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ジャック・ウェルチも多用したリーダー育成の王道、徒弟的アプローチとは?

投稿日:2015/12/26更新日:2019/04/09

『グロービスMBAリーダーシップ』の第3章から「徒弟的アプローチ」を紹介します。

どのようなスキルであれ、それが高度なものになればなるほど、本で読んで学ぶということは難しくなります。それを習得する最短の道は、一流の人材に張り付いてそのやり方を見て学ぶとともに、絶え間なくフィードバックを受け、自分で考えながら自分の意識や行動を修正していくことです。これはマネジメントやリーダーシップも同様です。一流のリーダーは、一流のリーダーと濃密な時間を過ごすことから生まれます。日本にはもともと徒弟制の伝統がありますが、「技は盗め」の意識が強く、往々にして積極的かつ建設的なフィードバックを疎かにしがちです。日本の伝統にフィードバックの意思やスキルが融合した時、リーダー育成は大きく加速していくでしょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

徒弟的アプローチ

高いレベルのスキルを自ら「学び取る」ことを促す育成方法としては、職人や伝統芸能の世界で実践されている技能伝承の方法論である、徒弟制が挙げられる。

弟子が師匠と寝食を共にするなかで師匠の技を学び取るアプローチは、ビジネスリーダーの育成にも応用されている。たとえば、ビジネススクールの学生が一定期間、現役の経営者に随行する「シャドウイング」というワークがある。会議に同席し、顧客訪問にも同行する。四六時中一緒にいて、リーダーの言動を観察することを通じ、指示の仕方や時間の使い方といった表に見える振る舞いはもちろん、その根底にある判断基準や考え方を学び取ろうとするものだ。企業内のジョブ・ローテーションの一環で、幹部候補者を社長秘書の任に就けるのも同様のアプローチといえるだろう。

GEのリーダー育成にも関与していたことで有名なラム・チャランは、リーダーの資質のある人材を早期に見極め、意図的にチャレンジングな機会を付与し、1対1でコーチングしていく徒弟制アプローチをより体系的に進めることが、真の経営者を育成するうえで有効だとしている。

「徒弟は実践を通して学ぶ人のことである。練習、フィードバック、修正、そしてまた練習。将来性のある人材一人ひとりに合った仕事の機会を、本人がついていける最大のスピードで与える。新しい仕事で学ぶべきことを明確にし、きちんと身についたことを確認してから次の段階に進ませる」(『ラム・チャラン著、石原薫訳『CEOを育てる』ダイヤモンド社、2009年)。

彼の提唱する徒弟制度モデルは、「コンセントリック・ラーニング」と「意識的練習」の2つの基本概念から構成されている。有望リーダーのキャリア形成を同心円上に拡張していこうとするのが、コンセントリック・ラーニングの考え方だ。外側に行くにつれ、仕事の領域と難易度が増していく。最も内側の円は、最初のマネジメント職で身につけた基礎的なコア能力である。次の仕事がより広範で困難でも、リーダー自身に試練に見合う才能があれば、そのコア能力をうまく新しい状況に適用し、能力を拡大し、さらに広範で困難な仕事にも臨めるようになる。

そして、スポーツや芸術などの能力開発と同様に、リーダーシップも長期にわたる意識的な練習の積み重ねで開発されるとするのが、意識的練習である。経営者に必要な能力は、反復と努力に加え、建設的で具体的なリアルタイムのフィードバック、それを受けて直そうとする意志によって培われる。意識的練習を重ねることで、自動的・直感的に特定した反応ができるようになる。それが、成功しているリーダーたちに見られる一流の判断力の根底をなしているのだ。

GEのジャック・ウェルチも、コンセントリック・ラーニングと意識的練習によってマネジメント・スキルを磨いたのだと、長年彼とGEを観察してきたチャランは言う。

ウェルチは、ホッケー選手たった10代の頃から、他のメンバーにフィードバックやアドバイスを与えるスキルを身につけていた。GEのプラスチック部門で初めてリーダー職に就いたときも、オフィスでの形式的な面談だけでなく、バーで語り合うなどのインフォーマルなコミュニケーションを駆使して部下を評価・育成した。こうして、部下へのコーチングを通じてビジネスの勘所を押さえることが、彼のコアスキルとなった。

ウェルチはGEで昇進していく過程で、それまで縁のなかった複雑なビジネスや状況に対処するようになっても、部下には目前の問題をダイレクトに報告させ、部下やビジネスについてひらめきや知識を得る訓練を繰り返した。彼がGEを去るその日まで、少なくとも年5回は繰り返していた全事業と全マネジャーの評価は、「個々を育成し、集団としてまとめ、結果を出す」というコアスキルを磨くための「練習」の機会だったと見ることもできる。ウェルチが並外れたコーチかつメンターになれたのは、そうした意識的練習のおかげだった。

(本項担当執筆者: グロービス経営大学院 竹内秀太郎)

次回は、『新版グロービスMBAリーダーシップ』から「集合的リーダーシップへのシフト」を紹介します。

◆グロービス出版

 

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