今年9月発売の『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略』から「焦点を絞り切れているか」を紹介します。
前回ご紹介したように、デジタル変革は大きく4つのフェーズに切り分けることができます。まず必要なのは課題を絞り込むことであり、その次に必要になるのは投資の焦点を絞ることです。しかし、多くの組織ではこの焦点がぼんやりしてしまったり、社内でうまく調整ができなかったり、あるいはそもそも不適切であるがゆえに、デジタル変革が失敗に終わってしまいます。どのような企業であれ、経営資源は有限ですし、時間も限られています。競合に先んじるためにも、組織の意識を合わせつつ、焦点を絞って賢く投資することが必要不可欠です。そのためのチェックリストもありますので、これを活用しながらデジタル変革を進めると成功の確率が増していきます。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
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焦点を絞り切れているか
デジタル変革における成功は、何をするかにかかっているが、何をしないかも同じくらい重要だ。ビジネスをデジタル化する機会が多く存在する状況では、最新のきらびやかなものに気を取られてしまいがちだ。しかし、実際に戦略に本腰を入れ、資金を投じ、生身の人々を巻き込む段になると、ビジネスに真の価値をもたらすのは、デジタル変革に向けて焦点を絞ったアプローチだけだ。
強みを生かそう。既存の資産と能力を活用してロードマップを構築しよう。変革を導き収益を最大化するため、ガバナンスの仕組みを構築しよう。資金確保のモデルを明確にしよう。これらのステップは、ビジョンを行動に変えるために不可欠だ。次のステップは、組織を動員して実現することだ。
まとめると、今日のデジタルの世界では、投資の焦点を絞ることに関して次のような特徴が見られる。今日では、デジタルの変化の速度に対応するために敏しょう性の高い変革ロードマップを設計する必要がある。チーフ・デジタル・オフィサーを任命する必要があるかもしれない。マーケティングなど、さまざまな部門がデジタル開発に独自で資金を投じようとするため、他のテクノロジー投資に比べると調整が重要になっている。
あなたの組織は投資の焦点をうまく絞れているか?
表は、投資の焦点を絞る方法を3つのステップにまとめたものだ。各ステップの設問を見て、あなたの会社の進捗状況を1~7までの点数(1=まったくそうではない、4=普通、7=まったくそのとおり)で正直に評価してみてほしい。そして、3つのステップのそれぞれについて、合計点数を計算してみよう。
各ステップで、デジタルマスターのレベルに達するためには何点が必要かを示した。また、今すぐ行動にとりかかって、状況を改善すべきと判断できる点数も示した。もし、あなたの組織の点数がデジタルマスターの範囲内であれば、次のステップに進んでよい。もし点数が中程度の範囲にある場合は、その理由についてよく考えよう。投資の焦点を絞る段階で、まだ取り組まなければならないことがいくつかあるはずだ。もし点数がそれよりも低いのであれば、今こそ是正措置を取らなければならない。点数がかなり低いのであれば、今すぐデジタル変革のための投資プロセスについて、根本的に再考することをお勧めする。
(本項担当翻訳者:林恭子 グロービス経営大学院教員、経営管理本部長)
『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略』
ジョージ・ウェスターマン、ディディエ・ボネ、アンドリュー・マカフィー (著)、グロービス (翻訳)、
ダイヤモンド社、3,024円