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『衰退産業でも稼げます「代替わりイノベーション」のセオリー』――地方再生の鍵は衰退産業にあり!

投稿日:2019/06/01更新日:2020/01/24

地方再生、地方創生などという言葉が言われて久しいものがあります。人口減が進む日本において、首都圏を始めとする都市部への集中はマクロレベルでの効率性を考えればある程度やむを得ないという意見もありますが、だからと言って地方の非都市部が衰退してもいいということにはならないでしょう。やはり活力ある地方と都市部がバランス良く存在してこそ、日本という国はより豊かになる可能性が高いと言えます。

しかし、現実の地方再生を見ると苦戦しているのが現状です。町おこしイベントの開催や「ゆるキャラ」の開発、売り込みなどはありますが、一時的な話題になっても持続しないケースが多くなっています。いろいろな問題はあるのでしょうが、結局はしっかりと儲けられる企業が生まれ、雇用を創出しないと地方はどんどん衰退してしまうということに尽きます。私も地域の青年会議所などで講演や議論をしたことがありますが、「結局は地元で新しい価値創造ができる状態にならないと、衰退の一途をたどる」というのが一致した意見です。

では、その新しい価値創造活動として、手っ取り早いのは何でしょうか。ベンチャー企業が生まれ、全く新しい産業を興すことが本来は望ましいのでしょうが、それはハードルが高いものです。そこで注目されるのが、すでに長く存在する、生産性の低い産業をテコ入れすることです。具体的には旅館業や農業などです。これらの産業は、人間が生活を営む上で本質的に必要であり、需要は簡単には消えません。競争の変数(軸)が多い「分散型ビジネス」あるいは「特化型ビジネス」の側面が多く見られ、やり方次第では十分に価値創出ができるのです。また、生産性が低いということは伸び代が大きいということでもあります。これは、言われてみれば当たり前ですが、見落とされがちな視点なのです。

本書も、まさにこの観点に立っています。筆者は米国ハーバード・ビジネス・スクールで学んだやり手のビジネスウーマンですが、2002年に長野県に移住し、そこで地方の現状に触れる中で、産業の活性化のヒントを得たといいます。中でも、特に4つの産業に着目しています。商店、旅館、農業、伝統産業です。そしてそれぞれ4つの事例、計16の事例を紹介することで、地方の衰退産業が復活する上でのヒントを提示しています。

また、筆者独自のユニークな点に「代替わり」への着目があります。先述の4つの産業の多くは家族経営のビジネス(ファミリービジネス)です。小規模なファミリービジネスでは、事業承継者がそもそもいないという事態に直面しやすいものです。とは言え、親子の縁はあるので何かしらの関心やこだわりがあるというのが一般的です。事業承継のタイミングは、「事を起こす」チャンスでもあります。本書で触れられているあるケースでも「クーデター」的な奪権によって先代の力を弱め、承継者の独自性を打ち出した例なども紹介されています。先代までの知恵やのれんが残る中で、承継者が生産性向上のための新しい取り組みを行う仕組みは、小さなイノベーションを起こすための良い土壌と言えるでしょう。

さて、昔から地方におけるイノベーションを支えるのは「若者、バカ者、よそ者」などと言われてきました。本書で紹介されている例も、概ねそれが当てはまります。事業承継者だけではなく、その配偶者が活躍する例も多くなっています。やはり斬新な視点やしがらみに縛られない発想などが、それまでの常識を覆し、新しい価値創造に結び付きやすいのです。また、都市部の大企業で磨いたスキル(法人営業、海外マーケティング、ウェブ作成など)が地方の地場産業ではさらに大きな価値を持つ可能性があるというのも大事な指摘です。

新しいイノベーションを起こしつつも、地域からの支援も受けなくてはならないという点もポイントです。地元で嫌われては商売はできない。斬新な試みをしながらも、無駄に敵を作らない、あるいは徐々に味方を増やしていくという視点は非常に重要です。世の中は捨てたものではありません。正しく頑張っている人間には手を差し伸べる人間がいるものだという事実は、まさに同じ立場に立つ人間を勇気づけるでしょう。

都市部の人間にとってもこうした地方のイノベーションは魅力的な場です。全員が都市部の雑踏や猥雑さが好きなわけではありません。その地方ならではの強みを再発見し、面白い事業の機会を作れれば、人はやってくるのです。

最後に、すべての現場には固有の事情というものがあります。共通項の高いセオリーはセオリーとして理解しつつ、自分の置かれた立場独自の固有性をいかに解決あるいは利用するかも読者には考えていただきたいと思います。

 

衰退産業でも稼げます 「代替わりイノベーション」のセオリー
藻谷ゆかり(著)、1620円

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