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官僚に望むこと

投稿日:2011/08/01更新日:2019/04/09

初稿執筆日:2011年8月1日

第二稿執筆日:2015年1月28日

日本の最高学府の最も優秀な人々が選んできた職業、それが官僚である。

しかし、我が国においてはこれまでさまざまな局面で「官僚バッシング」が繰り広げられてきた。せっかくの優秀な人材が「天下り」「硬直的な政策対応(国益より省益主義)」の批判にさらされ、国民からの信頼を失い、委縮してしまっていることは我が国にとって大きな損失だ。

2009年に「脱官僚」「政治主導」を掲げて政権交代を果たした民主党であったが、その後の迷走は国民の失望につながり、政治の信頼を著しく失墜させることになった。首相が1年ごとに代わっていく“不安定な政治”そのものがリスクとなっている我が国において、官僚一人ひとりが改革マインドを持ち、官僚機構が安定的に機能し続けることは非常に重要である。

日本は現在、東日本大震災からの復興という未曽有の国難のみならず、先送りが許されない財政再建と社会保障制度改革、人口減少社会と地方創生、TPPをはじめとする新たな多国間関係の構築、エネルギー政策の立て直しと新産業の創出などの重要課題に直面している。本来であれば、「政・官・民」のオール・ジャパンで叡智を結集した、迅速な政策立案と改革断行が必要不可欠な状況にある。

いまこそ政策実務に高い能力を有する官僚が、先ず憲法第15条の「公務員は国民全体への奉仕者」、すなわち「公僕」であるとの原点に戻り、国民の立場に立ち、責任を自覚し、使命感・高い志・誇りを持って職務を遂行することが望まれている。

1.理念の徹底を

「誰のために働いているのか?」「官庁は何のために存在するのか?」。まずは原点に戻り、「国民」に対する公僕意識と、「日本を良くする」という高い使命感(志)を、採用試験・研修・人事評価などを通じ、再徹底することが求められる。企業で最も重要なものが、理念である。同様に、政府の中で最も重要なものは、「何のために存在し、誰の為に働くのか?」という理念である。その理念さえ徹底されていれば、国民との信頼関係が揺らぐことは無かろう。

2.「省益」から「国益」へ

出身省庁の「省益」志向を脱して、国民全体への奉仕者である「日の丸」官僚として、「国益」を常に追求すべきである。そのために、内閣による人事管理の一元化(一括採用)や、省庁を越えた思い切った人事異動(霞が関全体でのフリーエージェント制・課長級以上の公募制)などが求められる。

3.民間とのオープンな人事交流を

日本が直面する困難な政策課題の解決には、「政・官・民」のオール・ジャパンによる「叡智の結集」が不可欠である。従い、国家経営・行政経営に民間人のマネジメント能力、高いレベルでの専門性や見識などを積極的に活用すべきである。官民人事交流、民間人の中途採用、高度な専門性に着目した公募型の民間任用を積極的に実施することで、霞が関全体を出入り可能な「回転ドア(revolving door)」として、政策人材の流動化を図る。そのことにより、日本の国家戦略・政策立案レべルの向上を図る事が可能となろう。

尚、そのような観点から、所謂、「天下り」については、国家公務員を「政策公共財」と捉え、利益誘導的でなく、透明性が十分に確保されている場合には、人材の有効活用の一環として是認すべきであろう。同様に、民間から官庁への中途採用、出向も奨励されるべきであろう。

4.国際社会への対応と人材育成・登用を

国際社会の中で国益を全うし得る、高い能力を有する人材を多様な方法で採用するとともに、入省後の人材育成(研修)、海外留学、国際機関への出向などを積極的に行うことにより、国際感覚と人的ネットワーク、適切なコミュニケーション力と意思決定力の醸成を図ることが求められる。

また、従来の入省年次主義を排し、能力と実績による人事評価制度(政策目標の達成度や貢献度をベースにした成果主義)の導入により、政策の優先順位や環境変化に対応しうる、柔軟かつ機動的な人材の任用(登用)を可能にすべきである。

5.「心」のある組織を

英語でも日本語でも、官僚的(Bureaucratic)という言葉が定着している。意味は、「権威主義的、形式的な態度や傾向があるさま」だ。国民への公平性を担保するために言えることと言えないことがあるのは、よくわかる。或いは、形式主義である必要があることも良く分かる。当事者と適度な距離を保とうとすることについても理解ができないわけではない。しかし、大きな変革期であるこの瞬間に求められるのは、地域と現場に根ざした肌感覚ではないだろうか。官僚である前に一人間としての豊かな心を前面に出し、日本のため、国民のために、共感を育みながら有能な頭脳を働かせて欲しい。

政治の変化が激しい中では有能な官僚がしっかりと行政を司ることが重要だ。そのためにも、理念、国益、民間や地方の現場との交流、国際性、そして心のある行政を望むところである。そのことを実現する霞が関の組織の在り方、人事制度、コミュニケーション手法などを再整備しなければならない。優秀な官僚が誇りと自信を取り戻し、心ある行動の姿が見えた時、国民との揺るぎない信頼関係が結ばれる。そして日本は信頼される行政を基盤としたより良い社会になると確信している。

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