2019年を振り返り、2020年の計画を立てるのに適した年末年始。時間がある時にじっくり読みたい書籍5冊をグロービス経営大学院の教員が推薦します。
『セルフ・アウェアネス』
推薦者:林 恭子
来る2020年も、ビジネスをめぐる変化は激しく、社会や組織における価値観の多様化もますます進むのではないでしょうか。そんなVUCAな時代だからこそ、リーダーには「自分とは何者か」を良く理解し、「自分らしいリーダーシップ」を発揮することが求められています。
この『セルフ・アウェアネス』は、ハーバード・ビジネス・レビューがEI(エモーショナル・インテリジェンス=感情的知性)に焦点を置いて出している書籍シリーズの中の一冊。世界的な知の賢人達が、分かり易い言葉で自己認識を高める方法や、内省のポイント、他者からのフィードバックの活かし方などを伝えてくれます。
年末年始、静かに一人の時間を持てる機会に、じっくりと自分自身に向き合ってみてはいかがでしょう。きっと2020年に相応しい、自分らしいスタートが切れるのではと思います。
著者:ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 訳:DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部 発行日:2019/8/8 価格:1540円 発売元:ダイヤモンド社
『フェルマーの最終定理』
推薦者:岡 重文
300年以上、解けなかったフェルマーの最終定理。
1995年にイギリスの数学者、
アンドリュー・ワイルズ氏によって、終止符が打たれました。
ストーリーとしての面白さは勿論のこと、
解けるかどうか分からない課題に人生を注ぐ、
ワイルズ氏の真摯な生き方、
これまで他の研究者が
あまり取り上げてこなかった理論が解決の糸口になること、
そして、先人の人たちの功績の上に
今があることに思いを馳せることができるなど
ビジネスの世界でも参考になる要素満載です。
元はBBCのドキュメンタリー番組を
本にしたものだからということもあるからなのでしょう、
「数学」があまり得意でない方へも
数式を用いることなくきちんと理解できるよう書かれています。
そういう意味では、ここも秀逸です。
年末年始、時間があるときに、
知的好奇心を刺激するドキュメンタリー、
お楽しみください。
格式としてハードカバーが個人的には好みですが、
手軽に読める文庫も、そしてKindle版もありますので、
お好みの媒体で、是非。
著者:サイモン・シン 訳:青木 薫 発行日:2006/5/30 価格:869円 発売元:新潮社
『CSV時代のイノベーション戦略』
推薦者:池田 新
2015年に国連がSDGsを提唱してから4年。今や「サステイナビリティ」を耳にしない日はない毎日ですが、これを単なるCSR的なDo the right thingと捉えるのでは不十分。NGOや消費者の発信力が増してきた現代の複雑な競争を生き残る為の術として、経済的価値を創造する為の必須条件と捉えることが大事です(Creating Shared Value:社会的価値と経済的価値の創造)。
CSV先進企業は、国やNGOなどと交流しサステイナブルな社会を作り上げるルール作りに関与することを通して、次なる競争展開を有利に進めています。これまで、ルール作りに関与する企業の取り組みと言えば、政府へのロビー活動がほとんどでした。しかし近年、社会問題が複雑化・グローバル化する中で国家の力は相対的に低くなり、単なるロビー活動では済まなくなってきたのです。本書はそのような時代の変化を多くの企業事例でわかりやすく解説してくれています。
著者:藤井 剛 発行日:2014/7/2 価格:1848円 発売元:ファーストプレス
『人類の意識を変えた20世紀 アインシュタインからスーパーマリオ、ポストモダンまで』
推薦者:関灘 茂
自身のインプットの質・量・多様性を見直すきっかけにもなる1冊。A.T. カーニーでコンサルティング業務に従事し始めて間もない頃、アジアを代表する大先輩コンサルタントから、インプットの質・量・多様性が独自のアウトプットに繋がると、その重要性を教わりました。曰く、「ドイツ語の数学書から経営のインサイトを得ている」とのこと。
インプットからアウトプットに至るプロセスに技がある訳ですが、まずはインプット。この書籍は全15章、相対性、モダニズム、戦争、個人主義、イド、不確定性、サイエンス・フィクション、虚無主義、宇宙、セックス、ティーンエイジャー、カオス、成長、ポストモダン、ネットワークからなる豊富なインプット。これらの文化・アート・科学・政治・経済のキーワードから各章が独立的ではなく、ストーリーとなり、19世紀と20世紀の断絶、人類の意識の変化、そして21世紀の主役となる世代への明るい希望・未来が語られます。まさに著者ならでは、独自のアウトプット。年末年始、本書を片手に明るい希望を持ち、周りの人々と語り、2020年を迎えたいところです。
著者:ジョン・ヒッグス 訳:梶山あゆみ 発行日:2019/9/5 価格:2475円 発売元:インターシフト
『ブッダの瞑想法: ヴィパッサナー瞑想の理論と実践』
推薦者:林 浩平
年末年始。ゆく年を省み、くる年を謀るには良い節目。そこでお勧めしたいのが本書です。
あのとき、自分は何故ああしたのか?これから、自分はどうしたいのか?
そんな自問自答はできれば心穏やかにしたいもの。本書には、そのための理論と実践法が記されています。
物事をありのまま捉えられ、前向きに向き合える。自分の深い内面に気づき、ネガティブな感情に徒らに振り回されず、一瞬一瞬を幸せな心地で味わえる。明晰な心と頭脳で、集中し創造できる。
経営や人生における「マインドフルネス」の効用は広く知られつつありますが、ある種のとっつきにくさも事実。
でも、本書はそんな心配は無用。市井の実践家である著者が、平易な語り口ながら奥深く紐解いてくれる良書です。ソファで寛ぎながら読み進めるうち、いつしか引き込まれている自分に「気づく」でしょう。年末年始のお供にぜひ。
著者:地橋秀雄 発行日:2006/5/22 価格:2310円 発売元:春秋社