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移民受け入れ、養子縁組の推進etc.人口減対策の決め手は?

投稿日:2015/05/28更新日:2019/04/09

選択する未来 ~人口減を食い止め継続的に成長する方法とは~[4]

会場(堀義人氏:グロービス経営大学院学長/グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー):「選択する未来」委員会による1億人維持の提言は素晴らしいと思ったが、その具体的な方法論が提示されていないのは残念に感じた。議論はなされていたとのお話だったが、それがオフレコになってしまう、と。それはタブーだからなのだと思う。しかし、叩かれたり批判されたりするのが嫌だからということでオフレコにしてしまうと、意識が変わらなくなってしまう。なぜ、「選択する未来」委員会でそういった具体的提言が出なかったのだろう。また、やるべきことは「100の行動」の39番と80番に明確に書かれている。婚外子の問題と移民計画をつくっていくということだと思うが、その辺に関してどう思われているのかも伺いたい。

会場(熊谷俊人氏:千葉市長):人口減に対して率直に向き合っている姿に大変感銘を受けた。職住近接について伺いたい。人口減の要因として、戦後、職場と家がどんどん離れていった点が挙げられる。諸外国と比べても、日本人の通勤時間はあまりに長い。結局、日本では6時に帰っても子どもと食事がとれない。その問題をクリアしないとワークライフバランスはいつまで経っても改善されないと感じる。実際、従業員数10人以下となる企業の従業員のほうが、子どもをたくさん産んでいることが現実としてたくさんある。従って、職住近接を実現していくなかで、結果的にはワークライフバランスや生産性向上という面で、あるいは人口減対策についても一定の成果が出てくるのだと思う。本委員会で、職住近接という諸外国と比べてかなり特異なこの課題について、どんな議論がされたのか、あるいはなされなかったのかを伺いたい。

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石黒:職住近接については議論がなされていない。そこはいろいろな方法があると思うが、特に東京の出生率が低いことは大きな問題だ。普通なら1.3~1.4%のところが東京は1%。二人に一人、減っていくという状態だ。その要因として、職場が離れているという問題も関係していると思う。そう考えると、東京は魅力的な都市ではあるけれども、保育所の問題も含めて子どもを産み育てるには問題が多い。従って、魅力的な地方都市をつくって地方へUターンやIターンをさせていくのと同時に、東京のインフラも整備しなくてはいけないのだと思う。私としては、保育所はぜんぶ6時に締めたほうがいいと思う。少なくともシリコンバレーではぜんぶ6時に締めていた。諸先輩方は反対なさるけれども。

三村:オフレコという点について言うと、我々のときはすべて公開していた。唯一、先ほどの妊孕力ということや女性と男性の能力の問題については、まあ、どうしようかと迷ったけれどもとりあえずは非公開になった。ただ、それ以外の全データはマスコミに提供している。今回は非常に公開性の高い運用をしたと思う。

あと、具体論がないというご指摘はその通りだと思う。ただ、我々の役割は国として向かうべき方向を示すことだった。このメンバーでその具体論まで詰めることは、むしろ最初から諦めていた。逆に言えば、その方向性を石破(茂氏:衆議院議員/地方創生担当大臣)さんのところで受け取ってもらい、そこで具体的に内容を詰めてもらうということで任せたつもりだ。従って、ご指摘の通り、具体論は議論していない。

石黒:たとえば移民の問題等、我々の委員会で議論できたこともできなかったこともある。ただ、私がこういう政府の委員会に入っていつも感じていたのは、「なんでこんなことをやっているのかな」というものだった。「私の発言が一体何に生かされるんだろう」と。でも、何かを言い続けていくことで、マスコミが書き始める。ホワイトカラーの生産性についても、今は一挙にマスコミが書き始めている。それで、各企業がこの問題へのアテンションを高めてきた。日本人は、長いこと誰もやらないけれども、誰かが言い始めて盛りあがると皆で動くタイプ。だからホワイトカラーの生産性もこれから高まると思うし、マーケティングやブランディングでも同様だと思う。まずは我々が言い続けたことでマスコミが書いてくれた。もちろん書き方の良し悪しはあるが、今回は比較的良い方向で書いてくれていると思う。

御立:規制改革では具体論が重要になってくる。民間が入るようなこういう会議の役割というと、今回のように大きく一石を投じて方向性を変更していくというのもあると思う。ただ、さらに話を詰めて具体論に落としていくというのもあろうかと思う。この辺はどういう風にやれば進むとお考えだろう。

宮内:政策の具体論では大変な能力が必要になる。時間と労力をかけて、具体論をつくるだけのリソースがないとなかなか難しい。

御立:官僚機構と対峙できるだけの能力が必要になる、と。

宮内:そう。官僚に負かされないような具体論をつくるため、我々はたとえば規制改革会議でも分野別に分けたうえで、分野ごとに学者や専門家の方々と大変な議論を重ねていた。そのうえで、やっと行政に対峙できるものが出ていたわけだ。それでやっと「50:50」。そこから戦争が始まる。だから、具体論をつくるのは大変重要だけれども、本当は官僚自身にこちらの味方となってもらうことが大事だと思う。そういう人を見つけられるかどうか。

御立:会場にも官僚の方はいらっしゃるし、行政の長もいらっしゃる。そういう方々のなかの改革派の人たちと手を取り合うほうが実は早い、と。

宮内:実に少数だけれども、官僚のなかに改革派がいる。彼らを見つけ出して味方にすることが非常に重要だ。加えて、改革派の学者・専門家も議論に入れていく。そうでないと、とても日本の官僚機構に対峙できる対案はつくれない。だから、政治家が政治主導とは言いながらも、よく見たら官僚主導になってしまっているわけだ。日本のシステムを変えるのは大変難しいし、具体論を出すとすぐ潰される。「第3子に1000万円」なんて言ったら、あっという間に財務省が(会場笑)、なぜダメかをすごいレポートにして出してくれる(会場笑)。とにかく、ここで口にするのは簡単だが、反論されたときに戦えるものをつくるため、ものすごく勉強していかなければいけない。

三村:具体論は、やっぱり我々個人がどういった問題意識を持ち、どういった解決策を持っているか伝えることだと思う。幸いにして今回の地方創生および少子化対策では1800の自治体に対して、努力義務として、一つのビジョンと対策を1年でつくってくださいという形になった。そこで、恐らくは人口の少ない自治体ほど熱心に、どうしたらいいかを考えていると思う。千葉市でもやっておられると思うけれども。

しかし、単に行政でやるだけでは仕方がないので、商工会議所としても全面的に協力していこうと思っている。自治体による議論のなかに我々の知見をどんどん入れていく。そうした作業によって、地に足の着いた具体論が展開されていくのだと思う。従って、我々全員がその責務を担っているのだと考えていただきたい。

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御立:勉強と関与の両方をやらないと真に変わってはいかないということだと思う。官僚システムのお話に関して言えば、以前、「それで出世を損なった官僚がいたら、その人の面倒を見てあげるぐらいの気概がない限り、それを期待しちゃいけないんだよ」ということを宮内さんに言われたことがあって、背筋が伸びたことがある。それぐらいのつもりで我々はやるしかないのかなと思う。

会場(里見治紀氏:セガサミーホールディングス株式会社取締役):移民の議論は途中で止まっていたとのお話だった。私は少子化対策の一つとして、アメリカ同様に出生ベースで国籍を与えるという考え方もあると思っている。移民1世はなかなか溶け込まないが、2~3世になれば国に溶け込むということもあると思うので。そうした議論や提言はなかっただろうか。

会場(土井香苗氏:ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表):宮内さんが人口妊娠中絶について、勇気を持ってお話しをされていた点に感銘を受けた。ただ、人口妊娠中絶をしなくてはいけない最大の理由は育てられないから。そして、一方では石黒さんのように育てたいという方も多い。これをつなぐ仕組みとして赤ちゃん養子縁組というものがある。ただ、これが年間100~200件しか実現されていない。正式には25万件、もしかしたら50~100万件あるかもしれない中絶のうち、本当に一部しか養子縁組がなされていない。我々はそこで、赤ちゃんの人権という観点から養子縁組を推進しているところだ。G1でもそのプロジェクトをローンチしようということで、首長さんのネットワークでやってくださっているし、そこで石黒さんも推進者の一人になってくださっている。ただ、今は厚生労働省も「やっていいよ」としか言わないので、地方自治体も実際には面倒だからやっていない。この辺についてどうお考えだろうか。

宮内:個人的な意見だが、移民に関してアメリカと同じような考え方ができるかというと、なかなか苦しいと思う。アメリカは移民で成り立っているけれども、やはりどんどん変容している。もうWASPの世界ではなくなってヒスパニックの世界に変わろうとしている。日本は、そうした移民政策とは別の政策を考えないといけないと思う。また、ヨーロッパもイスラムからあれだけの移民を受け入れていて、たとえば2~3世代経っても同化しないということで今は非常に悩んでいる。一方、日本を見てみると、朝鮮民族の方が日本にずいぶん来られて、そこで日本人は2~3世に到るまで差別をしている。そういう意味では我々のパフォーマンスも決して良くなかった。

そういうなかで、日本の今の文化をできるだけ保つ…、といってもそれはどうせ変わるけれども、保ちながら移民を受け入れる場合、安い賃金だから労働者を受け入れるという発想は排除するべきだと思う。やはり上等な人に来ていただく。「日本に住みたい」と考えてくれる上等な人に、なんとかお願いしてでも来てもらうというのが一つあると思う。また、3Kのような仕事は安くないといけないなんていう考え方も止めて、「これは高いものなんだ」と。そして、その期間労働みたいなものをきっちりと繰り返していくということでないと、日本の社会が保てないような気がする。とにかく、移民というのは、1億2700万から1億に減っていくときの影響をできるだけ緩和するためにうまく来てもらうものだ。日本民族で1億を保つために移民を入れ続けなければならないという考えには、少し違和感がある。

御立:何を目的にするかによって手段も違ってくるということかと思う。

宮内:そうだと思う。日本国も変わるけれども、日本人の心理としてアメリカのようにはなりえないと感じる。また、ヨーロッパの苦悩を見ていると「怖いな」と思うし、ここを間違ってはいけないと思う。

御立:古くは飛鳥以降、帰化外国人の方々は、元々日本になかった技術等を持ってきたわけだ。高度な技術等を持った人たちが入って来て、それが我々の国家を形づくったというところがあるのかもしれない。

三村:高齢者の意見としてほとんど同じだけれども、なんのために移民を入れるのか、考える必要があると思う。たとえばアメリカは移民が入ることで、自国で子どもたちが数多く生まれるようになり、成長率は0.8%プラスだ。日本は今のところマイナス0.3%だから、明らかに1.1%、他の条件が等しい限りは差がある。これは労働力としてだけでなく、ヒスパニック系の出産率が非常に高いためということもある。そういう点も含め、アメリカ経済全体にとって移民が大きなプラス要因になっている。まあ、アメリカは最初から多民族国家だけれども、日本はそういう社会を希望するのか。より高いGDP成長率を担保するため、多数の移民を入れるということを許容するのか、考えていかないといけない。僕としては、まだそこのところの議論は十分なされていないと思うけれども、場合によってはやったほうがいいのかもしれない。

それともう一つ。変な話だけれども、今、移民に関する基準等を緩めていけば、これはもう明らかに中国からの移民が数多く入ってくる。それをどう考えたらいいのか。言ってみれば、移民政策というのは、所詮は管理可能移民政策だ。シンガポールにその例があるように。だから、あまり大きな暴走ができないような仕組みをつくってから移民を考えるべきだと思う。一方、高度人材については世界中で奪い合いだから、これは早く動かないと日本に来る人がいなくなってしまう。ここはなんの問題もないのだけれども、結局はベースのところで通常の労働者をどうするかという話が大事なのだと思う。で、僕はとしてはまだ時間が早いと思っている。

御立:それはもう議論しておかないと、たとえば北朝鮮が崩壊したり、中国で大きな政治不安が発生したとき、海を渡って10~50万の人が来るということも十分にあり得る。それにどう対応するかも議論をしておくべきタイミングという気はする。

三村:それと、養子縁組のお話は、いいですね。石黒さん、委員会で出してくれたらいいのにさ(会場笑)。社会全体で赤ちゃんを大事にすることを、具体的に示すアイディアとして非常にいいと思う。どこかで提案したほうがいいんじゃない?

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宮内:私も今のお話、とってもいいと思った。親が云々でなく、子どもに生まれてくる権利があるわけで、それは社会で大事にしていくべきだ。生まれてくる子どのにはなんのネガティブな背景もない。親がどうとか、関係ない。だから、そうした子どもたちをうまく育てるシステムをつくるというのはすごく大事なことだと思う。

石黒:この件は委員会でちょっと話したような気がするけれども(会場笑)、あまりに議論のテーマが多かったので、その一つひとつを深堀りできなかったという反省点はある。ただ、これも日本は悪いことばっかりやってきたということの一つだと思う。その積み重ねが今の少子化につながっている。養子縁組に関しても同様で、諸外国に比べると極端に数字が低い。生まれてきて、施設に入れられているお子さんがたくさんいらっしゃる。そして、それと同じだけ、子どもが欲しいと思っている人もいる。でも、そのマッチングがされない。なぜなら各種規制があるから。たとえば私はシングルだからアダプションができない。では、そういう人たちがどうしているかというと、諸外国からもらってきているわけだ。

御立:ほかにも40歳を超えていると既婚でもアダプトできないとか、変なルールがある。

石黒:そう。そういうルールがある。でも、今の時代、「40歳から20年間は育てられないんじゃないか」という仮定のほうがおかしいわけだ。日本はルールをつくるとき、いつも細かいことを見ている。でも、もっと俯瞰的に「何をするのが正しいのか」という大目的を持つ必要があるし、その目的からすると「どうでもいい」となるような細かい規制も多いと思う。そういう風に考え方を変えたほうがいいと思っている。

御立:大変学びの多いセッションだった。今日のポイントとして、まずは「諦めない」ということがあった。「人口は減っていっちゃうから仕方ないよね」でなく、まずは1億で止めることを目指す。それも簡単ではないが、その目標を立てて必死でやる必要があるのだと思う。それで、1000万円払うことも含めてどんどん議論を重ねるうち、少しずつ物事が前に進むのだと思う。また、二つ目のポイントとして、人口問題は他の問題との絡みが非常に多く、そこで深堀りしていくと大変勉強になる。あるいは、他の議論をするときに人口問題を抜きにしても、ほとんど意味がないという話がかなりある。やはり人口の話に皆で正面から向き合っていく必要があるのだなと感じた。

そして、最後のポイントは「関与する」ということ。勉強しただけで「面白いね」で終わってはほとんど意味がない。社会のあり方を含め、経済成長を超えたような領域の議論も重ねていかないと、人口問題というのは決着がつかないのだと感じた。そこで、自分自身の問題としてどのように関与するのか。どのようなイニシアティブに我々が絡めるかを考えさせていただく、非常に学びあるセッションとなった。オーディエンスの皆さんにとってもそうであったことを祈って、本セッションを締めたい。最後にパネリストの皆さまへ拍手をお願いします。ありがとうございました(会場拍手)。

※開催日:2015年3月20日~22日

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