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日本の「ものづくり」の強みは改善、改良、現場力、そして…?

投稿日:2015/04/28更新日:2019/04/09

日本の技術力が世界を席巻する日[2]

佐藤:御三方の会社はそれぞれ世界に冠たる持っていらっしゃると思う。特に海外と比べると、どういった点が日本の技術やものづくりの強みになるのだろう。(17:25)

鈴木:業界や会社や製品によって千差万別だと思う。徹底的に強いところが強いままというケースもあれば、私たちと同様、リードしたり追いかけたりすることの繰り返しという領域もある。ただ、いずれにせよ創意工夫を行って、猿真似ではない技術を今日まで培ってきたことは強みの一つかなと思う。戦後や我々の親世代に関してはちょっと分からないけれども。いずれにせよ、それが、諦めずにできるまで続ける執念や精神文化と相まって強みになっていると感じる。抜きつ抜かれつが日常になっている私どもが、「これが我々の強みだ」ということを申し上げるのは難しいけれども。

佐藤:量産という面では台湾や中国と比べてどうだろう。

鈴木:量の勝負になると、やはり設備投資の重さを一方では考えないといけない。対象市場のボラティリティが高い場合は設備投資が報われないリスクも高まるので、その部分をきちんと計算しないと危ない。当社は設備投資を行う際、ROIC(投下資本利益率)の概念で必ずチェックしている。いかに軽量な投資で最大のリターンを得るかといったことを考えながら、マッシブな需要にどう答えるかを考えている。

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佐藤:「日本の強みは改善・改良・現場力」といったことはよく言われるが。

鈴木:売価が下がっていくことは避けられない。私どもも年間15%ほどの売価下落を強いられる。だから、私たちも材料調達の関係で村田さんのところと同様に主力製品工場を国内に置いているけれど、二人で「円高被害者の会」というのをつくって泣きながら呑んでいた時代があった(会場笑)。とにかく、売価が下がるのは避けられないとなると、利益の源泉は創意工夫や改善に尽きる。市場投入の直後はさすがに高い利益率で動くけれど、すぐに売価が下がっていくのなら創意工夫が利益の源泉だ。日本が他の国をリードするのはその点だということはたしかにあると思う。

佐藤:現場力という点では青木さんの会社にも匠の技があると思う。

青木:何についても同じことが言えると思うけれど、好きなことをしているときが一番ノッてくる。で、嫌なことをしているときはどちらかというと憂鬱になる。会場の皆さんもこんなに朝早くから来るということは、何かを求めているんでしょ? で、それはお金でしょ?(会場笑)。違うか(笑)。とにかく、我々のものづくりも、やっぱり高級なお金を払ってもらえるようにならないといかん。今は下請けでやっているとお金が払われない。でも、たとえば10数人ぐらいが乗るビジネスジェット機の内装ひとつとっても、お金持ちはおよそ16億もかけるときがあるという。

でも、日本人はいかに人を乗せるかといったことを考える。どっちを取ります? 僕はどちらかと聞かれたら内装に力をかけたい。だから、個性的な技術が誰にも真似できない技術という話になるのかどうかは分からないけれど、日本人は高級なものをつくるのが下手なのではないかな、と。皆さん、どう思います? 僕もまだできていないけれども、どのみちつくるのなら高級なものをつくりたい。それが、いい意味でセンスになるかしれないし、文化にもなっていくという話だと思う。

で、日本がものづくりで考えないといけないことは何か。戦後、80~90代の社長さんたちが頑張ってここまで来ることができた理由は気配りやと思う。ものづくりの気配り。面取りひとつについても、図面に載っていない面取りをする。「これは俺がつくったもんや。他所に出しても恥ずかしないんや」という気配りが、日本をここまでにしたのだと思う。だから僕は会社でも、「プライド持って仕事せい」と言っている。「その割には給料安いでんな」となったら困るから少し言いにくいけれども(会場笑)。とにかく誇りを持てる仕事いうことがものづくりの原点やと僕は思う。そうすれば腕も磨かれてくる。なんやかんや言っても最後は人だから。ものづくりには定年がない。ウデがあるならいつまでも働いてもらわないとあかん。定年なんて考えていたらいかんと思う

佐藤:電機業界を見ていても、「良いモノをつくれば売れるんじゃないか?」といったところがあって、市場を見ていない面があるようにも思う。良いモノをつくり、儲けるというその両方が大切なのだけれど、日本企業はその後者が弱いと感じる。(25:37)

村田:うちは一般コンシューマ向けではなくBtoBで、買っていただくお客さまはメーカーである必要もない。製造業の工場で動く機械に留まらず、たとえば流通のお客さまにもオートメーションということでお世話になっていたりする。で、ご質問の趣旨は日本の良さというか、どんなところで価値を出すかといったことだと思う。まず、今日これほどの多くの方が朝から製造業のセッションへいらしたことに僕は驚いている。

青木:僕もびっくりした。

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村田:先ほど申し上げた通り、昨日のセッションで製造業の話はほぼ網羅されている。今日はおさらいみたいなもので(会場笑)、「それ、昨日聞いたよ」なんて話ばかりだと思う。それなのに、これほど来ていただいた。しかも日本の製造業に対して、農業や林業ほどではないにせよ、「頑張れよ」といった感じで皆さまに同情や共感をいただいている面もある。「結構、気にされているんだな」と。

なぜだろうと考えてみたのだけれど、一つにはプロダクションやプロデュースという意味で、会場へいらした方々も皆、ものをつくってらっしゃるからだと思う。工場で電ドラを握ったり旋盤に向かったりしているわけじゃない。でも、映像でもイベントでも、あるいは金融商品でも、商品づくりという意味では企画や設計があり、ソフトを含めて実際にいろいろなものをつくりあげている。で、お客さまに使っていただいて、不具合があれば直す。その繰り返しという意味では製造業と同じだ。しかも、日本らしい、大変正確で品質に気を配られた、お客さまに対する思い遣りがあるものをつくっている。だから、ソフトウェアを含めて日本のいろいろなものが高く評価されていて、ひいては、今多くの外国人観光客の方々にも来ていただいているのだと思う。だから、本会場にいらっしゃる皆さまの誰もが日本のものづくりを担っているのだと思う。

結局、日本の製造業は製造業の業界だけにかかっているのではない。いろいろな産業の皆さまに支えられているからこそメイドインジャパンの良さがある。我々の社員だってそうだ。工場で働く人を含めて、皆が日本のものを食べて、日本の新聞を読んで、日本の散発屋へ行っている。輸出製品に関わらず、あらゆるものに日本の良さが染み込んでいるという面があると思う。同様に、アメリカ製にはアメリカの、中国製には中国の特徴がある。グローバルでフラットな世界になったとはいえ、良いところも悪いところも含めて自ずとその国の特徴が出てくると思う。

日本企業がグローバリゼーションに乗っかっていくのも一つの方法だ。ただ、そのなかですら、「なぜ日写のタッチパネルが高品質なのか」といえば、やはり日本ということがあるのだと思う。だから…、これは金融だってそうかもしれないけれど、グローバルスタンダードに従う部分とローカルにこだわる部分の両方があっていい。抽象的ではあるけれども、私どもとしてはそうした日本の良さを求めていきたい。

→日本の技術力が世界を席巻する日[3]は4/29公開予定

講演者

  • 青木 豊彦

    株式会社アオキ取締役会長

    1945年大阪府生まれ。高校卒業後父が経営する青木鉄工所に入社、95年株式会社アオキ社長に就任。 中小企業が当初約8000社集まるモノづくりの町、東大阪で「メイド・イン・東大阪」の人工衛星を打ち上げようと計画をスタートさせた中心者。2002年「東大阪宇宙関連開発研究会」(東大阪商工会議所)会長、「東大阪宇宙開発協同組合」を設立、理事長に就任、“まいど1号”の打上げをめざす。 農業用機械の部品製造からロボット部品や航空機部品への進出を果たした「モノづくりにはプライドを持たなければならない」との思いは、同社を世界的航空機メーカーであるボーイング社の認定工場に押し上げた。航空宇宙産業を東大阪の地場産業にしたいというのが夢。
  • 鈴木 順也

    日本写真印刷株式会社代表取締役社長 兼 最高経営責任者

    慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了、第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)勤務、1998年に日本写真印刷株式会社入社、2007年に代表取締役社長就任。
  • 村田 大介

    村田機械株式会社 代表取締役社長

    1961年京都府生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業。京セラ株式会社に3年間勤務後、1987年村田機械株式会社に入社。1990年スタンフォード大学経営学修士課程修了。 情報機器事業部長、ムラテック販売株式会社販売本部長、繊維機械事業部長、物流システム事業部長を経て、2003年同社代表取締役社長に就任、現在に至る。 日本繊維機械協会会長、日本物流システム機器協会副会長、ビジネス機械・情報システム産業協会監事、SEMI役員。

モデレーター

  • 佐藤 文昭

    株式会社産業創成アドバイザリー 代表取締役

    1981年に日本ビクター株式会社に入社、7年間に渡りビデオの研究開発に従事。その後1988年に証券アナリストに転じ、日本勧業角丸証券、スミスバーニー証券を経て、1998年から9年間、ドイツ証券で調査本部長兼電機全般および半導体アナリストとして業界や企業分析を担当。その間、1999年にITバブル崩壊を予想し、2000年から6年間連続で日経新聞の総合アナリスト・ランキングで1位にランクされた。2007年にメリルリンチ日本証券に移籍。副会長兼投資銀行部門マネージング・ディレクターとして電機・半導体・通信業界の業界再編やM&A関連業務に従事。著書に「日本の電機産業 再編へのシナリオ」(かんき出版)がある。

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