『THIS IS MARKETING』――マーケティングの新定義(本当のマーケティングとは?)

 

本書は、マーケティングの第一人者で、『パーミッション・マーケティング』でも有名なセス・ゴーディン氏のベストセラー著書。世界最大規模の組織/人材開発のカンファレンスである、ATD(Association for Talent Development)にてゴーディン氏のプレゼンを聞き、1万人以上の聴衆を1時間集中させる強いメッセージ性とエンターテイメント性に感銘を受け早速購入した。邦訳はまだ出ていないが、彼によると、これからのマーケティングが進む方向性――コンパスでたとえると真北を示しているのが本書だという。

彼がまず伝えたいとしているのは、自分たちが育ってきたような環境、つまり大きなマス「平均」があって、そこに向けて広告投資する世界はもう終わりだということ。ゴーディン氏は、自身で設立したダイレクトマーケティングの会社を30億円強でYahooに売却し、後にYahooのバイスプレジデントとして活躍したこともあり、その彼がここまで言うインパクトは大きい。

自社商品を売るための顧客群を探し、アテンションを引くための広告を作ったり、SEO対策をして見つけてもらえるようにしたり、スパムに近しいメールを送り続けたりするのは、もはや彼が意味するマーケティングではない。極端な言い方にも聞こえるが、要はマーケティングの定義を捉え直そうとしているのだ。

パーミッション・マーケティング:事前に了承を得た顧客に対してのみ販促活動を行うマーケティング手法。パーミッション(同意)こそが顧客とのつながりを強めライフタイムバリューを上げるというインターネットマーケティングの先駆けとなる考え方。

マーケティングとはChange ―より良く変えること

本書では、マーケティングとはChange――ストーリーを通じてより良く変えること、と定義している。そして、――Who can you help?(あなたは誰を助けられる?)、What’s it for?(何のため?)の重要性が強烈に繰り返されている。その典型的な1文としては以下だ。

Marketing is the generous act of helping others become who they seek to become.

(マーケティングは、人々がこうなりたいと思う誰かになるための手助けをする、なんとも気前の良い行為である。)

一方、このアプローチはシンプルだが、受け入れるのは簡単ではない。忍耐、共感、そして人々への敬意を必要とするためだ。しかし、これを辛抱強く行うことで、人はどうやって夢を見て、物事を決断して、行動するのかがわかるようになる。それを通じて、人がより良くなりたいと思う気持ちに寄り添い、手伝う方法が次第にわかるようになってくる。そうすると、あなたはマーケターとなれるだろう、とゴーディン氏は方向性を示している。

Changeを起こすための最初の鍵 ―The Smallest Viable Marketを見つける

それでは、どうやってChangeを起こすのか?本書では、5つのステージに分けて、その段階を追っている。詳細は本書を読んで頂ければと思うので省略するが、重要な点として挙げられているのはこうだ。

変化を起こしたければ、Tribe(民族)を理解し、文化を作ることから始める。そして、Seeking the smallest viable market(あなたのアイデアに共感してくれる人々、ビジネスとして成立するための最小実行単位を見出だす)――を行うのだ。最高の変化は意図を伴わずして生まれない。Intent=What is it for?を深く意味付けられる集団が小さくとも必要であるのだ。

それが見つけられた後は、その集団に対して、どうやってあなたの考えを広めるか?どうやってインパクトを創造するか?どうやって文化を醸成するか?というチャレンジをすることになるが、本書はその手がかりになるだろう。

これらを粘り強くやり続けた結果として、求めていたChangeが起き、その結果として他者から見つけ出してもらえるようになる、これがマーケティングである。この考えを、理想論に過ぎないと見るか、本気で取り組む価値があると見るか、本書は大きな投げかけをしている。

英語もシンプルで短く読みやすい。マーケターのみならず、起業を志す方、世の中に役立つサービスを開発したいと考えているビジネスリーダーにはぜひお勧めしたい。

『This is Marketing』
著者:Seth Godin 発売日:2018/11/15 価格:1791円(2019/8/8時点 発行元:Portfolio Penguin 

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