アイデアを広げてコンセプトを創り上げる方法とは? 

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電球

前回は、Vision Makingの方法として「そもそも」を考えることをお伝えしました。創りたい世界観が描けたら、アイデアを広げ、コンセプトを創り上げるフェーズに入ります。

アイデアは既存の要素の組み合わせ

アイデアのつくり方は、ビジネスや企画を考えたりする際に多くの方が高い関心を持つテーマなので世の中には様々な書籍や方法が溢れています。しかし、原理原則をシンプルに言ってしまえば、以下の1点に集約されます。

「アイデアとは『既存の要素の新しい組み合わせ』以外の何ものでもない」

これは『A Technique for Producing Ideas』(邦題『アイデアのつくり方』James Webb Young)に書かれているフレーズです。書評を書いているので詳細はそちらに譲りますが、1940年初版にもかかわらず、現在も売れ続けている本です。流行り廃りなく有効な法則であり、まさしく原理原則と言える考え方と言えるでしょう。

アイデアゾーンは、情報収集→咀嚼→組み合わせ→アイデアの発見→テストというプロセスを踏みます。情報収集では、徹底的に関連業界や市場・顧客に関する情報をインプットします。集めた情報を多面的に眺めることが必要です。その上で、新たな切り口がないか組み合わせの試行錯誤をします。ダイヤルロックのようにカチッと合わさる組み合わせを探し当てるのです。

アイデアを発見するタイミングについては、よく「夜中に天から降りてきた」「シャワーを浴びていてふと思いついた」など、まったく別のことを行っている際に突然思いついたようなコメントを聞くことがあります。しかし、突然そんなことが起こるわけはなく、多くのケースでは「降りてきた」「思いついた」前段階で、本人は「ずっとそのことを考え続けている」のです。アイデア検討段階に入る前のVision(創りたい世界観)について考え続けているからこそ、他の要素との組み合わせが起こり、アイデアが発見されるのです。

アイデアはサイエンスである

一部の天才が創り出す世界は「アート」として存在しますが、アートのつくり方は本人でも説明することができません。一方、アイデアや発想力は「サイエンス」であり、凡人でも方法さえ習得すればある程度はできてしまうと考えましょう。この原理原則に従えば、アイデアを増やすためにやることは2つの行為に絞られます。1つは、要素を増やすこと、2つ目は組み合わせのパターンを増やすこと、です。

アイデアと同様に扱われる言葉として、センスや感性がありますが、これも同様です。つまり「自分は感性やセンスがないのでちょっと…」と言ってしまうのは、「自分は努力していません」と言っているようなものです。アイデアも感性もセンスも結局は知識の積み重ねでしかありません。「あいうえお」しか知らない人より50音全て知っている人の方が文章は書けますし、多くの映画を見たり調べたりしている人の方が映画のセンスは良いでしょうし映画監督になれる可能性は上がっていくでしょう。

特に新規事業を創ろうとする場合、本業以外の領域に踏み出していくことが多いです。その業界は詳しくないので、と尻込みするのではなく、専門書の5冊でも読んでみてください。センスは良くなるはずです。

また、アイデアは「顧客のニーズ」から探索することが先で、その後に自社のシーズとフィットさせるべき、と言われることがあります。多くの場合はその通りでしょうが、シーズが先に立つことがあっても構いません。なぜならば、シーズ起点であれば、既にその領域に関する知見があり、センスも良いためです。但し、重要なことは、必ずシーズ領域以外の視点を組み合わせることです。業界の前提や常識に囚われないユニークネスを発揮するためには、シーズに対して他の要素を組み合わせましょう。

コンセプトとは、誰にどんな価値を提供するかを見極めること

コンセプトゾーンは、大別すると2つの方法が有効です。1つは、顧客と提供価値を特定することです。「そのビジネスがターゲットとしているのは、どのようなニーズ(あるいは、片付けたい用事“Jobs to be done”)を持つ顧客なのか?」「その顧客に対してどのような価値を提供するのか?」を決めましょう。これは、クレイトン・クリステンセンが提唱しているCVP(customer value proposition)という考え方です。

2つめは、「新たな常識をつくるためのサーチライトを照らす」という考え方です。いま、「正解」と言われていることは「いまの常識」でしかありません。これから創る新たなビジネスは正解(いまの常識)を追い求めていても創造できません。つまり、これまで「常識=正解」として照らされていたサーチライトをずらし、新たな常識部分を照らし、新たな正解領域を作ることと言えます。こういった、新しい常識を追求していく活動を企業ではイノベーションと呼ぶのでしょう。こちらは、『コンセプトのつくり方』という書籍の書評を書いているので詳細は譲ります。

図1

ビジネスの本質をシンプルに伝える

スタートアップの経営者がエレベーターで投資家に出くわした際に短時間(30秒程度)で自身のビジネスを伝え、興味を持ってもらう必要がある、という背景から、新規事業を短時間でプレゼンすることを「エレベーター(EV)ピッチ」と言います。このEVピッチで伝えなければならないのが、前述したCVP即ち、「誰に、どんな価値を提供する事業なのか」というコンセプトをシンプルに伝えきることです。

実際に筆者も何度か、EVで投資家に出くわした際にトライしたことがありますが、EVに乗っている時間は本当に短いです。その短時間で、「再度あってもう少し話が聞きたい」を思わせるためには、だらだらと背景や問題意識を語っていても伝わりません。要は、「この人をこんな方法でHappyにする」ということを簡潔に伝え、「後日詳細をお伝えに伺ってもよろしいですか?」と問うのです。その回答次第で、自分のピッチが刺さったのかがよく分かります。従い、いつの日か突然訪れるEVピッチに対して、常に「顧客と提供価値」を意識することで準備をしておくことが大事です。

ビジネスデザインロードマップを意識する意味

このように、要素を組み合わせながらアイデアを広げ、コンセプトで結晶化する活動を行っていきますが、実際のところは、アイデアとコンセプトゾーンは、独立して行うものではなく、双方のプロセスを意識しながら、行き来することが必要です。

直感的なアイデアやコンセプトが先にあり、その後に外部環境の分析を行いながらビジョンメイキングするというケースもあるでしょう。その場合は「ビジョンを最初に考えなければ・・」と無理をする必要はなく、自然とアイデアからビジネス検討に入っていただくのが良いでしょう。そして、「なぜそのアイデアが良いと思ったのか?」「そもそもなぜそのアイデアが出てきたのか?」と遡ってみると、直感的なアイデアに見えて、自身の頭の中では、創りたい世界観やあるべき姿、取り組みたい領域など、「ビジョン」を意識していたことが分かります。

図2

ビジネスデザインロードマップを使う目的は、「アイデアをアイデアのまま終わらせずビジネスとして成立する形に仕上げること」にあります。直感は説明しにくく、論理は説明しやすい。直感としてのアイデアだけで突き進むのではなく、直感を論理的に説明することがビジネスとして成立させる要件でもあります。論理を組み立てるために、ロードマップの各ゾーンを踏んでおく必要があるのです。特にコンセプトゾーンまでは順番を意識しすぎることなく、各ゾーンをしっかり検討し自信を持って話せるように、時間をかけて行き来(議論)をすることをお奨めします。確固としたコンセプトが出来上がると、その先の視界が一気に拓けます。以降のステップであるプロトタイプやビジネスモデル、戦略やストーリーを考えるフェーズでやるべきことは自ずと見えてきます。

アイデアがコンセプトとしてまとまった後は、その仮説を「見える化=プロトタイプ」し、検証を行っていきます。

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