パワーの源泉: あなたは他人を動かす力を持っていますか?

『グロービスMBAリーダーシップ』の第2章から「パワーとは何か」を紹介します。

いまや企業のステークホルダーは非常に多岐にわたっています。従業員はもちろんのこと、顧客、パートナー企業、資金提供者、地域社会など、数え上げればきりがありません。こうした中で、リーダーは、企業目的を達成すべく、彼らに対して適切に影響を与えていくことが求められています。この人に影響を与える力が「パワー」であり、その源泉となるのが「パワーの源泉」です。自分にパワーがないところでどれだけ他人を動かそうとしても無駄です。正しく自己のパワーを認識、行使するとともに、欠けているものがあればそれを補う努力がリーダーには不可欠なのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

パワーとは何か

同じ内容のことを同じ役職の人が指示するとき、A部長が言えばスムーズに進むが、B部長が言ってもあまり進まない、といったことがよくある。一口に「人を動かす力」と言っても、そこにはさまざまな要素が絡み合っている。

スタンフォード大学のジェフリー・フェファーは、「行動に影響し、出来事の流れを変え、抵抗を乗り越え、これがなければ動かない人々に物事を実行させる潜在的能力」をパワーと定義し、詳細な分析を行った。彼によれば、パワーは大きく、公式の力、個人の力、関係性の力の3つに分類でき、それぞれをさらにいくつもの要素に還元できる。組織を動かすには、これらパワーの微妙な差異を理解し、使い分ける必要がある。

■公式の力
公式の力は、強制力、報酬力、正当権力、情報力の4つを源泉とする。
強制力とは人の配置を決めたり、降格させたりする権限で、報酬|力とは大を昇進、昇給させる権限である。そして、強制力と報酬力を含む組織上の権限を正当権力という。さらに情報力とは、人事情報など限られた情報にアクセスし、コントロールする力のことをいう。

これら4つの公式の力は、人間の合理的な判断のみならず、感情面での判断にも働きかける。たとえば、絶大な権限を持つ経営幹部の決定に(本音は違ったとしても)だれもが反対できないのは、公式の力に対する恐怖の感情と、追従することで得られる利益(合理的判断)を背景としている。

公式の力があれば人・組織を容易に動かせると思われがちだが、そうではない場合も多い。たとえば新任管理者は、管理職としての権限を持ってはいるものの、その権限で人・組織を動かそうとしても、組織や部下の抵抗に阻まれてうまく動かせないことが多い。そこで公式の力以外のパワーである、個人の力、関係性の力が重要となる。

■個人の力
個人の力は、専門力、同一化力、カリスマ性の3つを源泉とする。
専門力とは、専門的な知識や技術、特殊なスキルによる力をいう。同一化力とは、尊敬する上司のように、自分も同じようになりたいと思わせる力である。そして、同一化力の極端なかたちとして、カリスマ性がある。たとえば、社内でその技術に関しては右に出る者がいないエンジニアの意見が通るのは、当人に専門力があるからだ。直接のレポートラインにないリーダーに広く人望が集まるのは同一化力が働いており、創業者や中興の祖が経営に影響を与えるのはカリスマ性による力が働いているためと考えられる。

こうした個人の力は、業務に深く精通したり、高い実績によって社内で確たる地位を築いたりした場合に持てるものであり、これを獲得するには、集中力、活力とスタミナ、対立に取り組む意欲といった、競争の激しい場で生き残る能力、特性が求められるとフェファーは説明している。

■関係性の力
公式の力、個人の力は、あくまでもその個人に帰属するパワーであるが、人・組織を動かす際にそれだけに頼るのではなく、ほかの人のパワーにも頼るのが関係性の力である。自分への支持を取り付けたり、ネットワークを構築することで自らの基盤を強化したりするわけである。たとえば、政治や企業における派閥は、パワーを持つネットワークの一員であることで、他者を動かそうとするものである。

関係性の力を得るためには、他者に対する感受性や、自らの主張に対する柔軟性、時には自分のエゴを隠すことができるガといった能力、特性が求められる。

(本項担当執筆者: グロービス経営大学院主任研究員 新村正樹)

次回は、『新版グロービスMBAリーダーシップ』から「リーダーシップとネットワーク」を紹介します。

 

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