二律背反ではありません。強いパッションを持つからこそ、他人(時には素人)の話にも耳を傾け、また強制的にリラックスできるようにする、という方法論を検討することが望まれます。

繰り返しますが、パッションがあるからこそ、誰も考えなかった領域にまで踏み込んで物事を考えようとするのです。

パッションを高める

本稿は仮説思考を主眼としていおり、パッションそのものは主眼ではありません。したがって、さまざまなテクニックは専門書に譲り、ここでは「自分の心の声を聞く」という点に絞って話をしましょう。

情熱あるいは内発的な動機は、人に与えられるものではありません。他人は、きっかけを与えることはできるかもしれませんが、情熱そのものを喚起し続けることはできません。あくまで自分で高め続ける必要があります。そしてパッションを高めるための最大のポイントは、自分が真にやりたいことを発見するとともに、常に自分自身を駆り立てる自問を繰り返すことなのです。

そのためには、以下のような質問を自分に投げかけてみるといいでしょう(これらの質問はあくまで一例です)。

自分の生きがいを再確認する質問
「自分は何をしたいのか? 何をしているときに生きがいを感じられるのか?」
「自分がしたいことをする自由を得るためには何が必要か? 自分はその努力をしているか?」
「そもそもこの会社に入ったとき、自分は何をしたかったのか」
「自分の人生にはどのような意味があるのか? 神(もしくはそれに相当するもの)は自分にどのような使命を課したのだろうか?」

自分のパフォーマンスを再確認し、鼓舞する質問
「自分が死んだとき、悔いが残らないようなキャリアを送っているか? 家族や友人に誇れるような仕事をしているか?」
「仮に5年後の自分が今に自分を見たら、褒めてくれるだろうか? それとも叱咤するだろうか?」
「自分に与えられた機会や才能を無駄にしていないだろうか?」
「必要以上にリスクを恐れていないか?」
「自分の現状に悔しくないか? 悔しいとしたら、どうすればそれを晴らせるか?」

ところで、ビジネスパーソンである以上、必ずしも自分の意志に沿わなくても、何かしら新しい仮説を立てなくてはならない場面に往々にして立たされるものです。上司からの、「新しい商品の企画考えておいて」などはその典型です。そうした場合の対処の工夫としては、(1)そのテーマについてパッションを持っている人の力をうまく借りる、(2)そのテーマに、最終的に自己実現していく上での積極的な意味合いを与える、などが考えられます。

特に(2)ですが、組織における自由度は、結果を出した者に大きく与えられます。興味のない仕事だかといい加減にやっているようでは、自由を手にする機会はどんどん逃げていってしまうことを心に銘記しておくべきでしょう。

 

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