佐藤:それともうひとつ。今回の会議に集まった皆さんは事前に自分の夢を書いたと思う。手元の冊子にも、特に2020年に活躍したいと書いている人が多くて驚いた。僕の場合、夢の見つけ方はある程度分かっている。やっぱり「量」だ。「質」や「一発一中」なんていうのは最初から諦めている。「見つかるか、そんなもんで」と。数字としては100。僕はインターンシップを日本に持って来ようと思ったとき、企業を100社廻って、大袈裟でなく100社に断られた。オフィスビルを見つけてはインターフォンを押して廻っていたけれど、当然、皆に断られる(笑)。学生がいきなり「インターンシップ、いかがですか?」ってなんて言えば、そりゃあ追い返される。それで100社に断られたけど、なんとかして1社を見つけた。で、そこから袖に取り付いて紹介をお願いしたというのが企業インターンシップの話になる。(39:01)
で、次に議員のインターンシップをやろうとしたとき、僕はいきなり当時の総理大臣だった故・橋本龍太郎さんのところへ行った。当然、秘書が出てきて断られますわ。「私の一存では判断しかねます」と言いつつ、たぶんその人の一存で握り潰してるんだけど(会場笑)。そこからまた100連敗。町村信孝さん、亀井静香さん、菅直人さん、土井たか子さん、等々。ミーハー気分で有名人ばかりに行って100連敗。でも、当時32歳で最も若かった古川元久さんと、その次に若かった34歳の中田宏さんにOKをいただいた。それでまたお2人の袖に取り付いて紹介をお願いして、議員のインターンが始まったという流れになる。(40:13)
NPOのクラウドファンディングをやろうと思ったときも同じだ。しかもこのときは、100社でいいと思っていたのに結果として7000社あった。で、そのなかで最初に100社廻ったときも、「寄付は集められません」「インターネットは使えません」と言われてギブアップする場面がたくさんあった。でも、なんとかやりきった。で、最近は大使館のインターンも始めた。これは190ほどしかない。だからすべて廻るのもそれほど難しくない。とにかく量だ。たくさん会えば、「また同じことを言われた」となって断られるパターンも分かってくるし、100社廻れば想定外の否定も出てこなくなる。100社に断られることを最初に決めて廻っていたら、いちいちへこたれないで済む。(40:58)
一発一中で行こうと思うから断られたときに傷つく。100社に断られるまで止めないと決めてやっていると、34回目や73回目ぐらいにポロっとうまくいったりする。また、断られるパターンが分かってくれば自分のなかにノウハウやマニュアルもできる。それを集まってきた仲間に教えてあげることもできるでしょ? 「たぶん、こう言われる。そのときはこう返したらいい」と。だから、僕が大切にしているのは量。量は質に転じると心底信じている。(41:54)
河村:では、そろそろQ&Aに入ろう。「え? そんな質問していいの?」という質問のなかに、あるいはそれに対する回答のなかに、もしかしたらすごいヒントが隠れているかもしれない。だから本当になんでも遠慮なく聞いて欲しい(会場多数挙手)。(42:23)
佐藤:めっちゃ多い(笑)。(43:23)
会場(中央大学・竹田):実現したいことがあってもひとりでは何もできないから、最終的にはマジョリティを変えていかなければといけないと思う。そこで周囲の人々を巻き込んで協力を得るためのヒントを教えていただきたい。(43:31)
会場(東京大学・島田):人との出会いを通してキャリアが変わっていくということがあったと思う。パネリストの皆さまは、仕事のなかでどのような出会いがあっただろうか。そのきっかけも含めて教えていただければと思う。(44:29)
会場(鹿児島大学・鮫島):「あ、見つけた。この素晴らしいものを多くの人に広めたい」というものがあったとき、それをどのように広げていくのが良いとお考えだろうか。(44:49)
会場(早稲田大学・大脇):新しいことに挑戦してこられた点で共通している一方、大きな組織に所属していたり、受け継いでいたり、自身で会社を立ち上げたりと、皆様のお立場はそれぞれ異なる。そうした立場がどんなメリットまたはデメリットをご自身にもたらしたとお考えだろう。(45:16)
会場(早稲田大学・鈴木):日本教育再興連盟(ROJE)というNPOで関東の学生代表を務めていて、今は自分の下に120人ほどの学生がいる。僕自身は9月に代表になったばかりだが、その120人をこれからの1年でまとまりあるチームにしたい。そこで、皆さまがチームをつくるために手を打っていることや、大事にしていることがあれば教えていただきたい。(45:44)
会場(東北大学・上澤):現代における男女別学教育の意義をお伺いしたい。(46:49)
会場(山形大学・佐藤):「制度が悪い」という考えを基にクラウドファンディングを始めたとのお話だったが、そうした考えに落とし込むための視点等を教えて欲しい。(47:10)
丹羽:いくつかの質問にまとめて答えたい。マジョリティを得るためにも、出会った人を助けてあげること。助けてあげると、出会いがさらに広がっていくということはあると思う。それと自分の意見を通すためには、分かりやすく言うと権力を握る。自分が決定者になってしまう。僕がなぜ出世したいかというと、やりたいことがあるからだ。ただし、たしかに若いうちは意見が通らない。僕も『風雲!たけし城』のADだった頃、たけしさんに「こういうゲームはどうですか」って言っても却下されていた。でも、たとえばたけしさんが飲んでいる席で、「こんなゲーム、面白いよな」とおっしゃっていたら、「そうですよね、さすがたけしさん」なんて言っていた。権力を握った人が意見を通せるわけで、それならその人に自分の意見を言ってもらうというのが1番簡単だと思う。(47:59)
漆:今、皆さんは権力を持っている。若い子に頼まれると、嫌と言えないから。だから、ある意味では大学生のうちがチャンスだと思う。人に動かしたいのなら恥ずかしがらず、100件断られるような「頼む力」を今こそ使うべきだ。あとは多聞さんがおっしゃっていた通り。出会いはシェアをすること。「あの人にはこの人を紹介してあげよう」「この人は困っているから助けてあげよう」と、目先の損得を考えずやっていく。そうすれば友達の友達が自分の友達になり、いつか必ず還ってくると強く感じている。(48:59)
あと、立場に関してもお話ししたい。改革が成功する学校と失敗する学校の違いは何か。失敗している学校の方とお話をすると、「漆さんは創業者だったしね」と言う。「あの人が持っているあのリソースが自分にはない」といったことを言う人は、絶対にダメ。今自分にあるものをいかに活用するか次第で立場はすべてメリットになる。それとチームのまとめ方については、ネットで「人が動かない4つの理由」※1ということを書いたので検索してみて欲しい。「知らない」「責任を取りたくない」「めんどくさい」「あなたが嫌い」という4つ。また、別学についてはあとでゆっくりお話ししたい。(49:38)
佐藤:3つ、お答えしたい。まず、広げるためにどうするのか。広めてくれる人間をたくさん仲間にしたらいいと思う。そのためにも、まずは自分が発信すること。昔と違って今はブログもツイッターもフェイスブックもある。そこで一生懸命しゃべることだと思う。そのうえで、それを広めてくれる仲間を増やして欲しい。(50:37)
で、次が「どうやってまとまりのあるチームをつくるか」。僕はドットジェイピーというNPOを17年やっていて、これは現在、学生が300人ほどいるチームになった。それで、こんなことを言うのは酷だけれども、1番のポイントは僕が辞めなかったことだ。なぜか。学生の創業者がつくったサークルって素晴らしいでしょ? でも、サークルに価値はない。大人は代表の信頼で動き始めるわけで、そこで代替わりしていたら意味がない。サークルの看板なんて価値はない。口はばったいけれど、ドットジェイピーがチームになれたのは僕が創業して3年間辞めなかったことだ。ドットジェイピーじゃなく佐藤大吾に価値があったからだと思ってる。ノウハウも怒られた経験も、100連敗した経験も僕にあるわけだから。だから「辞めるな」と。ロジェで3年間続けてください。(51:01)
それと、クラウドファンディングに落とし込んだ視点について。これ、今は当たり前のようになったけれど、当時は特にNPOのクラウドファンディングが大変だった。ほぼ全員がクレジットカードで決済するのに、クレジットカード会社にそれはダメというルールがあったからだ。せっかくイギリスからジャストギビングを日本へ持ってきたのに、クレジットカード会社がOKを出してくれないから決済できないという致命的な問題があった。それを1年かけて口説いて、やっとOKになったというのが僕の隠れ実績。誰も褒めてくれへんから今自分で言ったけど(会場笑)。NPOがインターネットで寄付を集めることができるようになったのは、ジャストギビングまたは僕が頑張ったからです、ホントに(笑)。あと、寄付税制も変えた。寄付に何のメリットもなかった頃、非常勤国家公務員という謎の立場を戴いて内閣府に入り、実際の立法作業を行った。霞ヶ関の立法作業を若いうちに経験できたのは非常に大きかった。その作業を経て寄付税制が変わり、寄付をしたら少し税金が帰ってくるというルールになった。この点について言えば現在の日本はアメリカよりもイギリスよりも進んでいる。そこまで僕がやった。でも、知らない人ばかりでしょ? だから、このあと僕がやらなければいけないのは、そのルールが変わったことを広めることだと認識している。これはクラウドファンディングに関してやらないといけない、隠れた仕事だ。(52:58)
会場(筑波大学・鈴木):大学で宇宙の研究をしている。社会は研究者に対し、研究成果以外でどういったことを求めているとお考えだろうか。(53:47)
漆:私は「夢」だな。子ども相手の仕事だから。すごく大きな悩みを抱えた生徒に、ある先生が天文学の本を渡したらその子の悩みがなくなったということがある。たぶん、それによって目線が上がったということだと思う。(54:20)
会場(横浜国立大学・坂口):人を育てるうえで最も気にしていることを教えて欲しい。(54:46)
丹羽:その人ができるぎりぎりの背伸びをさせること。いきなり「主役をやれ」「ドラマの脚本を書け」と言って、その人がそれまでやったことのない背伸びをさせると、必ず伸びる。(54:59)
会場A:人を見極める際、どこを見て判断しているのかを教えて欲しい。(55:18)
丹羽:どうなりたいかという「志」と、あとは「覚悟」。覚悟が1番大切だ。覚悟がある女優は売れる。女優論になっちゃうけれども。(55:27)
会場B:侍や武士を切り口に日本の文化や歴史を世に広めていきたい。ただ、伝統文化だけではなかなか広がらないので、新しいものと結び付けたりしようとしている。そのために必要な視点やポイントが何かあればアドバイスをいただきたい。(55:42)
丹羽:お客さんのことを考えていないクリエイターもいるけれど、大切なのはお客さんが見たいものと伝統文化のつなげ方ということだと思う。ただ、これは長くなるので後ほどお話ししましょう。(56:03)
会場(京都大学・C):人に関わる、あるいは制度を変えるような活動には強く共感するが、それに伴う責任についてはどのように捉えていらっしゃるだろうか。(56:24)
佐藤:パス(笑)。言いたいことが多くて長くなりそうだからあとで話そう。(56:48)
漆:私はいつも自分が死ぬときのことを考えている。で、そこから逆算すると、私には卒業生にとっての母校を守り、在校生を社会の役に立つような人間に育てるという軸がある。それに照らしたうえで、「明日死ぬ状況なら私はこの決断するか否か」といったことを考える。そうすると、たとえば「人にどう思われるかな」といった心の雑音がすうっと引いて静かになっていく。そういう覚悟を持ってやっているつもりだ。(56:54)
会場(法政大学・加倉井):「これを成し遂げたい」という理由以外で、今の仕事を選んだ理由があれば教えていただきたい。(57:36)
佐藤:成し遂げたい以外の理由…、パス(笑)。ない。(57:58)
漆:自分がどうこうしたいというのはなくて、なんというか、「場」をつくりたい。子どもが成長する場、あるいは子どもと大人が出会う場を、学校をプラットフォームにして「場」をつくりたい。「自分が」というより、その場で誰かが何か成し遂げてくれたら嬉しい。(58:05)
河村:私の場合、社会を変革しているということを、自分の仕事を通して、もう砂を足で踏みしめるように感じる瞬間がある。それに立ち会えたときの、あのドーパミンが出まくるような瞬間のために仕事をしている面がある。皆さんにも仕事を通してそれを味わって欲しいと思う。(58:23)
会場(東北大学・亀井):たとえばドットジェイピーを創業したときの理念や思いと、あとからそこに入ってくる人たちの理念や思いとのあいだにギャップが存在することもあると思う。それを埋めるためにどういったことをなさっているだろう。創業者の思いを文化にしていくため、何か工夫されていることがあれば併せて教えていただきたい。(58:59)
佐藤:サークルをつくった創業者って、いるでしょ? 会場にはそういう人が多いと思う。その悩みは引継ぎ問題だ。初代は自分で勝手に始めてるから誰に言われなくても頑張る。でも2代目や3代目は上から言われて引き継いでいたりするから強い動機がないことも多い。それでふらふらしてすぐ辞めちゃったり、サークル自体が潰れちゃったりする。結局、創業者が最も失敗しているわけだから、そのノウハウを継承するのがすごく難しい。あと、人脈も絶対に引き継げないから2代目以降は自分で動くしかないというのもある。なので、結論としては創業者が辞めないこと(会場笑)。「創業者が辞めるな問題」だ。ただ、僕もしたたかに考えていることはある。創業者がずっと続けるわけにもいかないから、今は猛烈なマニュアルをつくりまくっている。マニュアル人材は嫌いでしょ? 会場にはマニュアル大嫌いという人が多いと思う。マニュアル、超重要ですよ。特に会場にいるようなエッジの立ったメンバーは、マニュアルづくりを意識したほうがいい。後輩や同僚は君らみたいに働けないから。君らみたいに動けない人間をどうするかと考えると、マニュアルやルールやツールが超重要になる。あとは、しつこく言い続けることと、そして辞めないことだと思う。(59:23)
会場(京都造形芸術大学・杉本):皆さんにとっての自由論を聞かせて欲しい。(01:01:08)
丹羽:自由とは「締め切り」。締め切りがあるからやれるってことです。(01:01:18)
会場C:漆先生はどういった人材をつくりたいと思って教育をなさっているのだろうか。その生徒像がどのように構成されていったのかも含めて教えて欲しい。(01:01:30)
漆:「つくりたい」というのはない。大雑把な人間なので、とにかく出会いをたくさん体験させたいと。だから、そのための「場」を提供していきたい。そこで勝手に育てばいいという(笑)、そんな感じだ。(01:01:46)
会場D:クラウドファンディングを通して見える、人々の、特に若い人々の動きのなかで、何かお感じになっていることはあるだろうか。(01:02:09)
佐藤:その辺は世代と関係ないと思う。むしろ、「俺はこれを知っちゃった。俺だけが知ってるこの感動ストーリーを言いふらしたい」みたいなものがあれば人は動く。世代も性別も関係ない。もうひとつは得をする話。「お得ですよ? レアですよ?」という話は世代に関係なく広まる。大きく言うとその2つだ。世代によってインターネットが使えるか否かといった基本的なことは関係するけれど、やっぱりいい話は広がるし、いいモノは広まるということだけだと思う。だからクラウドファンディングなんていう言葉もあまり大事じゃない。いい話やいいモノをどれだけ仕込めるか。だから皆さん、何かやりたい人がいたら相談してください。マジで相談に乗ります。やりましょう。(01:02:32)
河村:今日は「文化を創る」というテーマだった。そのために大事なのは、いろいろな人たちが、「いいな。チームで一緒にやっていきたいな」と思うことを、どこまで乗せることができるかだと思う。それができるのは覚悟を持っている人であり、やり続けることのできる人であり、チームを構成できる人であり、そして自分がフロントランナーになって走り続けることのできる人だと思う。私たちは立場の違う4人だけれど、「初めて切り拓く道のなかで、一緒に何かしたいと思う人を見つけた人たち」という意味では同じだと思う。ぜひ、皆さんもこれからの就職活動や仕事のなかで、そうした視点を持って欲しい。そのうえで、先ほど申し上げたように、「あ、この潮目で社会が変わったんだな」と思えるような瞬間を、ぜひとも1人ひとりに経験していただきたいと思う。今日はありがとうございました(会場拍手)。(01:03:24)