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今年2月発売の『ビジネススクールで教えている 武器としてのAI×TECHスキル』から「Chapter7 ビジネスチャンスを見出し、実現する」の一部を紹介します。

テクノロジーの進化によってますます多くのビジネスチャンスが生まれています。ただ、そこでアントレプレナーシップをもって立ち向かう人間が日本に多いかといえば、残念ながらまだまだ少ないのが現状です。

日本人はよくリスク回避的といわれますが、そうした国民性が少なからず影響を与えているのかもしれません。ただ、VUCAの時代にあっては、賢くリスクをとり、自ら時代を切り開く人材こそがサバイブできるともいえます。

いたずらにリスクを恐れるのではなく、それとうまく付き合いながら、スピーディに動ける人材がいま求められています。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

自ら価値創造に向けて動く

日本企業、さらには日本人の大きな弱点は、アメリカ人と比べると、リスク回避的であるということです。別の表現をすればアントレプレナーシップの欠如です。既存の企業文化の側面や社会制度の問題もあるので一個人ではどうしようもない面もありますが、それでも企業の内外にアントレプレナーが増えないことには、新事業創出はなかなか進みません。この課題をクリアするためのポイントをここでは5つ紹介します。

まずは学び続けることです。オンラインコースやセミナー、書籍、知人からの情報収集などを通じて最新のビジネストレントや技術トレンド、他業界の知識を学ぶことで新事業に対する自信を持てます。不確実性ゆえ100%の成功が保証されることはありませんが、それでもこれらの知識の豊富さは成功確率を高めます。

2つ目は、小さな成功体験をまず積んでみることです。いわゆるスモールサクセスによって自信をつけるのです。すでに何度も触れたように、社内の小さなIT関連プロジェクトなどに手を挙げて参加するなどは効果的です。段階的に大きな挑戦に取り組むことで、リスク・リターンに対する感度を上げることもできます。

3つ目は、メンターを持つことです。ベンチャーを志す人であれば起業家、社内ベンチャーを起こしたい人であれば社内で成功した人などと接点が持てないか試してみましょう。可能であれば複数人のメンターがいるとさらに心強いでしょう。幸い、多くの場合彼らは、後進に温かいアドバイスをくれるものです。新事業にはさまざまな難しさがありますが、そうしたときにメンターからアドバイスや励ましの言葉をもらえることは、新事業を志す人を大きく勇気づけます。時には重要なキーパーソンやパートナーを紹介してくれることもあります。

4つ目は逆転の発想を持つことです。レモネードの原則というものがあります。困難な状況や逆境を発想を変えて活かすという考え方です。予算が限られているのならば、費用の安いベンチャー企業と協業し、かつ彼らの感性を活用しようと発想したりするわけです。

5つ目は目の前の機会や自分が持っているリソースを利用して、前に進めようとする意識を持つことです。従来の事業計画では早い段階で凝り固まった計画を立てようとします。それに対し、新規事業では目の前の機会を利用し、そこで得られるフィードバックをベースに方向性を修正していきます。

すなわちあらかじめすべてを決めてしまうのではなく、状況に応じて俊敏に動くわけです。不確実性が高い状況や情報が不足しているケースにおいて、このやり方はリスクを低くし、成功確率を高めます。この4つ目と5つ目の意識は、エフェクチュエーションと呼ばれる、優れた起業家に共通する発想の一部です。たとえばコードアカデミーという企業は、プログラミングで困った起業家が、自分でプログラミングを学ぼうとしたことがきっかけで生まれました。まさにエフェクチュエーションの考え方を活用したのです。

Column:新事業創出に向けての日本の弱点

本書の想定読者は一般のビジネスパーソンですが、社会が変わらないと自分一人では大事を成しにくいという側面もあるので、ここでいくつかの日本社会の問題点を挙げておきます。これらを変えるのは大変な営みですが、ぜひ1人ひとりが当事者として考えてほしいと思います。

第1に、企業としても国としても人材にお金をかけなさすぎです。OECD加盟国の中でも社会人が最も学ばないのが日本と言われています。優秀な人材にお金を回し、活躍できる素地を作ることが必要です。

第2に、若い頃からのキャリア教育が十分ではありません。たとえば高校時代に最も高いSTEMの潜在能力を持った人材が、日本ではかなりの部分が医師の道に進んでしまいます。もちろん医師も大切な職業ではありますが、産業の国際競争力にはそれほど寄与しません。人材しか資源がないとも言える日本において(もちろん観光資源などの資源もなくはないのですが、天然資源などには恵まれていません)、この人材の偏りは好ましいことではありません。いまや英語さえできれば、STEM人材がアメリカで30万ドルや40万ドル程度はすぐに稼げる時代です。グローバルを見据えたキャリア教育が求められます。

第3に、使命を終えた(衰退期に入った)ゾンビ企業が残りやすい社会制度になっています。そして少なからぬ優秀な人材がそうした企業に就職しています。ダメな企業はどんどん倒産したり売却や事業再編されたりすることで新陳代謝が起こるのが本来の姿です。

第4に、仮に失敗に終わってもそのプロセスを評価する制度や仕組みが多くの組織で不足しています。愚かな失敗は非難されても仕方ありませんが、賢い賭けが裏目に出たとしても、それを低く評価するのは間違いです。

第5に、そもそも新事業は失敗して当たり前という意識が弱すぎます。最初から成功確度が高いビジネスは往々にして小粒なものです。小さい成功確率の下で、うまくいっているところに一気に投資をするといった経営者の意識変容が必要です。

最後に、ゼロリスク志向が強すぎます。セロリスクはむしろ高コストになって見合わないという意識が必要です。自動運転などはー定の事故は発生するものです。それを許容する文化も必要でしょう。「何かあったらどうするんだ文化」とも揶揄される日本的なマインドでは世界にどんどん取り残されるという意識改革が必要です。


 『ビジネススクールで教えている 武器としてのAI×TECHスキル
著:グロービス経営大学院 発行日:2024/2/28 価格:1,980円 発行元:東洋経済新報社

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