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そんなにすぐに判断していい? -タイムラグの見落とし

投稿日:2010/12/01更新日:2019/08/14

問題です

以下のAさんの考え方の問題点は何か。

「最近、うちの会社も事業が増えたので、組織を機能別組織から事業部別組織に変えたのはいいけど、かえって生産性が下がっているようだわ。あせって組織構造を変えたのは失敗だったかしら。まだ、うちのような中小企業で事業部制は早かったかもしれない・・・。朝令暮改のようで嫌だけど、ここはもう一度機能別組織に戻す方がいいのかしら」

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解答です

今回の落とし穴は、「タイムラグの見落とし」です。これは、ある施策や出来事などの影響や効果が、すぐにではなく時間をおいてあらわれるにもかかわらず、それに気付かず、「施策の効果がなかった」「あの出来事の影響はないようだ」などと判断してしまうことです。第27回で紹介した「近視眼」の落とし穴とも非常に強く連関する話です。なお、タイムラグは、「時間的遅れ」という意味です。

ケースの例で言えば、中小企業が、事業の多角化に伴い、組織構造を機能別組織から事業部別組織に変更することは一般的な話です。しかし、理屈の上では自然な組織構造の転換であっても、組織変更には、ある程度の混乱や適応への苦労が生じるものです。

たとえば、仕事の命令系統やコミュニケーションの流れが変わりますから、それにアジャストするのに苦労する人もいるでしょう。あるいは、管理職にとっても期待役割が変わりますから、それに合わせて意識を変えて行動したり、スキルを伸ばしたりすることも大変なことです。なかなか適切な意思決定や指示ができない管理職も少なくないでしょう。副次効果が重なる結果、長期的には効果的な施策であっても、一時的にはかえってマイナスの効果が生まれることがあるのです。以下がそのイメージ図です。

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今回の例であれば、それほど空間的、時間的なスコープが大きいわけではないので、冷静に状況を分析すれば、「短期的には多少のマイナスの効果は出ているが、長期的には効果は出るだろう」ということを確認することはそれほど難しくはないでしょう。

難しくなるのは、空間的、時間的スコープが大きくなり、かつ関係者の数も増えるとき。すなわち、「系(システム)」が大きくなった時です。なぜなら、系が大きくなるにしたがって、因果関係が複雑になったり、単純に、物理的な距離が増して影響が伝わる時間が長くなってしまうからです。

その典型が、国の施策です(事実、マクロ経済学などにおいては、タイムラグの捉え方が重要な論点となります)。たとえば、もし今わが国がTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加したら、補助金で金銭的援助をするにしても、瞬間的には農家の競争力を大きく削ぐことになるでしょう。しかし、長い目で見れば、(同時のどのような施策をとるかにもよりますが)、農家の自立や創意工夫、あるいは農業の産業化、さらには競争力のない農家の退出を促進し、トータルで見れば農家そして消費者にとってメリットを生み出す可能性は高いのです。

逆に言えば、もしTPPに参加するのであれば、こうした一時的な副作用はあらかじめ見込んだ上で、いたずらにそれに振り回されることは避けなくてはなりません。もちろん、副作用を緩和したり、期間を短くするような方法論は考えるべきではあるのですが。

これは経営も同じです。世の中には、すぐに「やはり効果ないよ」「だからやらない方がいいと言ったのに」と騒ぐ人が一定比率は存在するものです。また、すべての人に同じ効果を与える施策もありません。必ず濃淡があるものです。このような時、彼らの声から耳を背けるのはよくありませんが、過度に意識しすぎるのは決して好ましいことではありません。むしろ、なぜそうした副作用が生じるのか、そのメカニズムをしっかり説明した上で、「やるべきことをしっかりやれば、ある程度のタイムラグはあっても効果は出る」ということをしっかり説明することが重要です。

現実的に難しいのは、そうしたマイナスの影響が、なかなか避けにくい本質的なものなのか、それとも、本当に施策やその実施方法がまずかったことに起因するのかの見分けがつきにくいことです。もし後者であるにもかかわらず、前者だと勘違いしていると、舵を間違った方向に切ったことに気付かないまま、大きな禍根を残すことになります。こうした悲劇を避ける上でも、経営学や現場で観察されるファクトをしっかり踏まえた上で、本来、どの程度の副作用が生まれるかを事前にしっかり予測しておくことが重要と言えるでしょう。

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