「草食系」「肉食系」という言葉を聞いたことがある人も多いだろう。恋愛に受け身な「草食系」、積極的な「肉食系」。ある保険会社の調査によると、求めるタイプのミスマッチによって、恋愛への道が険しいことが明らかに。(このコラムは、アイティメディア「Business Media 誠」に2009年4月2日に掲載された内容をGLOBIS.JPの読者向けに再掲載したものです)
ネット専業の生命保険会社であるライフネット生命保険が「婚活に関する調査」という興味深い意識調査を発表した。最近、恋愛に関して「草食系」「肉食系」という言葉が使われるようになったが、今回の調査の面白いところは、20代、30代の未婚男女(調査対象は1000人。モバイルリサーチを実施)に、自分が草食系か肉食系かという自己認識を問い、草食系と肉食系に分けて婚活まわりの質問をしている点にある。
近年は40代の独身者も多いので、40代のデータも興味のあるところだが、何はともあれ、調査結果を見てみよう。
男女とも4人に3人は草食系
いわずもがなだが、念のために言葉の定義を確認しておくと、「草食系」とは恋愛に受け身になりがちで、言いたいことを内に秘める傾向を指す。一方の「肉食系」とは恋愛に関して自分からアプローチする積極性を持ち、言いたいことが言えるタイプを指す。調査対象者の自己認識は「草食系+どちらかというと草食系」が男性で75.6%、女性で74.2%いて、逆に「肉食系+どちらかというと肉食系」は男性で24.4%、女性で25.8%いる。大まかには男女とも4人に3人は草食系なのだが、わずかだが女性の方が積極的だ。
あなたは草食系? それとも肉食系? (出典:ライフネット生命保険)
草食系・肉食系の差が大きく出るのは「現在の恋愛状況について」という項目で、現在恋人がいる比率は、男性肉食系が45.9%、男性草食系は24.1%と大差が付く。女性の場合も差は大きく、女性草食系は32.9%が現在恋人を持っていて、女性肉食系となると62.0%になる。肉食系のハイパフォーマンスが目立つが、男性草食系は将来が心配なくらい相手に恵まれていない。
「4人に3人は自分自身が草食系」という基本データだが、相手に求めるのはどちらかというと、これは男女で差が出る。女性は草食系・肉食系を合計すると66%が相手には肉食系を求めている。逆に男性(草食系・肉食系の合計)は相手に草食系を求める傾向があり、56.8%が相手は草食系の控え目な女性がいいと答えている。
調査では草食系の男性は378人いる。彼らの60.6%、すなわち229人が、草食系の女性がいいと答えているが、草食系の女性(371人)で草食系の男性を求める人数は122人しかいない。
結婚対象について(出典:ライフネット生命保険)
有効求人倍率のように倍率を計算すると草食系男性は0.53倍という恋愛難だ。肉食系女性を求める草食系男性は149人、肉食系の女性で草食系の男性を求めるのは31.8%だけだから、求人は41人。こちらの有効恋愛求人倍率は0.28倍の“超氷河期並み”だ。求めるタイプのミスマッチを考慮すると、恋愛への道が大変険しいことが分かる。特に、男性が女性の方からアプローチしてくれるというような状況を待っていると、非常に縁遠くなることが分かる。
恋愛には積極さが有利
結婚への意図的な努力である「婚活」はどの程度行われているのかというと、男女を合わせた全体を見ると12%が現在婚活中だという(母数は「今後結婚したいと思っている」人。調査対象の81.8%)。これ以外に、69.8%の人が、現在婚活中ではないが結婚したいと思っている。かわいそうな感じがするのは、「結婚できないかもしれないという不安の有無」という調査項目で、全体の91.9%が「不安がある+やや不安がある+あまり不安はないが、多少の不安がある」を選択している。恋愛、結婚を仲介するサービスには大きなビジネスチャンスがありそうだ。
「不安はない」ときっぱり答えているのは男性草食系では7.4%に過ぎない。他方、男性でも肉食系は19.8%が「不安はない」と回答した。
結婚できないかもしれないと思う有無(出典:ライフネット生命保険)
ここで紹介したほかにも面白いデータがあるので、是非、調査結果を見てほしいが、端的に言えるのは、肉食系、つまり恋愛に積極的であることの有利さだ。
例えば男性肉食系の有効恋愛求人倍率は、対女性草食系で3.60倍、対女性肉食系で1.60倍だ。人生が変わるというと大げさだが、「ダメモト」でもいいから、一歩踏み出して意思表示することで道が開ける確率がぐっと向上する。人生が変わるというと大げさだが、「ダメモト」でもいいから、一歩踏み出して意思表示することで道が開ける確率がぐっと向上する。
恋愛の心得は同時にセールスのコツ
筆者には草食系の男女に恋愛の手ほどきをするだけの知識も経験も(度胸も)ないので、最近のベストセラーをご紹介する。
渡辺淳一さんの『欲情の作法』(幻冬舎)には具体的なアドバイスが多々書かれている。要点をかいつまんでいうと、まず男性は、基本的にふられやすい役回りなので「二兎を追うな」ではなく、「四兎も五兎も追う」くらいが、精神的に余裕もでるしちょうど良く、大いに女性に興味を持ち、マメにアプローチを試みるべしと恋愛の大家は説く。しかし男女の生理的な感性は異なるので、男性は熱心であってもいいが「強引」であってはいけないとつづっている。
具体的な手法や心理の機微は、渡辺先生の本を読んでいただくしかないが、ついでだから、この本の「男性」と「女性」(女性が読んでも面白い本だが、男性の立場から書かれている)を、「営業マン」と「顧客」に置き換えても読んでみるといい。恋愛の心得が、同時にセールスのコツにもなっていることが分かる。40代以降の独身諸氏にも、大いに役立つはずだ。
読者諸兄諸姉も「あと一歩の積極性」を身につけて、恋愛でも、ビジネスでも大いに成果を挙げてほしい。
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