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欧米市場でどう戦い、新興国でどうチャンスをつかむか?

投稿日:2015/04/17更新日:2019/04/09

関西発・世界に突き抜けるビジネスの方法論[5]

会場(安渕聖司氏:日本GE株式会社代表取締役/GEキャピタル社長兼CEO):森精機さんはドイツが、堀場製作所さんはフランスが中心とのことで、やはりヨーロッパとの親和性が強いのかなと感じた。アメリカでも当然やっておられると思うけれど、その辺の違いについてはどうお考えだろう。「こういう点がやりにくい」「こういうところがやりやすい」といったお話がもしあれば、ぜひ教えていただきたい。(56:33)

会場(木村尚敬氏:株式会社経営共創基盤パートナー取締役マネージングディレクター):森精機さんや堀場製作所さんは先進国を中心に展開していると思うが、新興国市場をどのように捉えていらっしゃるだろう。戦い方も違ってくると思うが。

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堀場:私もアメリカには6年半ほどいて大学に通っていたこともあるから、アメリカが大好きだし米国市場で伸ばしたい。実際、半導体関連企業に加えてゼネラルモーターズやフォードも我々の分析計を使ってエンジンを開発しているから、市場としては抑えている。また、米国企業は我々が新たに対応している医学分野も非常に強い。

で、ヨーロッパはどちらかというと日本と似ていて人材の流動性という問題がある。アメリカでは事業が一旦うまくいくと良い人をどんどん集めることができる。日本企業の伸びるスピードがなぜ遅いかというと、我々は8~9割、自前で新卒を一から育てているから。最初の5年は投資だ。いわゆる、ドロボーみたいなもので(会場笑)。それで10年が経てば、そのなかの何人かが、まあ、ましな製品を開発するというレベル。でも、海外では、「ここにいい経営者がいる」となると、どんどん優秀な人間が集まる。堀場の本社がアメリカにあれば経営者が優秀ということで今頃は10倍ぐらいになっていると思う(会場笑)。ただ、日本では一から育てないといけない。その限界がアメリカでの厳しさになっていると思う。ただし、やはり最後はアメリカで成功しなければ事業家として成功したということにはならないと、私は思っている。

それから、我々もブラジルやインドにはすでに工場を建てていて、それを橋頭堡にしていくつもりだ。話が逸れるけれども、インドの紙幣には15ヶ国語が書いてある。どれも共通ではない。ということはインドには英語しか共通語がない。だから、あの国は本当のユナイテッドだ。インドネシアに至っては数千数万の島がある。国民性を含め、やはりそういうことは行ってみないと分からない。だから我々はまず橋頭堡を築いて、それから広げていく形にしている。

森:工作機械の場合、アメリカはほぼ国内マーケットと同じ感覚でやっている。日本の工作機械メーカーをすべて合わせると、米国市場ではおよそ70%のマーケットシェアを持っているので。ほとんど、一心同体だ。そこに我々の20年前のデッドコピーとなる韓国製や台湾製が入ってきているという状況になる。ただ、アメリカでもさまざまなワークがある一方で、ヨーロッパのほうがいろいろと面白いものがある。あと、機械系の学会本部はいまだにパリにある。そして、学会の先生およそ400人のうち、ドイツ人と日本人がそれぞれ40人ぐらいいて、やはりドイツと日本の比率が多い。だから、機械屋としてはどうしてもドイツと日本が基本になって、そこからいろいろと面白いワークやアプリケーション素材が出てくる感じだ。

一方で新興国に関して言うと、1990年代から2000年代はじめ頃には日本やドイツやアメリカでコストが合わなくなっていて、それで新興国に古い設備を移転していたという流れがある。そうして安い労働力を奴隷のように使って先進国へ安い製品を送り返すというモデルがあった。ただ、ここへきてそれがやっと終わって、全世界で同時に同じものがつくられるようになってきた。だから今は新興国でも最新の機械が必要になってきている。ただ、先ほど言った通り、イスラムや核の関係もあって、まだ自由に輸出ができない。武器以上に厳しく管理されている。そのところを見ながらになるけれども、今は我々にとって大きなチャンスだと思う。とりあえず、今は輸出管理の経済産業省あるいはDoD(Department of Defense:米国防総省)やCIAの許可をもらいながら1件1件モノを出して、じわじわとサービス網とパーツ網、そしてアプリケーションエンジニアの育成を図っているところだ。

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堀:山田さんのほうは逆に欧米市場をどう見ていらっしゃるのだろう。

山田:今のビジネスや商品のままだと先進国のハードルはかなり高いし、どうすれば勝てるかというのもまだ見えていない。商売自体はやっているけれど、ほぼ水面を上がったり下がったりの状態で、僕らにとって先進国はまだ夢の領域という感じだ。あとは、地域的にはインドでも何年か前からやっているし、今後はアフリカも消費財マーケットとしては面白いのではないかということで一生懸命やっている状態だ。

一方、我々のテーマとして、今後は内なる国際化もさらに意識していきたい。今まではどちらかというと外へ出て行くことばかり考えていた。でも、よくよく考えてみると、日本で暮らしてもらって、日本の文化を味わってから帰ってもらうといった流れが今はあまりにもない。でも、関西は住みやすいところだ。たとえば私は家が奈良出身ということもあって、奈良という、京都とはまた違ったのんびりした雰囲気があるところにも家族と来て暮らしてもらいたい。そうした部分で何かしていきたいと思う。そうすればいい人材が来てくれると思うし、その結果として、日本人だけでは考え付かなかった新しいものが生み出されるような方向になればと思う。

堀:最後に一つ質問したい。会場には自治体首長や国会議員の方々に加え、学会の方もいらしている。御三方はビジネスパーソン、あるいは経営者として、関西における政治やアカデミアの世界にどういった期待をしていらっしゃるだろう。

堀場:会場に京大の山極壽一総長がおられるので「期待しない」とは言えない(会場笑)。ただ、私の父も京大卒で、祖父は理学部の教授だった。今我々があるのは京大を中心としたアカデミアのおかげだ。従って今後も産学協働はしていきたい。一時期、アカデミアのほうが産から離れていった時期がある。ただ、それで我々はアメリカやフランスやドイツの大学と共同研究を行い、その結果として国際化を加速できたということがある。まあ、その面でお礼を言わないといけないかなと(会場笑)。

それともう一つ。これまで我々はアメリカにも中国にも工場をいろいろと建ててきたけれど、今は逆に日本でのものづくりに挑戦している。それで、「今日本で工場を建てる経営者は馬鹿や」と言われつつ、会社でも全員に反対されつつ、今は工場を建てているところだ。京都はいろいろと容積率の問題等があるので、実は雄琴…、会場から見えるところばかりだけれど(会場笑)、雄琴におよそ100億という、これまでで最大の投資を行って工場を建てている。こちらは「ウェストコースト」というのだけれど(会場笑)、ウェストコーストで一番立派な建物になると思う。ここでは、テスト、開発、生産技術、生産、サービス等々、すべて一貫で行う。そして、今までは協力会社に7~8割頼んでいたロジスティックを短くすることで納期を早めながら品質も高め、コスト面でも品質面でも絶対に負けない工場にしていく。

また、協力会社もそこに取り込んでいく。日本の強みは協力会社だ。世界で最も、圧倒的に優れている。その人たちには工場のなかにまで入ってもらって、そこで対応してもらう。これ、口にするのは簡単だけれども信頼がないと入ってもらえない。彼らの仕事を取ることになるから。ただ、我々は30~40年かけて築いてきた信頼関係のうえで、それをやるということだ。実は阿蘇にも工場があって、そちらではもう少し小さいものを、そして雄琴では大きいものをやろうとしている。

これからの日本はものづくりだと思う。ITと言ってもソフトだけではアメリカに絶対勝てない。でも、機械とITを複合化させたら絶対に負けない。だから、そういう知恵を出さないといけない。今は「振れる」企業が多いじゃないですか。何かおもろいものがあったらそちらへ、ふらふら~っと行ってしまう。それをしているあいだは日本も大変だと思う。私はヨットをしているけれど、ヨットがなぜあれほど強い風のなかで風上に進めるのか。下にきちんとした重りがあるからだ。だから風をフルに受けることができる。バランスがいいということだ。でも、重りのない船は風に流されてしまう。

森:実は私もヨットをしていて、(山田氏を紹介して)こちらには関西ヨットクラブ会長もいらっしゃる(会場笑)。全員ヨット乗りだ。その関係で一つ、首長の方もいらっしゃるのでお願いしたことがある。日本には、小さいのから大きなものまで含めても2万艇とか、数万艇のヨットしかない。フランスには100万艇、スウェーデンには40万艇ある。やはり規制緩和というものは大切だと思う。実際、規制を強化しなければいけないところはある。「工作機械は20年以上使ったらアカン」とか(会場笑)。京都の看板規制も素晴らしい。ただ、一方では緩和せなあかん規制もある。たとえばヨットが普通に漁港へ入れるようになればいろいろなことができるようになる。それだけで年間1000~2000億円の産業が生まれると思う。そういうことをやっていただきたい。

それともう一つ。私が京大の経営協議会で6年間委員をさせていただいたなかで一番不思議に思ったのは、独立法人となったのに授業料も入学金も決まっていることだ。これは同志社よりも安い。僕は同じぐらいの金額取ってもいいと思う。もちろん経済的に大変な人については大学が独自の判断として一気に下げたり無料にしたりする。でもその一方で、ある程度お金のあるところからはどんと取ってはどうか。医学部学生の半分以上はお医者さんの息子さんだ。だから取るようにすればいいと思うのだけれど、その自由がない。そうした規制が表に出てきていない。そうした問題がすべての面で出ているのかなと思う。

山田:とにかく、「今やっていることについて足を引っ張らんといて欲しい」と。あと、先ほど金融資本のお話も出たけれど、本当に手間隙ばかりで余分な仕事が増えた。とにかく、ちゃんとやりますので(会場笑)、あれこれ言わんといて欲しいなと思う。こちらとしては長期の視点を持ったうえで、目先の結果については良し悪しもあまり気にしないようにしているけれど、そうは言ってもちょっとぐらいは気になる(笑)。だから、まあ、あまり良いの悪いの言わんといていただきたいな、と。

ただ、考えてみると関西の人々はその辺が意外としたたかで、それぞれご自身の世界に入っているような面がある。だから経営もある意味でブレないというか、気にはしつつも、あまり近寄り過ぎない。近過ぎるとついライバル心が出て「勝った」「負けた」の話になってしまうし、かといってあまりにも交わっていないと自分がどこにいるのか分からんようになる。だから、付き合いながらもあまり群れず、それぞれが勝手にやるというのが関西の強みではないかなと私は思う。

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堀:今日の議論を通して、やはりアイデンティティが重要になると感じた。「重り」がなければふらふらしてしまう。だからこそ京都や奈良や大阪といったアイデンティティが重要なのだと思うし、それを持って世界へ出て行くというお話だったのではないか。その土地が持つ文化的強みを最大限に生かすことも重要だ。それが京都であればアカデミックな生態系と企業の集積だし、あるいは連綿と受け継がれてきた伝統の強みや職人的・芸術的な素養なのだと思う。それらを使いながら企業として成長していくことが重要だと感じた。また、世界へ出ていくにあたっては変えるのでなく付け加えるという考え方も大切だと思った。御三方はそうした部分でも創意工夫をしながら進めていると感じる。関西発で世界に打って出ている企業はそうした点が素晴らしい。そんな風にして常に世界と向き合いながら、一方では自身のアイデンティティを失わず、そして政府とはあまり関わらず、基本的には自由闊達に進めていく。その繰り返しのなかで、ここ関西から多くの企業が世界へと出て行くのだと思う。会場にいる多くの起業家にもぜひ世界へ出て行って欲しいし、企業の方々だけでなく教育や文化に関わっていらっしゃる方にも、アーティストの方々にも同様のを期待しながら本セッションを終えたい。

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