『自問力のリーダーシップ』から「さまざまなリーダーシップ」を紹介します。
リーダーシップ論は、過去から現在に至るまで、さまざまなタイプ、切り口(フォーカスするポイント)のものが研究者や実務家によって提唱されています。これらは、必ずしもあらゆるシーン、あらゆる人材に当てはまるものではありませんが、実証研究に基づき、かつ書籍等によって世の中に広く知られたものは、どこかに汎用的、普遍的な要素を含むものです。自身の特徴、特性も踏まえたうえで、そうしたリーダーシップ論のエッセンスを認識しつつ、取り入れられる部分は取り入れると効果的です。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
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さまざまなリーダーシップ
リーダーシップに関しては、今もさまざまな考え方が提唱されています。ここでは第五水準のリーダーシップとEQリーダーシップを紹介します。いずれも提唱されてからしばらく経ちますが、いまでも参考になる考え方です。
第五水準のリーダーシップ
ジェームズ・コリンズらの調査によると、よい企業を偉大な企業に飛躍させた経営者は全員、同じ性格を持っていることがわかりました。それが、「第五水準」すなわち、謙虚さと不屈の精神を併せ持ったリーダーシップです(図参照)。第五水準の経営者は驚くほど謙虚であり、控えめで飾りません。成功したときは自分以外に成功要因を見つけ、結果が悪かったときは自分に責任があると考えます。謙虚さを装っているのではありません。周囲からも無口、内気、丁寧、穏やか、目立たない、飾らないと評されています。
さらに、謙虚ながら意志が強く、控えめながら大胆という二面性を持っています。野心的であるのは確かですが、野心は何よりも会社に向けられており、自分個人には向けられていません。後継者を選ぶときも、次の世代でさらに偉大な成功を収められることを考えて選びます。
EQリーダーシップ
「EQリーダーシップ」は、ダニエル・ゴールマンが提唱したリーダーシップ行動モデルです。2002年に翻訳された『EQリーダーシップ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方』も、ベストセラーとなりました。
多くのリーダーシップ理論が、外面的な行動特性に基づくのに対し、EQ理論では内面的な、「リーダー自身の感情の認識とコントロール」に注目しています。自らの感情を制御しつつ、「前向きなプラス感情」を発信することが、リーダーには求められます。ポジティブな感情が部下の気持ちに訴えかけ、よい雰囲気を醸成して集団を共鳴させれば、最高の結果を引き出せるからです。
さらにゴールマンは、組織に共鳴を起こすリーダーシップ・スタイルを6つに分類しました。優れたリーダーは、TPOに応じて、これら6つのスタイルを使い分けているのです。
(本項担当執筆者:鎌田英治 グロービス経営大学院教員)
『自問力のリーダーシップ』
鎌田英治(著)、ダイヤモンド社
1,728円