先行きの見えないVUCAの時代。従来の問題解決型のスタイルでは解決が難しい課題に直面している方も、多いことでしょう。そこで、このような時代に求められる「デザインシンキング」について、グロービス経営大学院でデザイン思考やクリエイティビティに関するクラスを担当し、グロービス学び放題では「デザインシンキング~事例とともに考える~」に出演する、株式会社Naked Bulbの長尾景紀氏に聞きました。
「デザインシンキング」とは何か
本屋に行けばたくさんのビジネス書が並んでいます。しかしそれだけでは解決できない課題がある…。では、一体何が必要なのでしょうか?
「ビジネス書で語られているのは、仕事のベースとなるビジネススキルについての話がほとんど。ただ現在のビジネスシーンでは、プラスアルファの価値となるデザインシンキングが必要なんです。
デザインシンキングとは、人間の行動や欲求、心理を軸に置き、そこから潜在的なニーズを考えたり、導き出したりするスタイルをよりよくまとめたものです。このデザインシンキングはどの職種においても必要なスキルだと思います。そして従来型のビジネススキルだけでは解決が難しい問題にも対処することができます」
デザインに必要な考え方と手法を使い、問題を解決する方法=デザインシンキング。生活者の興味や関心が多様化した現在にこそ必要とされる理由について迫っていきます。
デザインシンキング、やるべきこと/やってはいけないこと
ビジネスシーンで注目を集めるデザインシンキングは、特別な技能ではなく、普段の生活にも応用できる思考法のひとつ。もちろん「学び方」や「使い方」があります。
「デザインシンキングのプロセスとしては、ベースとなる『5つのステップ』(①共感→②問題定義→③発想→④施策→⑤検証)があります。中でも最も重要なのが、最初のステップである『顧客に徹底的に共感する』です。まずは材料や情報を徹底的に集め、業界やプロダクトの周辺サービスなどを理解することから始めるんです」
顧客の人格(興味関心・行動特性など)に対する共感をベースに、プロダクトやサービスを使う人としての観察を行うことで、ビジネススキルをベースとしたロジカルな分析だけではたどり着けない、感性や行動に紐づいた本当に解決すべき「欲求や悩み」が課題として設定されます。そしてその課題を絞り込んだら、プロトタイプを作ってフィードバックをもらって...という流れがスムーズに生まれるそう。
「この流れを理解・共感から始めるのが大事なところで、よくダブルダイヤモンドというのですが、アイデアを広げてその後絞り込んでまたもう1回広げるというプロセスを繰り返し考えていくアプローチを取ります。
砂金取りに例えると、ザルにいれる砂が少なかったら取れる金の数は少なくなります。一方で大盛りの砂の中だと必然的に取れる金の数は増えます。1回広げることは無駄なやり方に思えるかもしれないけれど、アイデアやオプションの量はたくさんあったほうがいいんです」
では逆に、デザインシンキングの実践の妨げになるような行動はあるのでしょうか。
「基本はポジティブに。とくに広げるときには『Yes, but…』ではなく『Yes, and…』、それがアリならこれもアリだよねという考え方が大事です。後は『Why』よりも『How』。どうやって実現しよう、と考えることが重要ですね」
実際に長尾氏が担当するデザインシンキングのセッションでは、お菓子やコーヒーを置いたり、お香を炊くなど、環境面でも意見を広げやすい雰囲気づくりをしているそう。アイデアを広げるときには、伝えたい内容を「~的な」「~な感じ」「~みたいな」の様なゆるい言葉を使う方が広がっていくといいます。
好奇心が、デザインシンキング最大の資質
ところで、長尾氏がデザインシンキングと出会ったのは、ビジネスシーンではなく、なんと雑貨屋だったとか。
「当時経営していたベンチャーで、壁にぶつかっていたんです。機能を潰さないようにプロダクトをどうデザインするか、といったことを考えていました。そんなとき、たまたまちょっとおしゃれな雑貨屋に入ったら、IDEO(アメリカのデザインコンサルティング企業)の本が置いてあったんです。そして、手にとって読み始めたら面白かった。まさに自分が壁にぶつかっていたタスクが目の前にあり、そこで読みながら使ってを繰り返していきました」
では、デザインシンキングに必要な素質・能力とは、どのようなものなのでしょう。
「まずは好奇心が大切です。人やモノ、サービスに対して関心を持つためには、好奇心があればあるほどいいですね。たとえば相手に理解しやすいような事例を話すと、自然と会話が成り立ってきます。人間の理解の仕方をひっくるめていうと好奇心という話だと思うんです。色々なことに興味を持つ。そしてどこかで使うかもしれないなと思って聞いてみるというのが、デザインシンキングと出会う前からやっていたことですね」
ビジネスとデザインを掛け合わせることの大切さ
ところで、グロービスでは「テクノベート(テクノロジー×イノベーションの造語)」を掲げ、クリエイティビティやデザインシンキングなど、新しい分野のコンテンツを提供しています。
「学生からは、ビジネススキルに加えてデザインシンキングのような考え方を知ったことで、『掛け合わせで仕事をしなきゃいけないことに気づけてよかったです』という反応が結構あります。私からはさらに、『まずはやってみることが重要だよ』と伝えています」
机上やPCの中だけで考えるのではなくて、プロトタイプを作り人に見せてみて、そこで得られた反応を反映し、実装するというサイクルを回していく――。そうやって実際にやってみる人は案外少ないもの。だからこそ本当にやった人は、適切な解決法にたどり着く確率を上げることができます。今持っている課題を論点として盛り込みながら実践を繰り返すことが、デザインシンキングでいうところの「人の観察をしながら人間中心で考える」ということの応用なのです。
そんなデザインシンキングの種は、普段の生活にも転がっています。気づきの練習や観察の練習を繰り返すことで、普段は気づかなかったことを言語化できるようになるのです。
最後にあらためて長尾氏が語ったのは、デザインシンキング単体だけで大きな価値を生むわけではなく、「ビジネススキル」のベースがあった上でデザインシンキングを行うことの重要性でした。
「デザインシンキングだけだと、どうしてもデザイン寄りになってしまいます。クリティカル・シンキングや戦略の知識など、ビジネスの知識がないと効果が出ない。その両方を組み合わせて使うことで、本当の価値が発揮できるのです」
現在のビジネススキルだけは解決が難しい課題を抱えている方、グロービス学び放題の「デザインシンキング」コースをのぞいてみてはいかがでしょうか。ビジネスの現場で抱えているもやもやを解決するヒントになるかもしれません。
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