今年5月発売の『MBA 言語化トレーニング』の「Part2 Lesson11 教訓を言語化する」の一部を紹介します。
よく「歴史に学ぶ」ということが言われます。歴史は教訓の宝庫だからです。たとえば昨今AIが進化していますが、過去にもパソコンやインターネットなど新しい技術が大きく人々の生活を変えることがありました。そこで得た教訓を参考にすれば、これから発展・登場するであろう技術にどう備えるべきかの参考になるのです。
ビジネスにおける問題解決も同様です。全く新しい問題に直面することは実はそれほど多くありません。問題解決から得た教訓を言語化しておくことによって、そのノウハウを皆が活用できるようになれば、組織全体の生産性が向上していくのです。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、PHP研究所のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
自分のノウハウに、再現性を持たせるには?
問題解決は、初めて直面する問題を解決しなくてはならないという場面も当然あります。
たとえば、社内で生成AIを用いて実験的につくった有名タレントを模した画像や動画が外部に流出し、関係者に多大な迷惑をかけたケースなどは過去にはなかった問題でしょう。参考事例がないので、慎重かつ多面的に問題を捉え、解決策を模索する必要があります。
ただ、実際にはそうした問題は多くはなく、すでに社内の誰かが類似の問題を解決したというケースが多いものです。たとえば小売チェーンにおけるクレーマー対策の問題などは、どこかの店舗で巧みなやり方がすでに実施されていたりするものです。それを各店舗に横展開すれば、それぞれの店舗の人間が一からクレーマー対策を考えるよりも効率的にクレーマー対策ができることになります。
横展開をすることはまた、顧客の期待値のコントロールや、サービスレベルの均一化にもつながります。製造業の現場などでは比較的当たり前の方法論ではありますが、ホワイトカラーの業務ではこの横展開が意外になされていません。これはもったいないことです。
科学の世界には「巨人の肩に乗る」という表現があります。誰かの業績や知見(失敗からの学びも含む)の上にうまく乗ることで、自分はより遠くにある真理に効率的に近づくことができるといった意味合いです。
これは自分自身でも意識したいアプローチですが、逆に他の人が自分の問題解決アプローチやその結果を利用しやすくすることも、組織の生産性を上げる非常に大切な心構えです。つまり自分自身が他の人にとっての「巨人の肩」になるということです。
組織全体に横展開できるノウハウを言語化しておくことは、「この人はリーダーとして組織全体を考えている、できる人だな」と一目置かれるきっかけにもなります。
言語化にあたっては図に示したプロセスを意識します。自分の感情や思い入れなどは排除して、なるべく客観性を持たせるとともに、受け手がイメージしやすいように具体的に書きます。
そのうえで、参考となる示唆を提示し、さらに他者からのフィードバックをペースにそれをブラッシュアップさせると、多くの人にとって参考になる教訓となります。
演習問題や回答例をごらんになりたい方は本書をご覧ください
『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』
著:グロービス 執筆:嶋田 毅 発行日:2024/5/22 価格:1,870円 発行元:PHP研究所