トップに寄り添い、変革を進めるうえで部長が果たすべき役割

投稿日:2026/03/30

今年2月発売の『グロービスMBAエグゼクティブ・マネジメント入門』から「6章 創造と変革を推進する」の一部を紹介します。

創造と変革はビジネスにおいて最も難しい営みの1つである。特に変革は、それまでの人々の意識や行動の変容を必要とするだけに、慣性の法則が働き、一筋縄では進まない。仮にトップが腹をくくって変革に挑んだとしても、1人の力だけではどうしようもないのが変革というものだ。変革にはある程度の「数の力」も必要なのだ。

必然的に、エグゼクティブの入り口の地位にいる部長たちもトップによる変革を支える行動をとることが求められる。具体的には以下のようなものだ。トップとコミュニケーションしながら、これらの行動をとれる部長が多いほど、変革は成功しやすいともいえる。

  • 早期に変革チームの一員となる
  • ビジョンづくりの手助けをする
  • 経営者の意図や戦略を現場に伝える
  • みずからが変革の体現者となって範を示す
  • 変革に必要な経営資源やサポートを現場に提供する
  • 部下の抵抗の度合いに応じて適切な手段を取る
  • 現場の声をトップに伝えるリエゾン(仲介)役となる
  • トップを孤立させないように励ます
  • 他の変革チームメンバーと連携する
  • 「変化常態」の組織文化を根づかせる

今回はこの中から、「現場の声をトップに伝えるリエゾン役となる」「トップを孤立させないように励ます」「他の変革チームメンバーと連携する」について解説する。皆さんの会社では、部長がそうした行動をとっているだろうか。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇ 

現場の声をトップに伝えるリエゾン役となる

変革はトップダウンで進められることが多いが、現場がどのように感じ、どのような状況にあるかを率直に伝えることも、変革推進者としての部長の重要な役割である。特に、現場でどのような新しい課題や抵抗が生じているのかを、解決策とともにトップに報告することが求められる。経営視点と現場視点を密接に結びつけることで、変革の実効性を高めることができる。

変革の進捗を伝える際には、定性的な情報だけでなく、定量的な情報を併せて報告することが望ましい。そのために、KPIを明確に設定し、目標との乖離を正確に把握する必要がある。たとえばDXを進めている場合、どの程度作業時間が短縮されたのか、顧客満足度がどのように変化したのかなどを測定する。ここでは、施策がどのような成果をもたらしたかを的確に把握するための戦略的思考力が求められる。

ここで最も避けるべきは、変革の遅れを隠すことである。それは変革の方向性をゆがめたり、重大な遅延を招いたりするおそれがある。トップもまた、遅れを報告した部長を安易に責めるのではなく、正直な報告や代替案の提示を歓迎する姿勢を示すことが大切だ。

また、困難を抱える同僚の部長にナレッジを共有したり、自分なりの代替策を提示したりすることも有効である。加えて、現場との率直なコミュニケーションを通じて本音を引き出す姿勢を持つことも重要である。

トップを孤立させないように励ます

変革の指揮を執るトップも、時には不安に駆られることがある。そうした時にトップを支え、自信を取り戻してもらうよう働きかけることも部長の役割である。ます、自身がトップの打ち出した方向性を信じていると明確に示すことが重要だ。これは、できれば同僚の部長たちと連携して行うのが望ましい。部長層の支持があることは、トップにとって大きな励みとなる。

また、具体的な成果を共有することも効果的である。トップはどうしても現場との距離が生まれやすいため、より現場に近い部長が節目ごとに成功事例や進展を伝えることで、変革の妥当性を実感してもらうことができる。もちろん、都合の良い情報だけを選んで伝えるのは避けるべきであり、あくまで全体として変革が前に進んでいることをファクトベースで伝えることが大切だ。

注意すべきは、行きすぎた忖度である。トップの苦労に共感を示しつつも、建設的な対話やフィードバック、時には率直な進言を行う姿勢を持つことが望ましい。

他の変革チームメンバーと連携する

変革は一部署で完結するものではなく、部門の壁を超えた連携が不可欠である。そのためには、横のつながりを最大限に活用することが求められる。ここで効いてくるのが、日頃からの人脈づくりである。同期の仲間はもちろん、仕事で接点のあった先輩や後輩などと、常に気軽に話せる関係を築いておくことが望ましい。

また、こうした仲間に対しても信頼資産を構築しておくことが大切だ。「○○さんのためなら、いざという時には一肌脱ぐよ」と思ってもらえるだけの信頼資産を蓄えておきたい。

そのためにも、相手が困っている時には支援の手を差し伸べるといった、Win-Winの関係性を日頃から意識して築くべきである。仲間への支援は、単にリソースを提供するだけでなく、ナレッジの共有や率直な提言なども含まれる。自分がどのように難しい問題を解決してきたか、成功・失敗を含めて情報交換することが役に立つ。また、落ち込んだ時のリフレッシュ方法など、変革に伴う悩みやストレスの対処法を共有することも有効だ。こうした連帯意識の醸成は、部門間の垣根を下げるだけでなく、「自分だけではない」という安心感を生み、変革を支える心理的基盤にもなる。

グロービス出版


グロービスMBA エグゼクティブ・マネジメント入門
著:グロービス経営大学院 発行日:2026/2/11 価格:3,410円 発行元:ダイヤモンド社

  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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