今回のコラムから、DAY3のコラムでご紹介した以下の論理的思考力を鍛える際に自らに投げかけたい3つの問いのうち、「その問いに対して自分はどう答えるのか?」と「なぜその答えなのか?」について考えたいと思います。
・答えを出すべき「問い」は何か?(考える目的を明確にする)
・その「問い」に対して自分はどう答えるのか?(主張を明確にする)
・なぜその答えなのか?(根拠を明確にする)
主張だけではなく、根拠もセットで考える
とある会社の営業部門の部長と課長の会話について考えてみましょう。
ある日、課長は部長から「君の課のAさんだけど、来年度はチームリーダーに昇格してもらいたいと思っているんだ。この件に関して、君の意見を聞かせてくれないか」と突然声を掛けられました。Aさんの日頃の努力を知っている課長としては、すかさず「はい。私もお願いしたいと思っておりました。ぜひ部長からも人事や役員の方々へ推薦をお願いします」と答えました。
すると、部長は「そうか。力強い返事だな。じゃあ、人事や役員に対して彼女の評価をどう伝えればよいかさっそく相談しよう。お昼を一緒に食べながら話そうか」と言いながら席を立ち、すでに上着を手に取っています。ランチの席に着くまでに、課長は自分の考えを整理して、部長に伝えなければなりません。
ここで課長がまず考えるべきことは何でしょうか。前回(DAY6)までのコラムで確認したように、私たちが何か物事を考える際に最初にやるべきことは、「ここで答えを出すべき問いは何か?」を確認することでしたね。上述の会話を踏まえると、「問い」は「Aさんを昇格させるべきか?」になるでしょう。当然、この「問い」に対する課長の答えは「YES」ですね。引き続き、2人の会話をみてみましょう。
社員食堂の席に着くと部長は、世間話もなく、さっそくAさんの話を始めました。
部長:Aさんが入社してもう丸5年になるんだな。配属当初から彼女は新人の中でも見込みがあると感じていたけれど、最近はとくに頑張っているみたいだね。
課長:そうなんですよ。自分なりの営業のやり方を見つけたみたいで、最近は表情に自信があふれていますよ。
部長:さて、チームリーダーに推薦するにあたって、Aさんについての君の評価を聞かせてもらおうか。
課長:あらためてですが、彼女をぜひチームリーダーに推薦いただければと思います。もっとも評価している点は、営業成績ですね。ご存知の通り、今年度も第3四半期まですべて期で目標を達成しています。扱っている商材のニーズが高まっているということもありますが、私がとくに注目しているのは、ターゲット別の訪問件数や成約率、取引金額といった営業プロセスにおけるKPIに関してしっかりと進捗管理を行い、すべて設定した目標をクリアしている点でして…(以下、略)。
部長:その点は私も高く評価しているよ。うちの営業活動では、重要なポイントだからね。他に君が評価している点はないのかな?
課長:加えて、お伝えしておきたい点は、人材育成についてです。ご存知の通り、今年私の課には2名の新人が入ってきました。そのうちの1人であるBさんは彼女が育成担当なのですが、Bさんの営業成績も絶好調です。これはAさんの丁寧なサポートがあってこそだと思っています。具体的には、Bさんは配属早々に大きなミスをして、自信をなくしていたのですが…(以下、略)。
部長:素晴らしいサポートだね。リーダーは、自分の成果だけ気にするようで務まらないからな。他に役員や人事に伝えておくべき点はあるかな?
課長:成長意欲が高い点ですね。入社当初から“いつか行ってみたい”と聞いていたのですが、来春からビジネススクールに通い始めることを決めたようです。MBAを取りたいそうですよ。
部長:それは将来が楽しみだな。この点も、しっかりと上に伝えておくよ。君の考えはよくわかった。私の見立てとも一致しているので、人事と役員には強力にプッシュしておくよ。
部長に声を掛けられてからあまり時間がなかったにも関わらず、課長は自分の意見をうまくまとめたと言えるでしょう。では、ここであらためて課長が部長に伝えた内容を確認してみましょう。課長の発言は以下のようなチャートに整理できます。
このチャートから押さえておいてもらいたいことは、自分の考えを周囲の人(=聞き手)に理解、納得してもらった上で、自分が望む行動を取ってもらいたい場合には、自分の意見(主張)とそれを支えるための理由(根拠)を常にセットで伝える必要があるということです。また、今回の会話では省略しましたが、根拠を補足すための具体的な事例が追加されるとより説得力が増すでしょう。
「言われてみれば当たり前」のことを徹底してやり続ける
「主張に対して根拠が必要」ということは、言われてみれば当たり前のことなのですが、実際のコミュニケーションにおいては曖昧になっていることが多々あります。自分の意見(主張)を言ったら、必ず「なぜならば…」「例えば…」という言葉を続ける癖をつけましょう。
ロジカルなコミュニケーションできる人と、そうでない人の違いは、こうした“言われてみれば当たり前”のことを意識し続けているかどうかの違いだけなのです。常に意識するためにやるべきことは、ひとつしかありません。それは「反復トレーニング」です。愚直に「なぜならば」「例えば」を使い続けましょう。
いっぽうで、頭の中に浮かんでくることを適当に、
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