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熱心なファンは新しいファンを育てる!? 顧客同士が満足度を高めあう好循環

投稿日:2015/03/02更新日:2019/08/15

※2013/5/27にNumberWebに掲載された内容をGLOBIS知見録の読者向けに再掲載したものです。

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日本野球機構が、2013年度公式戦(第1クール終了時まで)の入場者数を発表した。それによると、1試合平均の入場者数はセ・リーグで26,801人(前年同時期比 1.5%増)、パ・リーグは20,783人(同 0.1%減)と、まずまずのスタートを切っているようだ。

爽やかな気候のこの季節。スタジアムでの観戦を楽しんだ読者も多いのではないだろうか。

前回は、日本のプロ野球を題材に、顧客満足度を高める前提として必要な条件を確認した。では、具体的に、どのような施策を設計していけばいいだろうか。

ここで一旦、アメリカの状況に目を向けてみよう。

MLBでは「観客は試合の結果に一喜一憂するだけではなく、スタジアムでの体験に基づく印象でも満足度が変わる」という考え方もあり、球団はスタジアム内で実施する様々なエンターテイメントに工夫を凝らしている。

例えば7回表が終了した時に歌う「TAKE ME OUT TO THE BALL GAME」や、ニューヨークヤンキースタジアムで流れる「YMCA」など、試合の合間に観客が楽しめる時間が用意されている。

食べ物も重要だ。定番は、ビールとホットドッグだろう。ドジャースタジアムで売られているドジャードッグなどのように、スタジアムごとにチームや地域の特長を活かした名物が作られている。

その他にも選手やスタッフとの交流、映像エンターテイメントなど観戦体験を充実させてくれるものが多々企画されており、スタジアム観戦を盛り上げてくれる。

顧客同士が影響し合い、満足度を高める環境とは?

観客の満足度につながる体験はどのように創られるのか。施設などの物理的環境によるもの、また試合の内容自体によるものの他に、選手、球団スタッフ、球場スタッフなど、その場を共有する人同士のインターラクションによって創られるところが大きい。

今回はこの「場を共有する人同士のインターラクション」の中でも、提供者である従業員(球団スタッフ)とサービス受益者の顧客(観客)の関係性ではなく、顧客同士のインターラクションにフォーカスをし、そのビジネスインパクトについて考えていきたい。

このような体験はないだろうか。スタジアムに行って、左右前後にいた全く見ず知らずの人と一緒に応援しているうちに、意気投合したり、勝利の喜びを分かち合ったりして、気分が最高潮に達する瞬間。試合は負けたけど、それでも満足して家路につくこと。この興奮感こそTV観戦するときとの大きな違いであり、スタジアム観戦の醍醐味の1つである。

そしてこのような体験をしているかどうかはきっと、スタジアムに足を再度運ぶかどうかに大きく影響する。

となれば、観客同士がお互いに満足度を高めるような環境を、どのように創りだしていくのかという点が課題となってくる。

提供するサービスと顧客の期待値は合致しているか

ここで、前回のポイントをおさらいしてみよう。

◆顧客満足を上げるためには、まず従業員自身が「自社のターゲット顧客」と「自社のサービスコンセプト」を理解している必要がある
◆ターゲット顧客像とサービスコンセプトが明確になると、従業員もやるべきことが明確に見えてくるため、サービスクオリティの向上につながりやすい

さらに言えば、この2点を明確化することで顧客にも「どのようなサービスが受けられるのか」が伝わるため、顧客が企業側の想定を超えるような期待値を持ってしまうことを防ぐことができる。そしてこのことが、顧客満足度を上げる「サービスのクオリティ」に大きなインパクトを与える。

例えば、一丸となってチームを応援したい気持ちでスタジアムに来ている人たちに囲まれて観戦する場合と、ただ試合を観たいだけで来ている人が多い中で観戦する場合では、たとえ同じ試合内容、同じスタジアム、同じスタッフに囲まれていても、全く違う体験になる。どちらの状況が心地よいかは、観客がスタジアム観戦に何を求めているかによって違いはあるが、1つ共通して言えることは、自分自身と同じ期待値を持っている人との集団の中でスタジアム観戦をしたほうが、満足度が高い体験になるということである。

つまり、その場で起きる顧客同士のインターラクションが満足度を高めるものになるポイントは、期待値の似通った顧客が集う場(状況)をいかに創造することができるかにあるということだ。

企業が提供するサービスの内容や質も顧客満足度向上に影響する重要な要素だが、どのような顧客を集めるのかということに関しても戦略的に考えなければ、サービスの質のコントロールが難しくなる。

ロイヤルカスタマーが持つ他の顧客への影響力

しかし、顧客の集め方だけで話が終わるわけではない。ここからが重要である。顧客同士のインターラクションにおいて、すべての顧客が同じような影響を与えているのではない。当然のことながらロイヤルカスタマーになればなるほど積極的に他の顧客とインターラクションをとる。

例えば、ロイヤリティの高いファンは、初めて来場したようなエントリー顧客に間接的に応援の方法を伝え、巻き込み、初めて来場した観客にスタジアム観戦の楽しさを伝えていく。そしてそれに巻き込まれたエントリー観客は満足度を高め、その人自身もロイヤルカスタマーへの道を上り、やがて次のエントリー顧客に観戦の面白さを伝えていく……これがどんどん繰り返されていき、顧客同士のインターラクションが活発になる。

ロイヤルカスタマーへの階段とは?

面白いことにロイヤルカスタマーが行う巻き込みは、エントリー顧客にとって意味があるだけでなく、ロイヤルカスタマー自身の自己実現の欲求や尊厳の欲求などを満たすことにつながっていることも多い。「頼られる存在」となることによる満足感である。実はエントリー顧客の存在がロイヤルカスタマーの満足度向上にもつながっているのだ。双方向の関係性。これこそが「互い」に影響するということであり、企業に必要な顧客インターラクションの要件の1つであろう。

顧客にいかにロイヤルカスタマーへの階段を上ってもらうか。それには、顧客が知らず知らずのうちにロイヤリティを高めていくような仕組みを作りだすことが重要である。例えば、プロ野球のファンクラブ制度は、事業会社のポイント会員制度やマイレージ会員制度などと同じく、ロイヤルカスタマーへの道を進んでもらうことにつながる1つの取り組みであるといえよう。

特にプロ野球の場合には、様々な取り組みが行われている。ロッテマリーンズのファンクラブは「TEAM26」というユニークなネーミングをつけている。マリーンズでは背番号26をファンのための永久欠番として、ファンの巻き込みを意識したコンセプトを打ち出してアピールをしており、また楽天イーグルスも同じく背番号10番をファンのための永久欠番とした取り組みを行っている。さらに各球団にはキッズ(ジュニア)会員制度があり、早い段階からの巻き込みを積極的に行うほど、このカスタマーの囲い込みに力をいれている。

顧客同士が互いにインターラクションをもつことで自然にロイヤルカスタマー化していく仕組みを回すことができると、満足度の高いロイヤルカスタマーの獲得において優位になる。

このような共創の関係性というのが望ましい関係性の1つではないだろうか。企業から顧客へという一方通行の関係性ではなく、企業と顧客が共に価値を作りだす関係性。顧客同士が互いに価値創造の役割を担っている関係性。そのような関係性を作りだすことは、きっと企業のビジネスモデルに大きなインパクトを与えることになるであろう。

その関係性の構築には、顧客自身がどのようなサービスを受けることができるのかの事前期待が正しく醸成されている状況を作りだすことが必要となる。

あらためて、自社の顧客は誰なのか、どういう顧客をどのようにミックスした状態が最も効果的な顧客同士のインターラクションが行われるのかなどについて戦略を立てた上で顧客戦略を練っていただきたい。

<今回のポイント>
◆サービスの質は、企業から顧客に一方的に提供されるもので決まるだけではなく、その場を共有する顧客同士のインターラクションによっても左右される
◆顧客同士のインターラクションが価値あるものになるには、サービスが提供される場に集う顧客の中に共通する期待値(共感ポイント)があることが重要
◆サービスのクオリティをコントロールするとは、ターゲット顧客をしっかり集めるということでもある
◆ロイヤルカスタマーになればなるほど積極的に他の顧客とインターラクションをとるため、顧客の中にロイヤリティを育てる仕組みが重要である

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