グローバル・ニッチビジネスの戦略[4]
安渕:今までやってきたことをベースとした次のステップというか次のチャレンジとしてどのようなことを考えておられるだろうか。(54:57)
更家:事業を広げればリスクはあるし、赤字の企業もあれば儲けている企業もあるから、その辺のバランスはいつも考えている。そこで、ある部分では不安を持っているけれど、同時に希望も持っていないといけない。アンビバレンツなところがある。それが大きな課題だ。で、やはりグローバルでやっていくにはグローバルにマネジメントできる体制を取らないといけない。我々はそこで最初に日本人を送る。一人で大変なら2~3人送ったりしているけれども、それを現地化していくことが一つの手段というか、あるべき姿だと思う。そのうえで、たとえば法務や契約のこともきっちりしなければいけないから、そこは中小企業的なやり方になる。大企業と違う。その辺が今後の課題だ。今後は展開する国の数も製造拠点も増えていく。だから購買部にも「早くグローバルな部材コードを付けて運用をせい」と、今はケツを3回ぐらい蹴って少しずつ動き始めている。そういうところをやり直していかないといけない。
辻本:カプコンは今後も大阪本社を開発の中心にしていく。東京に行く方も多いし、実は僕も住んでいるのは東京だ。ただ、大阪本社があるので物事を両方の視点から見ることができる。それが一番いいのかな、と。とにかく、デジタルコンテンツ系で世界に出て勝負する会社が関西にあってもいいんじゃないかと思う。もちろん任天堂さんが京都におられるけれど、任天堂さんはハード。僕らはゲームコンテンツとIPで勝負をかけていく。で、さらに大きなことを言うと、日本企業としてグローバルなゲーム産業のトップを絶対に取りたい。
今は世界中でさまざまな技術や人材がゲーム産業に入り込んできている。9月に発売された「Destiny」というゲームには、制作とマーケティングでグローバルに500億円がかけられたという。制作費用だけで250億円ほどかけていたと思う。そういう領域にハリウッドの映画関係者が、そしてオンラインゲームにもサーバー周りのエンジニアがどんどん入ってきている。世界中の優秀なネット系またはデジタル系の人材がゲーム産業に集まってきた。カプコンもそういう人材を関西で育成・活用して、今後も頑張っていきたい。あと、ぜひともカプコンのゲームを買ってください(会場笑)。あ、買わなくてもいいから息子さんがやっていても反対しないでください(会場笑)。
渡部:冒頭でお話しした通り、やっぱりアウェイの試合は資本力という点できつい。今はアジア各国で、お金をじゃぶじゃぶ持って「会社ごと買ったらええ」と言う方が一部いらっしゃる。そのなかで式場に投資して戦っていくのは不利だと思う。一方で、日本は現在観光大国を目指していて、アジアから数多くのお客さんがいらっしゃるようになった。当社ブライダル事業もその大きな流れに乗って、「ホームグラウンドで戦っていこう」ということで今はいろいろやっている。
これは、我々がハワイやラスベガスで結婚式を挙げることに憧れるのと同じだ。すべてのアジアの国々から見て、日本はアジアで最も近くの国で、最も早く裕福になった国だ。デザインやホスピタリティ等々、いろいろな面で「イケてる国」だと思われている。たとえば中国の工場で働くうちの中国人従業員も、教育を通して「日本が嫌いだ」と言い続けていた。でも、そういう彼らも一度日本に来たら「日本大好き」と言うようになった。これを使わん手はないと思う。
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