今回は、日本を離れて仕事をする上で重要な「柔軟性」について書いてみたい。
(第1回
結果を出せる駐在員と出せない駐在員の違いは何?)
(第2回
海外駐在員に必要なのはプライドを捨ててmust to doに集中すること)
柔軟性の漢字から派生して「やわらかい」→「やさしい」と解釈する人もいるだろう。しかし、グローバル環境で重要な柔軟性というのは、「しなやか」に対応することを意味する。しなやかは、しっかりとした軸を持つことの先にあり、軸があるからこそ目の前の事象に臨機応変に対応し、結果を残すことができる。
さて、なぜ海外で仕事をする際に柔軟性が必要なのか。それは、海外で仕事をしているときのほうが、予想していない展開(自分が予想できない展開と言ったほうがよいのかもしれないが)に出くわすことが多いからだ。予想していない展開に毎回目くじらを立てていては、海外では体がもたない。だからこそ、海外で仕事をするときには、予想していない展開が起きるという前提で動かねばならない。
ではなぜ予想できない展開が起きるのか。海外での事業ステージは日本とは違うし、職務内容はより複雑であり、職務範囲は日本にいたときと比べて広くなる。意思決定のスピード、量、重要性も格段に増す。そして、そこで働く人々、取引先の人々との文化の違いもある。これらは、海外で仕事をする中で最初に直面する「違い」である。この「違い」が予想していない展開につながるのだ。
どうすれば柔軟に対応できるのか?
このような予想していない展開をしなやかに対応できる人と、あたふたしてしまう人の差が、柔軟性がある人とない人の違いだと筆者は考える。
柔軟性というのは、その場での対応力でもあるので、実は人並み以上に準備を入念に行っている人しかできない対応方法だ。柔軟に対応をしている様子は、一見すると軽やかなので、場当たり的もしくはその場で思いついたかのように対応しているように思われることが多い。つまり準備をしていないように見られがちだ。
しかし、逆である。準備をしっかりしているから柔軟に対応できるのだ。準備をするうえでは、自分の最も幹になる判断軸があるのでそれ以外は捨てることができ、優先順位高いものだけに集中することができる。すべてがプロアクティブである。
柔軟性について考えるとき、故・18代目中村勘三郎がよく語ったと言われる無着成恭氏の言葉を思い出す。“型がある人間が型を破ると「型破り」、型がない人間が型を破ったら「形無し」だ”と。柔軟性には準備に裏打ちされた軸が必要であると先述したが、その軸とはここでいう「型」とも言えるだろう。
海外で仕事をする上で必要な「柔軟性」、あなたは身に付いているだろうか?
【駐在員の皆さんへ】
●柔軟性を高める前に、基本の型をマスターしているだろうか?
●日ごろから準備をしっかり行い、プロアクティブに動くことを心掛けているだろうか?
●海外で直面する違いやそこから生じる予想しない展開に、しなやかに対応しているだろうか?
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