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シリコンバレーは街全体が一つの会社になっている!?

投稿日:2015/05/12更新日:2019/04/09

地域発ベンチャー大国・日本をつくる[2]

高野:冒頭で「関西型エコシステムがつくれるかという議論にしよう」とのお話をしたが、とはいえ、シリコンバレーの現状も生で見てきた人にもう少し聞きたい。(18:24)

岩田:シリコンバレーは本当にすごいところだ。何がすごいかというと、ほとんどの日本企業にあるものが逆にない。企業理念がない。日本企業なら、たとえば中小企業のHPにも企業理念のコーナーがあって、「当社はこういうことで社会課題を解決します」といったことを書いている。でも、米国会社のサービスHP等で、そこに企業理念が載っているところをご覧になったことはまずないと思う。

「すごいな」と。日本企業は日々の経営のなかで企業理念を語るけれど、シリコンバレーの会社は企業理念を語らない。では、どうやって皆をマネジメントするのか、あるいは求心力を得るのか。よくよく聞いてみると、シリコンバレーには社会共通の企業理念みたいなものがある。「3年でイグジットする」(会場笑)。そういう大変分かりやすい理念に向けて皆が頑張っている。経営者も資金を調達したときから、「創業メンバーに半分ぐらい渡してもええわ。4人で25%でもええわ」と。で、そのあと調達したらもう半分渡して、「自分は12.5%になってもいい。そのあと5%になってもいい」と。3年でイグジットするからその計画がうまく成り立つ。

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で、社員も基本的にはストックオプションをもらわないと働かない。アメリカ型ストックオプションというのは面白い。日本では辞めたら放棄になるけれど、シリコンバレーでは辞めたあとも持ち続けることができる。で、しばらくしてその会社がどこかに買収されたら、その人がいきなり儲かるなんていうことがある。

そうなるとストックオプションを効率良く貯めるためには、3~4年で次の会社に移ったほうがいいという話になる。企業としてもそれでいい。営業やエンジニアに関してはノウハウを取れば勝ちだ。営業リストのようなものは個人が持っているから、そのリストを食い尽くしたらその人は不要ということになる。だからその人を買ってきて、その人が持つリストに売っていく。で、3年ほどしたらそのリストも尽きるから、その時点で「さようなら」。とにかく社会全体が3年でイグジットするという共通理念を元にうまく動いている。一つの会社のような感じで圧倒的に完成されている。

で、そのなかで経営リソースとなる「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」が効率的に、最も強く求められているところへ回っていく。そういう、一つの大きな組織のようなイメージがある。これこそ究極のエコシステムなのかな、と。また、圧倒的な資金があるし、情報もメディアもあるし、人という面でも世界中から集まってくる。すべてが完成されて、高度に融合しているのがシリコンバレーなのかなと、私は理解している。

谷井:私どもはサンフランシスコに投資子会社を持っている。それで現地のベンチャービジネス等に少し投資をしているのだけれど、まず、VCのあり方が違うという気がしている。アメリカのベンチャーキャピタリストは投資できる産業分野が限られていて、それも結構ニッチなところまで決まっている。たとえば、単にITへ投資するというのではなくて、それがBtoBなのかBtoCなのか、と。もっと言うと、「私はソーシャルしか投資できません」ということがある。また、そうしたキャピタリストはそれらの分野でビジネスをした経験があることも前提になる。そういう人間だからこそ理解できるビジネスのキーポインを踏まえたうえで投資している、ということがあるように思う。

これは、フェアチャイルドセミコンダクターから始まるシリコンバレーの歴史を紐解いてみても分かる。今話題のイーロン・マスクもそうだ。彼は「PayPalマフィア」なんて言われているけれど、要するにビジネスをつくりあげて大成功した人間たちが順番にスピンアウトしている。それでVCになったり、別のビジネスで当事者になったり、ものすごい勢いで変わり身をしている。だから、ビジネスで生まれたビッグマネーがシリコンバレーのなかで再投資されている。そこで誰に投資するかを決めるのも、そのなかにいる人たち。しかもビジネスの当事者が投資に関与しているわけで、お金の流れとしてエコシステムがあると感じる。

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吉川:街全体が一つの会社のようになっているという感じは私もしている。だから、そのなかで信頼を裏切るようなことをしてしまえば、なかなか個人として生きていけない。信頼をすごく重要視していると思う。その意味では日本企業を意識するところがあるのだけれども、彼らは企業の枠を超えて自分をインダストリー全体のなかで見ている。それで、自分の専門分野として何に貢献していくかということを常に考えているし、キャリアプランがしっかりしていると感じる。(22:31)

で、とにかく3年ぐらいでどんどん変わっていく前提に立っている。私としては1980年代の日本企業よりもシリコンバレーの企業ほうが嘘をつかないという感じがある。勝負の期間が短いから契約書に書いてあることを徹底的に守る。一方で、投資をしても、基本的にはその契約内で終わってしまうというか、それ以外の話はまったく出ない。期間が過ぎたらおしまい。次の投資家を探す。非常にドライだ。「ここまで助けたのに」みたいな義理人情がまったくないという感じで、びっくりする。

私はボストンのほうにも投資していたけれど、そちらは義理人情が効くというか、中長期の貸し借りができる感じがある。でも、シリコンバレーは本当に短期間の勝負だから、中長期の貸し借りは絶対にあり得ない。それはそれで事情もよく分かるし、そのなかで契約上の文言には忠実にやっていく。それを踏まえたうえで、心して契約書をつくっていかないといけないなという印象を持っていた。

→地域発ベンチャー大国・日本をつくる[3]は5/13公開予定

講演者

  • 岩田 進

    株式会社ロックオン代表取締役社長

    1977年大阪生まれ。関西学院大学商学部に入学後、バックパッカーとして東南アジア・北米を旅する。帰国後、学生にして飲食店経営に挑戦。2000年には旅行ビジネスで起業。2回の起業は失敗に終わるが、その経験を活かして2001年、株式会社ロックオンを設立。 “Impact on the World”という企業理念を掲げ、少数精鋭のITベンチャーとして万進する。その結果、現在はマーケティング関連で国内シェアNo.1の自社製品を2種抱える。2011年2月よりベトナムオフショア開発をスタートし、2013年12月にはベトナム現地法人を設立、世界展開を進めている。
  • 谷井 等

    シナジーマーケティング株式会社代表取締役社長 兼 CEO

    生年月日:1972年  出身地:大阪府 出身校:神戸大学 神戸大学経営学部卒業後、1996年日本電信電話株式会社入社。1997年、合資会社DNS(デジタルネットワークサービス)を設立し、代表社員を務める。 2000年、株式会社インフォキャストを設立、代表取締役に就任。 同年、同社を楽天にバイアウト後、インデックスデジタル株式会社を設立。 2005年にシナジーマーケティング株式会社を設立し代表取締役に就任。クラウド型CRMサービス「Synergy!」の提供で国内シェアNo.1に。2007年、ヘラクレス(現JASDAQ)上場。国際的な起業家表彰制度「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2007」日本大会のセミファイナリスト。EO大阪ファウンダー兼初代会長。
  • 吉川 正晃

    大阪市経済戦略局理事

    大阪市が、グランドフロント内に設置した「大阪イノベーションハブ」の推進担当として公募で選出される。前職では、海外のITベンチャー企業との提携で、数々の新規事業の立ち上げや企業経営に携わってきた経験を持つ。今、自らの経験から、「起業家は、問題をビジネスとして解決する英雄」とし、街ぐるみで起業家を生み、育てる環境造りを行っている。2008年中小企業診断士登録。

モデレーター

  • 高野 真

    リンクタイズホールディングス株式会社 代表取締役 CEO 兼 Forbes JAPAN Founder

    大和証券、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、ピムコジャパンリミテッドの取締役社長を約13年務めた後、2014年に金融から出版に転じ、株式会社アトミックスメディア(現リンクタイズ株式会社)代表取締役CEO 兼 Forbes JAPAN編集長に就任。 2019年よりリンクタイズ株式会社 代表取締役CEO(Forbes JAPANファウンダー)。 2016年よりD4V (Design for Ventures, IDEOとの合弁VC)のFounder 兼 CEOを兼務。日本経済新聞の連載に寄稿するなど、資本市場全般に関する論文・著書多数。 1992年度証券アナリストジャーナル賞受賞。エ ンデバー・ジャパン代表理事、日本ベンチャーキャピタル協会専務理事、アジア・パシフィック・イニシアティブ理事、ヒューマン・ライツ・ウオッチ国際理事、東京フィナンシャル・リサーチ編集委員を務める。 早稲田大学より理学学士号、工学修士号を取得、同大大学院理工学研究科博士前期課程修了。

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