大津市長・越直美氏×品川女子学院・漆紫穂子氏×初等中等教育局・河村裕美氏
G1地域会議2014 関西
第4部 分科会C 「G1東松龍盛塾 日本を再生する"教育改革"とは~行政と学校教育の現場から~」 Part3
国を担う人材を育て、ひとりひとりが豊かな人生を実現するために、教育はどのような姿を目指し、行政と現場はどのように変わるべきか。大津市の越市長、品川女子学院校長であり、教育再生実行会議有識者である漆紫穂子氏による議論。質疑応答編(肩書は2014年10月18日登壇当時のもの。視聴時間21分54秒)。
漆 紫穂子氏
品川女子学院
校長
越 直美氏
大津市長
河村 裕美氏(モデレーター)
文部科学省初等中等教育局
視学官
【ポイント】
《行政と学校教育の現場、義務教育の課程のなかで、子どもたちにどういう人間に育ってほしいのか?》
・「失敗」「もめごと」の体験の場をつくることが大事。問題が起こった際に、人のせいにせず、仲間を集める一人目になって解決しようとする女性を育てたい(漆氏)
・義務教育の間に、自分で考えて自分で選択できる多様な価値観を身につける。画一的な大人が画一的な教育を施した結果、ひとりひとりが尊重されなくなってしまっていることが問題(越氏)
・日本の義務教育は、小学校四年生レベルでは世界のトップレベル。私自身は現場の力を信じている。文科省としては、高校からどういう能力を身につけるべきかの改革が必要だと思っている(河村氏)
《質問:模範解答のある学校と異なり、会社では人と同じ答えは求められない。教育の場と会社との間の齟齬が出ている。教育の場で、正解のないことを尋ねてみては?》
・先進国が次に挑むべき教育は、正解のない解をいかに見つけるか。体験や見学より「経験」が必要。親がリスクや障害をとりさってはいけない(河村氏)
・現行のカリキュラムでも、世の中の問題点を発見し、解決のアクションを起こす発想はトレーニングできる。総合学習を活用して、行事などできっかけを与え、知識を総合して解決する。その際には人をまきこんで、正解のない問いへの解を見つけることができる(漆氏)
・アメリカのロースクールでは、アメリカ人は間違ったことを平気でいうのに驚く。正解ではなくても議論が発展していく(越氏)
《道徳教育や規範がもっとも大事だが、どういった道徳教育が必要か?》
・いじめ防止の一環として、子どもたち自身に考えてもらうことを重視。自身で考え、行動すること(越氏)
・地域格差、家庭格差もあり、学校がある程度引き受ける覚悟が必要。一つに、カウンセリングの手法やロールプレイングによって共感力を育てる。二つに、自分自身の基盤となる日本的な道徳観を知る。「道」とつくものを体験することで自分を知り、理解しあう足がかりをつくる。三つめに、行動に移す体験の場を用意する。体験を通して現実を知り、さまざまな価値観があることを知る。それが、自分なりの価値観となる。つまり、機軸を教えたのち体験で定着させるということ(漆氏)
・道徳は、人間の本質、生の姿、タブーのところに踏み込まないと子どもたちの心にささらない。教科化した道徳が「お勉強」にならないようにする(河村氏)