リーダーは自問で自分を追い込み、高めよ

リーダー『自問力のリーダーシップ』から「行動を支える気構えを、自ら陶冶するための自問」を紹介します。

リーダーがリーダーらしく行動するためには、自問によって自らの気構えを正したり、鼓舞することが有効です。理想論としては、そうした自問すらなく自然体でリーダーシップが発揮できればいいのでしょうが、それができる人は稀です。やはり折に触れて、自分に問いかけ、自らのリーダーシップ発揮度合いを確認するとともに、自分自身を叱咤激励し、プレッシャーをかけないと、人間はどうしても最高の実力が出せないのです。そうした自問にはさまざまなものがありますが、古くから使われているものには時間を超えてきた本質が詰まっています。自分にあったものを選んで活用してみましょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

行動を支える気構えを、自ら陶冶するための自問

「リーダーは、メンバーが上に対して何でも率直に言える組織風土を醸成すべき」、あるいは「リーダーの非をいさめることができる諫言の士を持て」などと言われます。まったく正論ですが、実際には難しいものです。職責が高くなるほど、耳に痛い厳しいことを指摘してくれる人は少なくなります。だからこそ、リーダーは、自らを律し、陥りやすい失敗を回避する手立てを自分自身で考えておく必要があるのです。自らを省みるために、以下の「五省」が有効でしょう。

五省

リーダーが自分自身を省み、求められる役割を全うしているか確認するうえで大事なスタンスは何でしょうか。私は、「やっているつもり」というレベルで安易に満足せず、常に「本気でそう言えるか、本当にそうか」と自問し、自らを厳しく律することだと思います。自律自省、克己、修身などと言うと、士官学校の訓練を彷彿とさせるかもしれません。

個人的に気に入っており、活用している自問の言葉に、「五省」があります。これは、旧日本海軍の将校を養成した広島県江田島の海軍兵学校で、生徒が毎朝唱えたものです。

一、至誠に悖(もと)るなかりしか
二、言行に恥ずるなかりしか
三、気力に缺(か)くるなかりしか
四、努力に憾(うら)みなかりしか
五、不精に亘(わた)るなかりしか

五省には、第二次世界大戦後に日本を占領したアメリカ海軍の幹部が、その精神に感銘を受け、「FIVE REFRECTIONS」として英訳し、アナポリスの海軍兵学校に持ち帰ったという逸話もあります。時代に朽ちない、あるいは場所や文化を問わない普遍性がそこにあります。

今日のリーダーの自問にも、五省の考え方、スタンスは十分応用できます。以下に、私なりの自問を、「現代版五省」として整理しました。この自問は、とりわけ、周囲・メンバーとの関係性におけるリーダー行動やスタンスについて、常に姿勢を正すことを目的にしています。

 

五省

 

一、至誠に悖(もと)るなかりしか:真心をもって誠実に人(部下)や事にあたっているか
自分は部下の成長を心から望み、それにふさわしい成長機会をつくる意思があるのか。部下の本音を、心底聞きたいと思っているのか。

二、言行に恥ずるなかりしか:リーダーとしてふさわしい言動をとり、言行を一致させているか
部下にチャレンジを求め、同時に自らは範を垂れているか、挑戦しているか。

三、気力に缺(か)くるなかりしか:強い精神力をもって立ち向かうべきものに向き合っているか、逃げていないか
自らを安易なところに置いていないか、楽をしようとしていないか。自分が果たすべき本当の役割を考え抜いているか。思い切って後進に任せ、自分はより高い次元の成果に立ち向かっているか。

四、努力に憾(うら)みなかりしか:課題を乗り越えるべく骨を折り、本気で汗をかいているか
伝えることの本当の難しさを心得ているか。伝えることに本気で熱心に取り組んでいるか。

五、不精に亘(わた)るなかりしか:小事を疎かにしていないか
伝えるべきを、しっかりと言葉にすることをさぼっていないか、億劫がっていないか。

(本項担当執筆者:鎌田英治 グロービス経営大学院教員)

『自問力のリーダーシップ』
鎌田英治(著)、ダイヤモンド社
1,728円

RELATED CONTENTS