プレゼンもコピーも人を動かしてなんぼ【小西利行氏×伊藤羊一氏】 

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1分で話せ』の著者であり、企業でプレゼン指導をすることも多い伊藤羊一氏が、コピーライター兼クリエイティブディレクターとしてCM制作から都市開発まで手掛ける小西利行氏にインタビュー。人を動かす極意を伺いました。

小西利行

伊藤:今日は小西さんの頭の中をのぞかせてもらい、伝える方法をひも解いていければと思います。

小西:伊藤さんの本を読んでいたら、全部が似ているわけですよ。「コピーって何?」って聞かれたときに、僕が学生に向けてずっと言っていたのは、「コピーは矢印。AからBに人を動かすための言葉がコピーで、動かなかったらコピーじゃない」と言ってますし。

伊藤:まさに、プレゼンも同じです。小西さんは、「伊右衛門」や「プレミアムモルツ」など様々な広告に携わっていましたよね。コピーライターは「人を動かすための言葉」をつくる職業ということですが、実際はどういう仕事をされているのでしょう?

小西:15年ぐらい前まで、コピーライターは技術職でした。ポスターやテレビCMにコピーを1行、芸術作品みたいに書く感じですね。ところが、10年ぐらい前からCMやプロモーション、PR、イベントまで、人が動くためのものは一気に考えなきゃダメだよね、となった。その真ん中にコンセプトを置かなきゃいけなくて、それを最終決断するのがクリエイティブディレクターになったんです。そして、それを担うコピーライターが増えた。

例えば、佐藤可士和さんや大貫卓也さんはアートディレクター的なクリエイティブディレクターです。だから、「絵」や「CI」をつくる。秋元康さんは「音楽」から入る。僕の場合は「言葉」から入ります。ある専門領域に足を置きながらいろんなことにピボットし、世の中を動かそうとする人がクリエイティブディレクターだと思います。

言葉で経営をデザインする

小西:実は、5年ぐらい前まで、僕は自分がやっている仕事にあまり価値がないと思っていました。そこでそのことを色んな人に言ってみたんです。「俺、自信がない」って(笑)。そうしたら、一緒に仕事をしている経営層の人たちから、「言葉はもはや経営のデザインだから、一番価値があるじゃん」「キーワードをつくることで、モノが売れたり、会社の運営がうまくいったりする。そんなレベルの高いことをやっているのに、なぜ理解できていない?」って言われて。

そう言われて見回してみると、経営視点で「人が動く言葉を書く」役割が世の中にいないと気づきました。コピーライターって、受け手がどう感じるのかから言葉を書いているから、経営者とは視点が逆なんです。だから「受け手側から見るとあなたの言っていることはこう思われる。こうする方がいい」って経営者に指摘ができる。そういう役職は他にないから、この仕事、確かに価値あるなと思ったんですよ。

そして、世界中で滞っている色んな物事がうまく言葉化されてないなとも気づいた。だったらそれを明確に言葉のディレクションをして、世の中をいい方向へ進めることができるんじゃないかって、思い始めたんです。

伊藤:確かに、世の中はフワついた言葉であふれていますよね。

小西:たとえば、来年1月にオープンする京都のホテル「THE THOUSAND KYOTO」は明確にそこを意識してやりました。「みんなが参加できる、モチベートされる、目標になるような言葉をつくろう」と。このホテルには経営者、建築家、飲食に携わる人、内装をする人など、多くの人が関わっているんですけど、全員、僕らが書いた言葉を起点に行動してくれているんです。正直、とてもいいホテルになりそうです。

同様に、3年ぐらい前から関わっている「プレミアムフライデー」でも、初期の段階からコンセプト開発やコミュニケーションデザインを行い、働き方改革と景気刺激の動きをつくってきました。また最近では、2020年ドバイ国際博覧会日本館クリエイティブアドバイザーに就任し、コンセプト開発をやっています。違う業種、国まで仕事が広がってきている感じですね。

最も人が動きやすいキーワードを作る

伊藤羊一

伊藤: まさに、事業やムーブメントの「コンセプト」そのものを作っているわけですね。

小西:そうですね。先輩の例を挙げると、アートディレクターの佐藤可士和さんは明快なコンセプターで、最初に言葉で定義するんです。例えば、「ふじようちえん」。「子どもたちが遊び回っている良い環境をつくりたい」というビジョンを考えたら、彼は「全てが遊び場になる幼稚園」をつくりたいって言うんです。「全てが遊び場になるって何?屋根も?机も?」ってなるじゃないですか。そうして、建築家や遊具のメーカーからアイデアがバーッと集まる。コンセプトって、こんなふうに、その事業に参加する人全てが自発的に動けるようになるキーワードだと思うんです。

他にも、帝国ホテルには「さすが帝国ホテル」という言葉があって、全部門の人の行動指針になっています。これも十分なコンセプトです。ベッドメイクする人が「さすが帝国ホテルって思われるかな?」って自問しながらやると、ちょっとクオリティが上がるかもしれない。そうして、「さすが帝国ホテル」って言われるたびに、さらに誇りを持って自発的に行動するようになる。

コンセプト

伊藤:ビジョンをただ共有すれば良いんじゃなくて、その軸となるコンセプトも必要だと。

小西:はい。まずビジョンを形にできない人たちも意外なほどたくさんいますから、ビジョンを明確な言葉として規定するのも僕たちの仕事です。でも意識しなきゃいけないのは、例えば、経営者が掲げる高い理想やビジョンに対して、社員や関係者が「?」となっているケースが多いということ。なぜかといえば、彼らにビジョンを説明しても「関係ない」とか「どうやってやるの?」と思われるからです。だから彼らがビジョンに向けて動き出すための、わかりやすい行動ワードが必要になる。それがコンセプトだと思うんです。

2006年に手がけた越谷のイオンレイクタウンの仕事では、当初「日本最大のショッピングセンター」というビジョンがありましたが、僕が参加したあと、当時はまだ新しかった「エコ」という言葉を一文字だけ付けて、「日本最大のエコショッピングセンター」をビジョンに掲げました。

でも、これだと関わってる人が何をやったらよいか分からない。そこで「人と自然に心地いい」ってコンセプトをつくったんです。そして、全事業者、関係者に「皆さんのお店や施設を、人と自然に心地いいようにしてください」ってお願いしました。そうするとコーヒーショップは「緑をいつもより多くして心地よくします」、施設側は「館内照明を若干暗くして、自然光が入るようにしてみます」と動いてくれた。正直、嬉しかったですね。

もちろん、このコピーでは広告賞なんかは100%獲れません。でも、人は動くんです。プレゼンも同じですよね。綺麗な言葉は必要ないし、格好良い言葉も必要ない。人が一番動きやすいキーワードを提示することが、重要だと思うんです。

相手の立場に立つ

伊藤:まさに、相手を動かさないことには意味がない。

小西:僕は常に、答えは相手側にあると思っています。例えば、プレゼンで相手に想いを伝えたいなら、「今あの人は何を思っているのか?」「何を言われたら動くのか?」って一生懸命考えますよね?施設開発でも広告でも、必ず伝えたい相手の立場になって考えるんです。この「話す相手の立場に立ってその人たちが何を考えているのか知ろうとする」こと自体が、コンセプトをつくる一番のカギだと思います。

伊藤:ビジョンそのものが動きやすい形なっている場合もあるんでしょうね。

小西:それもありますね。例えばアップルの“Think different”。あれは世の中の人から社内の人まで動けるコンセプトなんですよね。社内の企画会議でも「これ“different”じゃないじゃん。真似じゃん」とか「“think”もしてないじゃん」と言える。しかも正しい生き方のビジョンにもなってる。「みんなでこっちに動いていこうぜ」と示しながら、行動の基準にもなる奇跡的な例です。

すごい会社にはすごいビジョンやコンセプトがある。例えばサントリーさんは全員が「やってみなはれ」って言うんですよ。これって人が動く指針になってる。完全なコンセプトです。たとえ失敗しても「やってみなはれって言ったじゃないですか」って。だからサントリーさんからは画期的なことがいっぱい生まれるんです。トヨタも「現地現物主義」とか、「なぜなぜ5回」とか、一つひとつがコンセプトになっていて、全員が復唱することで成長してきたのでしょう。

伊藤:「ここまでがコンセプトで、ここから先は違う」じゃなくて、みんなが動く礎になっていればいいと。ちなみに、僕がやっているYahoo!アカデミアは「Free, Flat, Fun」を標榜しているんですよ。「フリーな、過去に囚われないプログラムをつくっていこう」「あらゆる人がフラットに集える環境をつくろう」「楽しい」と。これはコンセプトっぽいですね。

小西:はい。素敵なコンセプトです(笑)。例えば伊藤さんから「コニタン、何か講義やってよ」と言われたとすると「Free, Flat, Funだから、こういうやり方がいいかな」って考えられるでしょ。だからいいコンセプト。これは伊藤さんが参加者の視点からも見ているから考えられたんだと思います。

同様に、経営者の中には、経営側と働く側の視点を両方持っている人がたまにいます。孫正義さんも明らかに持っていると思います。だからみんな「めちゃくちゃ言うな」って思いつつ、「でも動いてみたい気がする」となる。つまり参加者側から見ても、方向性が見えているから乗りやすいんですよ。

伊藤:やはり、「相手の立場にたって考える」ということですよね。

小西:そうです。そこが一番重要だと思います。そのためにも、相手が誰なのかっていうのは明確に想像したほうがいい。経営層なのか、部長なのか、一般社員の方なのかで全然違う。「自分の思いを伝えたい!」と思い過ぎている人たちはそこを見失うんですよね、「大きな声で色んな人に届ければいい」って。でもそれじゃ伝わらない。僕は、全てのプレゼンテーションと全ての表現の中でいったん立ち止まって「これで伝わる?」って思うようにしてます。そのためには相手を想像することが必要なんです。

伊藤:もはや、プロポーズを考えるようなもんであると。ありがとうございます。

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