ベンチャー×地域の“破壊的”イノベーションが日本を変える[5]
高島: それでは、引き続き、質問を受けたいと思います。次の方、どうぞ。
質問者: ネクスト社長の井上高志です。僕らは「HOME’S(ホームズ)」というサービスを運営しているのですが、スペースマーケットさんと同じく、空き家問題の解消に興味があります。
今、全国に820万軒空き家があって、山梨県では22%の家屋、つまり5軒に1軒が空き家なんです。どんどん老朽化して誰も住まなくなるよりは、既存の建築物を用途を変更しながら使い続けていくほうがサステナブルだと思っています。
以前、新経済連盟サミットで、「シェアリングエコノミー」という議題のパネルディスカッションでモデレーターを務めさせていただいた際、Airbnb(エアビーアンドビー)やLyft(リフト)などといった会社の創設者たちとお話ししました。そこで、Airbnbモデルを、規制を乗り越えて日本でもやりたい、と考えるようになりました。
自民党のふくだ峰之議員に「グレーならガンガンやっちゃえ」とおっしゃっていただき、勇気をもらったのですが、「上場企業として、そこまで本当に踏み込んでいいのか」と迷うところもあります。アドバイスいただきたいです。
小泉: そうですね。グレーゾーンに関しては、アメリカには「グレーならガンガンやっちゃえ」という風土がある。アメリカの法体系は、そもそも英米法だからです。
日本の法律は大陸法という流れをくんでいるので、日本では「グレーならガンガンやっちゃえ」はなかなか難しい。さらに、グレーなのでやってみたら黒と認定されて、その後、立ちいかないぐらいのリスクを抱えてしまったら、企業にとってマイナスですよね。
だから、最近始まった「グレーゾーンの判定をちゃんとします」という国の制度を利用するのはいかがでしょう。「企業実証特例制度・グレーゾーン解消制度」と呼ばれるものなのです。
質問者: ええ、1カ月以内に返事するんですよね。
小泉: そうです、その制度を使ってもらえれば、あらゆる省庁の規制に関わるものであっても、一括処理し、1カ月以内に必ず「白か、黒か」の返事をします。
実際にそれがかたちになったのが、スポーツジムのトレーニングメニューです。利用者の健康を個別に診断し、カスタマイズされたトレーニングメニューを提案する行為が医療行為にあたるかどうか、という問題があったのですが、この制度で「医療行為ではない」との回答が出ました。
別の事例では、三菱ケミカルホールディングスグループの健康ライフコンパスが、ドラッグストアで消費者が自分で血を採血し、健康診断に使うサービスはグレーなのかどうかと、この制度を使って問いたのですが、これも「OKです」との結論が出ました。結果、こういったビジネスが広がり始めています。
だから、どうか皆さん、この制度を知っていただいて、ぜひ活用してください。
高島: 小泉さんにお聞きしてもいいですか。
国の機関として、1カ月以内に「白か黒か」を回答する制度ができた。これはもちろん素晴らしいのですが、まだいろいろと審査されていない段階で国から正式に「×(ばつ)」がついてしまうと、今後のビジネスの芽を摘みませんか。
小泉: 回答に異議がある場合は、「規制改革ホットライン」というものに載せることができます。そうすると、今度は内閣府の規制改革会議で、「果たしてこの規制を認めるかどうか」をその規制を所管している官庁と議論します。ですから、グレーな事業はどんどんこういった制度を利用してもらったほうがいいと思いますね。
高島: なるほど。
ちなみに、福岡市の区域会議にスタートアップ分科会を置くことが決まりました。そこで、全国のベンチャーの皆さんからいただいた提案を実験する取り組みが始まるので、良かったらこちらも活用してもらえればと思います。
小泉: あとは、国の規制ではなく、県や市町村の規制に引っかかって新しい取り組みができない現状もあるんです。国に相談してもらった際に「これは、実は県と市の管轄ですよ」とお伝えすると、意外なことに、相談者側から「県を相手にするとなると、もっと大変だな」という反応を受けることが少なくないんですよね。
高島: 結局、シェアリングエコノミーに対する規制は、既得権益を持っている人たちが、既得権益を守るために市町村に圧力をかけるわけです。
ですから、地方からそういった面を変えていくほうが大変なこともあるので、そこは国と地方、お互いに悪者になっていきながら、役割分担すべき場面ですね。
特に、今は国のラインが、小泉政務官など規制を突破しようという人材が今までにないくらい揃っているときなので、相談をするならば今がチャンスだと思います。
小泉: 今日は宿泊施設に関連する規制の話も出ましたが、前出の「RESAS(リーサス)地域経済分析システム」が使えるんです。
「観光客がどれぐらい来ていて、宿泊客が何人で、地方自治体には宿泊施設が全部でいくつある。部屋の総数と観光客の流入数を比べると、部屋数が足りない。その満たされない需要を、個人の所有している物件をシェアリングすることで満たしたいんです」と。
こういったデータは、「私たちの事業は既得権益と衝突しない」という説得材料に使えるものなんです。人口マップや観光マップ、自治体比較、創業率などは誰でも見られます。ぜひ、こういった活用の仕方もご検討いただきたいと思います。
自分の住んでいるところの人口などの基本情報を住民一人ひとりが認識して、ビッグデータを使った議論ができるようになれば、僕は本当に政治が変わると思っています。
この話、若い人ほど目をキラキラさせて聞いてくれるんですよ。これから18歳から投票ができるようになる可能性が高いこととも相まって、かなり希望がある流れだと思います。
皆さんのような企業からも、今までの要望のかたちとか提言のかたちとはまったく違う、具体性のある取り組みやアイデアがあがってくる時代になるんじゃないのかなと思っています。
ぜひこれから一緒になって、地方創生を頑張っていきましょう。ありがとうございました。
※開催日:2015年4月29日