今年5月発売の「MBA 言語化トレーニング」の「Part2 Lesson7 メンバーが目指すべき『あるべき姿』を描く」の一部を紹介します。
問題解決(課題解決)のスタートは、何を問題と考えるかを決めること、表現を変えると現状と「あるべき姿」のギャップを明確にすることです。必然的に、「あるべき姿」の設定次第でその後工程で考えること、さらには具体的な施策などはすべて変わってきます。
自分の視点だけではなく、関係者の意思や感情などにも配慮し、皆が納得できる「あるべき姿」を描きたいものです。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、PHP研究所のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
頭の中の理想を、伝わる言葉にするには
問題解決というと何か好ましくない状況が生じ(例:機械の故障、人間の病気など)、それを通常あるいは定常の状態に戻すことをイメージする人も多いかもしれません。機械の故障であればそれを修理する、病気であればその治療を行うなどです。
もちろんこれも問題解決ではありますが、ビジネスにおいてはより広義に問題という言葉を定義するのが一般的です。広義の問題解決では、あるべき姿(「ありたい姿」と表現することもあります)と現状のギャップを問題と捉えます。
たとえば、昨年の第一四半期の売上高が10億円、今年の第一四半期の売上高が目標12億円だったのに対し、11億円しか数字が達成できなかったら、目標未達ですから、問題があったと考えるわけです。
この観点に立つと、あるべき姿をどのように設定するかによって、その後の問題解決のアプローチがまったく異なってくることがわかります。
たとえば、「従業員の英語力をTOEICの平均点数800点としたい」とあるべき姿を定義すると、解決策は自ずとTOEICの点数を高めるといったテクニカルな方法論になってしまいます。それが絶対的に悪いという訳ではないですが、TOEICの点数が高いことと、不自由なくビジネス英語を使えることは多少異なります。
一方、あるべき姿を「すべての従業員が英語学習に強い関心を持ち、職場でも自発的に学び使う環境を実現する」とすると、アプローチはまったく異なるものになるでしょう。
あるべき姿の言語化にあたっては、図に示したように大きく3つの要素を強く意識します。ほどほどのストレッチ感があり、みんなが「この状態を目指してみたい」と思える像を、まずは頭の中にビビッドにイメージすることが効果的です。
そのうえで、その像を具体的に言葉に落とし込む手順を踏むとよいでしょう。
演習問題1
■設定
あなたはある企業の採用責任者。ここ数年間、新卒採用者は予定数採れているのですが、3年目の退職率が上がっており、現場から「せっかく時間をかけて育てたのに……」という声がよく聞こえてきます。採用担当者として何とか手を打ちたいと考えていますが、どのようにあるべき姿を描けばいいのでしょうか。
■NG例
「新卒採用者が絶対に辞めないようにしたい。そのために採用方法を一新するとともに、若いうちから会社に対して強い愛社精神を感じるような施策を講じる」
回答例や他の演習問題をごらんになりたい方は本書をご覧ください
『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』
著:グロービス 執筆:嶋田 毅 発行日:2024/5/22 価格:1,870円 発行元:PHP研究所