高島:では、会場から質問を頂きたい。
会場A:今、2つの会社をやっている。会社の新陳代謝が上がってくると、社員の皆がどんどん「新しいことをやりたい」と言い始める。それは良いことだが、ただ撤退条件が問題になる。一般的に社員で働いているメンバーが、「ラストワンマイル」で焦るかというとなかなか難しい。その時に自分が入ってよいのか、それとも完全に任せて、いいビジネスモデルが潰れることも容認しながら人を育てることを優先するのか、その考え方を教えてほしい。【01:04:45】
会場B:食に関して、全体的に「外食産業」から「食生活、ライフスタイル産業」へと、皆で模索し始めているように思う。そこで2つほど質問がある。高齢者に向けたアプローチという意味でのライフスタイルの打ち出し、食の打ち出しをどう考えているか。それから、「オイシックス」でもスープを売ったり、「DEAN&DELUCA」の商品を売ったりされているが、外食産業からECに入るというのは、たぶん初めての試みが起きているという印象がある。その辺りをどのようにやっていかれるのか。【01:06:08】
会場C:遠山さんのお話で、「採算ベースか、黒字か」ということで時間がかかっている分野もあったということだが、それに持ちこたえる上で社内の意見もいろいろある中で、どうやって説得してきたのか。【01:07:47】
高島:遠山さん、ご指名があったので、今の「どうやって周りを説得してきたか」というところと、「高齢者」か「EC」どちらか答えてほしい。横川さんも、「高齢者」か「EC」どちらかお願いする。山田会長に、新規事業における経営者の役割、「どこまで自分が入るべきか」について、あとは好きなことを言っていただきたい。【01:08:07】
遠山:最初の質問と最後の質問に答える。うちも一応ルールが、「3年で」とかあるかと思う。経営陣のほうから「もう無理だ」みたいなものがあるが、例えで恥部をさらすような話をする。「mypanda」というのをやっているが、評価もされるが利益にならないという時期があった。これは中村裕子というデザイナーがやっているが、彼女は中学の頃からデザイナーになるのが夢で、美大に行くために美術教室に通って、高校も美術を習って、美大へ行った。それで経営会議で、彼女は泣きながら3時間粘るわけだ。「これじゃないとダメなんです。やりたいんです」と言って、「じゃあ、やろう」と。結局会社を作って、彼女が社長になって、今度また新しくスタートする。だから、むしろ良い形でスタートを切れるようになった。とにかくそういう個人の粘りとか、そういうことしかないという感じ。結構泥臭い。「いい感じ」みたいな仕事はあまりない。【01:08:35】
高島:遠山さん自身がうまくいかない時はどうか。
遠山:エモーショナルだ。日比谷線で3回ぐらい泣いたし。悔しくて(笑)。ダメだったら他のところに持っていくとか。質問に合っているかわからないが、こういうことがあった。ユニフォーム決定会議という時に、私は手拭いにしたかった、日本初だから。「手拭いは絶対おかしい」と全員反対だったが、「そうですよね」と言いながら手拭いを発注してしまう(笑)。話は理解しているが、そのまま流れてしまう。でも格好よくいうと、「意思」なんだ。私はサラリーマンをやっていて、その中で個展をやった。合理的な説明は無理。でもそのお陰で今日に至っている。その「合理的な説明は無理」というのが、かえってよかったと最近思っている。要するに、「意思」しかない。
この間、双日の投融資委員会の審査部の人と飲んでいて、私は「合理的な説明は合理的な説明で打ち返される」という話をした。そうしたら審査部の人ですら「そうですよね」と。「自分たちはダメだというのが仕事だから、めった斬りにできる」と。それよりも「15年間、足で稼いだネットワークなんです」とか、「いやいやこれは恩返しだから、こっちのプランではダメなんです」と。そうすると、「なんだ恩返しか。じゃあ10億じゃなくて100億くらいないと恩返しにならないじゃないか」となるかもしれない(笑)。そういう話しか残らない。【01:09:56】
高島:なるほど。皆が学べる話だったかわからないが…。説明するのを諦めて、とにかくやってしまう、それから時々泣くと(笑)。では横川さん、「高齢者」または「EC」、その辺りの新しい領域をどのように考えているか。
横川:せっかく2回もご質問いただいたので、「高齢者」について。質問の答えにならないかもしれないが、特に高齢者の人に対して、というのはできていないと思っている。午前中も、eコマースの話の中でそうした広がりの話があって、考えていかなければならないと思った。eコマース上で、「オイシックス」の中で我々の製品を扱ってもらっている。自分たちが店頭で扱っている商品をそのままサイトに載せているが、なかなか売れない。なぜかと考えると、同じ「DEAN&DELUCA」というブランドで「食べ物、美味しい物」とはいうものの、その買われ方によって向こうにあるシーンが全然違う。eコマースでは、まだどちらかというと若い方が多くて、店頭になると高年齢層があると言っていたが、僕らからするといずれネットを通して、お店には来てもらえない方にも応えられる商品を届けたい。
自分たちの強みは、立地とか環境に応じて、コンセプトの元にMD(マーチャンダイジング)を幅広く変えられること。最近よく勉強しているのが百貨店。最近は、特にターミナル型の百貨店は、かなりうまくいっているところがある。しかしセンターの導線から外れている「昔ながらの名店」と言われる百貨店はとても厳しい。その理由は顧客分析によると、年齢層が高いお客が多いこと。売上の3分の1が外商やギフトでもっていたり、百貨店の「お熨斗(のし)」があるから買う、という時代でなくなっていく時にどうしたら良いのかというところで、逆に我々のようなブランドにお声掛けいただく。我々も最初は他の店と同じMDで行くが、やはりうまく行かない。うまく行かない時に、その名店の中で我々が評価される商品を、同じコンセプトで作ろうと一つひとつ学んでいる状況だ。【01:12:19】
高島:最後に山田会長から、新規事業における経営者の役割についてお話しいただく。
山田:新規事業という単位になると個別のケースが多いと思う。例えば我々の場合、いろいろな商品のブランドを出すか、出さないかというのは日常茶飯事にある。たぶん筋のいいやつは、あっという間にゴール、トラック一周してしまう。かなり難点があるやつは、400メートルトラックの最初の100メートルくらいで大体脱落する。ややこしいのは、300メートルくらいまで来てしまったが、少し難点があって決め手がない場合。その場合は「もう、とにかく行け」と。それで案の定、失敗するようなケースもある。実際のところ、「打率」は3割ぐらいのもので、7割ぐらいはヨタヨタのものも多い。その時にトップの役割というのは、失敗から何か教訓を、残りカスみたいなものがあると思うので、それをちゃんと引っ張り上げて次の役に立つようにすること。本人は打ちひしがれているので、骨を拾ってあげるということ。こういうサイクルが回ると、失敗から出てくることも結構ある。そういうサイクルを回していただきたい。【01:15:15】
高島:ちょうど時間になったので、セッションを終えたい。是非この75分から、皆さん何か一つでいいので明日やることを決めていただき、それをアクションに繋げてもらえれば大変嬉しい。3人の登壇者の方々、ありがとうございました。【01:17:00】