『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』 ――変化する企業の勝ちパターン

いまみなさんが着ている服はどのように生産・販売されたものですか?また、その服について語りたいストーリーはありますか?

「特に語りたいことはありません」

多くの方が似たような回答になるのではないでしょうか。なぜなら、某アパレルブランドが生産し、それを仕入れたショッピングセンターで購入したものだから。一般の消費に多くの人は、思い入れを持ちません。

今回ご紹介する本は、そうした消費のあり方に、テクノロジーの力で大きな変革をもたらしている「D2C(Direct to Consumer)」を体系化して説明しています。テクノロジーがもたらすビジネス環境の変化を捉えるにあたり、全てのビジネスパーソンにおすすめしたい一冊です。

D2Cとは何か?

D2CはDirect to Consumerの略語です。極めてシンプルに言えば“製品の企画・開発・製造を自社で行い、卸や小売店を介さず顧客に直接販売する”という、垂直統合のサプライチェーンを指します。

自社製造・直接販売というと、ユニクロなどのSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)と類似した言葉のように思われる方もいらっしゃると思います。私なりの解釈でいえば、SPAはあくまでも生産と販売の一形態(特にアパレル業態)です。それに対して、D2Cは何よりも“顧客との新しい関係性”を築くことに価値を置き、それをテクノロジーの力で実現させる、新たなビジネスモデルであると言えます。

著者はD2Cについていくつかの特徴を明確に挙げていますが、特に重要と思われる3点について触れていきます。

●「ものづくり屋」でなく「テック企業」である
従来のメーカーとの顕著な違いは、D2Cブランドはデータサイエンティストを有し、データドリブンであらゆる施策・意志決定を行うという点です。

オンライン上の顧客行動データを元に、効率的な需要予測やPRを行うだけでなく、顧客自身が把握していなかった深層ニーズの発掘とその提案を行うことができます。

●「機能」でなく「世界観」を売る
世界観とは「ユニークで心に刺さる(中略)ブランドの基本方針とその実装」のことを指します。D2Cブランドは製品自体やその機能でなく、製品があるライフスタイルとその世界観こそが差別化要素であると位置付けています。

例えば、スーツケースのD2Cブランド“Away”は、自らを「旅を売る会社」としています。スーツケースの販売前に旅をテーマにしたハイセンスな雑誌を創刊し、予約券付きとはいえ決して安くない225ドルで販売しました。結果、雑誌の世界観に没入した顧客から注文が相次ぎ、1,200冊が完売したといいます。

●「他人」でなく「友人」に売る
従来のメーカーと顧客は“メーカーが作って売り、顧客が買う”という一方通行の関係性でした。D2Cブランドにおいて、顧客はブランドを共に創る友人と位置付けています。

コスメのD2Cブランド“Glossier”は、時に400件以上の顧客からの声を取り入れながら商品開発を行っています。製品自体がよりニーズに沿ったものに育つだけでなく、この姿勢が顧客からの共感や信頼を生むことで、熱狂的なコミュニティが形成され、デジタルベースで繋がり続けます。その結果、LTVの高い顧客が形成されていくのです。

D2Cから考える、デジタル時代に求められる人材とスキル

D2Cブランドにおける差別化の源泉は、ブランドの世界観を“語りたくなるストーリー”として構築&ツール化し(右脳)、リアルとデジタルを効率的に組み合わせた長期コミュニケーション戦略を設計する(左脳)、右脳と左脳を自由に行き来する人材だと感じました。そしてそのスキルは、テクノロジーによって効率化が進む中で、様々な業種・業態で価値が高まっていくスキルなのではないでしょうか。

D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略
著:佐々木康裕 発売日:2020/1/10 kindle版:1,980円 単行本:2,200円 発行元:NewsPicksパブリッシング

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