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「絶対に無理!」にチャレンジする価値がある(茂木氏) -今ここにない未来をつくる仕事をしよう(後編)

投稿日:2015/02/10更新日:2019/04/09

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茂木健一郎氏:僕は、今の世の中を特徴付けるひとつのキーワードはもちろんグローバル化なんですけど、グロービスというこの組織もグローバル化を背景に生まれた組織だと思っていますが、一方では君たちに全力疾走してほしいわけ。俺はお前たちと同じだぜ。現役のアスリートだよ。俺、すげえ走ってるよ今。文字どおり走ってるけどね。8kgやせたからね。(会場笑)(08:03)

それだけじゃなくて本当に走ってます。だけど、走る方向を間違わないでほしいんだよね。今、世界のbest and brightestの人が何を考えてるか、という情報をちゃんと把握して走ってほしい。それは、残念ながらなかなか日本のメディアの中には入ってきてません。これはもう断言していいです。(08:31)

一方で、僕は日本を愛してほしいと思ってます。僕は君たちくらいのときに何回か海外に留学しようとして、やめた経験があるんですよ。東大の悪口言ってるわりには東大に11年もいたんだ、俺。(08:52)

なんでかっていうと、不安だったんですよ。今思うと。根無し草になるんじゃないかと思って。僕が、今そもそもテレビ局にも行くし、国際学会にも行くし、自信を持って行けるのはなぜか。日本の文化のすばらしさを知ってるから。(09:09)

25歳のときに小津安二郎って人の映画に出会いまして、それ以来いろいろ、例えば小林秀雄を読んだりだとか本居宣長を読んだりだとか……日本というのはね、なかなかすごい国ですよ!?(09:27)

だから、一方では世界の最先端の情報を得て全力疾走してほしいんだけど、一方で日本文化とか日本の歴史の中でどんなすばらしいことがあるかってことも知ってほしいと思います。(09:40)

例えば僕は今、白洲信哉という白洲次郎・白洲正子の孫と「目の眼」という骨董雑誌で連載してるんですけど、日本は朝鮮とか中国から来た焼き物の中で、自分たちの美意識に合うものを選んで、もう本体にはないようなものを国宝として持ってたりするんですよ。(09:54)

向こうの人がわからなかったこの「美」を、日本人は例えば「歪みが良い」とか「景色が良い」とか言って、本人たちが気付かなかったようなものを自分たちで美として見付けて、それを大切に育んできてるっていう文化もある。そう考えると、日本って悪くないのよ、全然。全然悪くない。(10:20)

伊勢神宮だって……皆さん、伊勢神宮参拝してますか? 僕は毎回行くと正式参拝っていって御垣内の中に入って参拝するんですけど。僕は現代アートが好きで、世界中の現代アートの作品を見てるんですけど、正直、伊勢神宮の御垣内参拝に勝てる現代アートってなかなかない。(10:42)

そこにスプツニ子来てるから、後でそのあたりをアーティストとしてどう思うか聞いてみたいけど、御垣内参拝やばいっす。マジでやばいっす。(会場笑)(11:05)

1度やってみてください。でね、僕が言いたいのは、人間というのは2つの落とし穴に陥りやすいのよ。ひとつは超ドメスティックになることさ。超ドメ男くん、ドメ子さんになること。これがひとつの落とし穴ってのはわかりやすいよね。(11:20)

もう1個の落とし穴は「私って国際派だし、意識高い人材だし」みたいな感じで、よくいるんだよ。かぶれちゃって、全部アメリカのやり方がいいとか、ヨーロッパのやり方がいいとか言って、日本を上から目線で見て。お前は日本人じゃねえのかみたいな。(11:38)

どっちの落とし穴にも入んないでほしいんだよね。これ、ものすごく難しいバランスの取り方なんです。(11:56)

だからそのためにも、世界に自信を持って出て行くためにも、日本の文化の1番良いところを知ってほしいなって思いますね。そうじゃないと逆に、変に排外主義的なものすごく心の狭い人になっちゃったりする可能性もあるんで。(12:15)

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今ちょっとコンセプチュアルな話をしましたが、具体的な行動指針として君たちに提案したいことがあります。まずさぁ、英語の本100冊くらい読んでみるか。今まで英語の本、1冊でも読んだことある人? ……おっ、意外とレベル高いな。10冊! 100冊! 1000冊! (笑)。(12:34)

本ってさ、読んだ分だけ自分の下に積み重なって遠くまで世界が見えるわけだよね。僕は18歳のときに、ミルトン・フリードマンの『Free to Choose』って本を読んで、非常に感動しました。ミルトン・フリードマンってのはノーベル経済学賞取った人ですけど、いわゆるリバタリアンさ。(13:04)

フリードマンは半端ないぞ。「医師の国家試験やめちまえ、弁護士の国家試験やめちまえ、医師も弁護士も資格制度やめろ! 市場の自由競争にしろ! ドラッグ全部解禁しろ!」これがフリードマンですよ。君たちどう思う? ちょっとそれはないんじゃないかって思うよね。(13:25)

でもフリードマンは『Free to Choose』、選択の自由という本の中で、そういう論をある種の説得力をもって展開してるんですよね。僕は18歳のときにそれを読んだということで、自分の人生の中であるひとつの見方ができたと思うし。(13:44)

君たちはマイケル・サンデルの『Justice』(邦訳:これからの「正義」の話をしよう)は読んだ? いい本だよねえ。あのマイケル・サンデルのJusticeの授業を見て、危機感を感じなかった大学の関係者はニセモノでしょうね。(14:01)

僕は早稲田大学でBrain and Cognitionって授業をやってて、oversubscribed(定員以上の申し込み)ですごく人気があるんですけど、だけどなかなかマイケルのようにはできない。あのような形で、マイケル・サンデルのJusticeの第1回目の授業、ずっと対話をしてるわけだよね。(14:18)

トロリー問題(トロッコ問題)っていう、いわゆるトロリーで1人犠牲にしても5人救うべきかとかそういう問題を議論した中で、最後の10分くらいでマイケル・サンデルのやってる演説。すごいよね。(14:37)

「この授業の目的は、君たちの中にrestlessness of reason、理性の落ち着きのなさを引き起こすことである」っていうね。ああいう授業ができるってのはすごいと思うんだけど、Justiceという本を読むことによって君たちの中では何かまた立ち上がるだろうし、(ジョン・)ロールズって先生の『正義論』もすばらしい。(14:52)

英語の本っていってもさ、別に『ハリー・ポッター』とかでもいいんだよ。ハリー・ポッターからでもいいんだけど、そういうふうにバランス良くいろんなものを読んでいくことによって、君たちが立ってる土台がどんどん高くなっていく。だから英語の本を読んでほしい。(15:17)

僕は、最近日本の中高生としゃべってて、日本の中高生の強さと弱さがよくわかってきた。強さは「サブカル」。君たちの中でツインテールってわかる人? ……おー、すっげえわかってんなお前ら!(会場笑)。あーそう、すごいね。じゃあ、「オトメイト」わかる人? 「艦これ」わかる人?(会場多数挙手)。ここらへんが日本の強さですよね。いわゆるサブカル。サブカルのコンテンツの生成能力ってのは、日本は世界で最高さ。(15:32)

だけど、この中でPythonでプログラミングしてる人? Rubyでプログラミングしてる人? ……ほら、こんなもんだろ。この精鋭集団の中でもこの程度なのさ。日本は圧倒的に、中高生・小学生の頃からのプログラミング能力がない。(16:17)

今すぐやろうよ! この休み時間に、PythonのチュートリアルをiPhone・スマホにダウンロードして読もうぜ。今すぐやろうぜ。っていうくらい、プログラミングってのはどうしても必要なスキルなのね。(16:36)

それからもうひとつ。今まで自分が絶対にやったことのないことに挑戦してみないか? このG1サミット、G1カレッジに来るのもそうだけどさ。何でもいい、今まで自分の人生の中でまったくやったことがなかったこと。(16:54)

プログラミングでも、それこそトライアスロンでも何でもいいんだけど、そういうことをやっている限り、君たちの人生には「次」っていうのが来るんだよね。(17:12)

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僕は1962年に生まれて、日本の高度経済成長もバブルもその後の停滞も経験してきたんだけど、さっき堀さんが言ったように、最近20年の日本になかったのは、次の一手を真剣に考えてそれを必死にやるってスピリットだったと思う。(17:25)

でもね、アスリートの世界では錦織(圭)くんみたいに、世界の中で戦うためには次に何をやればいいか(マイケル・)チャンコーチと一緒にいろいろ探って、実際に成果出してる人もいるじゃん。今度は、俺はアカデミックだとかインダストリアルの世界の出番だと思う。(17:47)

ずっと、インターネットって日本発のグローバルスタンダードが出ないといわれてた。今はLINEなんかが頑張ってやってるよね。スマートニュースやってる鈴木健っていうのは、俺と昔一緒に研究してた学生だったんだけど、スマニューなんかも日本発のニュースアプリとして……堀さんもスマニューに関わってるけど、やってるよね。(18:05)

意外とさ、次の一手っていっぱいあるのよ。冒頭に言ったように、次の一手に全力でいってみようぜ。もう一度言うよ、さっき言ったこと。「今の自分では絶対無理だ」「絶対にできるはずがない」と思えるようなことほど、チャレンジする価値があるということです。(18:25)

できると思うことをやってできても、ドーパミンは出ません。いいですか。できないかもしれないと思うことに挑戦して、それができたときに初めてドーパミンってのは出るんで、ぜひToDoリストを作ってほしいと思います。(18:49)

今日いろんなインスピレーションを得ると思うんですけど、今の人生の中で次の一手、次にやるべきことは何なのかぜひ考えていただいて、そのToDoリストを作り、できればこの半年~1年でひとつでもふたつでもやってみていただいたら、君たちの脳は可能無限という、人生で1番大事な宝物を得ることができるのではないかと思います。(19:08)

今日、君たちに会えて嬉しかったです。また、こういう形でなくて、もっとひとりひとりとゆっくり話すような機会があったらいいなと思います。今日は1日、楽しんでいってください。どうもありがとうございました。(19:34)

ログミーで掲載されたレポートをGLOBIS知見録読者向けに再掲載したものです。

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