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第19回 『リーダー・パワー』ほか

投稿日:2009/01/14更新日:2019/04/09

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多くの場合、現実主義によって鍛えられていない理想主義は、世の中の改善にほとんど役に立たない――。長らくハーバードケネディスクールの学長を務め、オバマ政権では駐日大使に内定しているジョセフ・ナイ氏が、ハード、ソフト・パワーという政治学の分析概念をリーダーシップ論にあてはめ、新しいリーダー像を論じる1冊のほか、計3冊を紹介。1万冊読破を目標に掲げるグロービス経営大学院副研究科長・田久保善彦による「タクボ文庫」第19回。

また、新しい年が巡ってきました。昨夏以来、世の中大変な状況になっていますが、何があっても大丈夫なように、日ごろから自分自身の能力開発だけは怠らないようにしたいものです。能力開発といっても、開発する能力も様々ですし、方法も色々あります。読書というのは、そんな中でも、昔々から行われている素晴らしい能力開発の方法ですね。多くの良書に触れ、友人や同僚とその本について語り合う、そんな時間を持てる一年にしていただきたいなぁと思います。

それでは、今年最初の推薦本です。

14歳の君へ―どう考えどう生きるか 池田晶子・著 毎日新聞社・刊 2006年

2007年に他界された哲学者である池田晶子氏の著作。グロービス経営大学院で教鞭をとる経営競争基盤CEOの冨山和彦氏の著書の中で、池田氏のコメントが引用されているのを見て、興味を持ったのが最初です。調べてみると、彼女の本の多くが再版を重ね、日常の言葉で哲学をするというスタイルが、非常に多くの方に読み継がれているようです。つい最近も、生前に書かれて原稿をまとめた新刊が発売になりました。

今回紹介するのは、大ベストセラーになった『14歳からの哲学―考えるための教科書』(トランスビュー)の姉妹本。「哲学」の方は池田氏の思想の理論的背景について書かれた本ですが、この1冊は、05-06年に毎日中学生新聞(現在は休刊)に連載したものに書き下ろしを加え、エッセイ風にまとまられています。

・人が生きていくのは、よい人生を生きるためだ。自分にとってのよい人生、幸福な人生を生きることが、すべての人の人生の目的だ

・君が本当の君じゃないから、君にはいつまでも本当の友達ができないんだ。人に嫌われたくない、好かれたいというその思いが、君を本当の君でなくしているんだ。

・歴史を知るということは、自分を知るということだ。

・「道徳」というのはまさに、その「どうやって生きるのか」を考えることなんだ。

・人間が言葉を支配しているのではなくて、言葉が人間を支配しているということだ。

・受験への役には立ちませんが、人生の役には必ず立ちます。皆様への信頼とともに。

14歳の人を対象にした本ではありますが、人生や生き方について考えるために、ぜひ大人に読んでもらいたいと思う一冊です。

非常識経営の夜明け 燃える「フロー」型組織が奇跡を生む 天外伺朗・著 講談社・刊 2006年

ソニーの元役員で、AIBOなどを開発した技術者(工学博士)にして、ベストセラー作家、瞑想家、最近では教育問題や医療問題といった様々な社会問題にも取り組まれている天外伺朗氏の最新刊です。

この本のベースは『マネジメント革命 「燃える集団」を実現する「長老型」のススメ』(講談社)という本ですが、そこから更に進化した内容が書かれています。基本的なコンセプトは、合理主義の経営学から人間性経営学へのトランジション。キーワードは、「長老型マネジメント」、「燃える集団」、そして「信頼」。こんな言葉にピンと来る方は是非読んでいただきたい本です。

グロービス経営大学院でも「どのような人間観を持って経営をするのか」ということは常に重視しています。また、経営道場というクラスで、「人間」を扱ったクラスを展開しており、天外氏の考え方に共鳴できる部分も非常に多いです。心に残ったフレーズを。

・経営学が「腑に落ちる」と前に記した「身体的に把握して、自分のものにする」状態になる。そこまでいけば「経営学」は実務の役に立つだろう。

・目先の業績や、自らの名誉などより、部下の成長を優先するのだ。部下は、上司が本気で自分のことを考えてくれることがわかれば、死に物狂いで働き、スーパーマンに変身する。結果的に業績を上げることを優先しているマネジメントより、かえって業績が上がる。

・生まれた人間は誰でも持つ最大の宿題が、死ぬまでにどのレベルに達しているか、ということではないだろうか。

・タオというのは、いにしえの賢人、老子のことばだが、宇宙の秩序の本質、あるいは大自然の大きな流れを意味する。人はタオに沿って動けば、何事もスムースにうまくいく、というのが老子の教えだ。

リーダー・パワー ジョセフ・S・ナイ・著 北沢格・訳 日本経済新聞出版社・刊 2008年

ハーバード大の公共政策大学院である、ケネディスクールの学長を長年勤めた、ジョセフ・ナイ氏によるリーダーシップ論。机上の空論、単なる理論ではなく、数多くの政治リーダー、ビジネスリーダーのコメントや実話をふんだんに盛り込みながら、ハード・パワーとソフト・パワーをいかに組み合わせてリーダーシップを発揮していくのか、について考察を深めていきます。最近のリーダーシップ論によくある、ビジョン、コミュニケーション、EQなどのソフト・パワーの重要性を説くだけでなく、組織や政治といったハード・パワーの重要性も説いているあたり、逆に非常に新鮮かつ現実的です。

・成功の秘訣は、リーダーが、ハード・パワーの資産とソフト・パワーの資産を適切な状況の中で組み合わせる能力にかかっている

・ハード・パワーとソフト・パワーをいつ、どのように使えば最大の効果を発揮できるかは、状況が決める。

・実際には、成功を収めるビジョンとは、集団の要求の中から発生したものが、リーダーによって形を整えられ、明確になっていったものが多い。

・成功するビジョンは、ある集団が直面している状況を的確に診断したうえでつくられていなければならない。

・ある状況が別の状況へと変わって・・・・・リーダーの影響力が増大するか、減少するかは、リーダー個人の仕事のスタイルが、組織のニーズや外部の状況に、どれだけうまく適合するかにかかっている。

・多くの場合、現実主義によって鍛えられていない理想主義は、世の中の改善にほとんど役に立たない。

ビジネススクールの教授ではなく、政治学者の書いたリーダーシップ論、ご堪能あれ。

  • 田久保 善彦

    グロービス経営大学院 副学長

    慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修了。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業、中央省庁(経済産業省、文部科学省他)、自治体などを中心に調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院及びグロービス・マネジメント・スクールにて企画・運営業務・研究等を行なう傍ら、グロービス経営大学院及び企業研修におけるリーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。経済同友会幹事、経済同友会教育問題委員会副委員長(2012年)、経済同友会教育改革委員会副委員長(2013年度)、ベンチャー企業社外取締役、顧問、NPO法人の理事等も務める。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』(ダイヤモンド社)、共著に『志を育てる』、『グロービス流 キャリアをつくる技術と戦略』、『27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10』、『創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』(東洋経済新報社)、『日本型「無私」の経営力』(光文社)、『21世紀日本のデザイン』(日本経済新聞社)、『MBAクリティカル・シンキングコミュニケーション編』、『日本の営業2010』『全予測環境&ビジネス』(以上ダイヤモンド社)、『東北発10人の新リーダー 復興にかける志』(河北新報出版センター)、訳書に「信念に生きる~ネルソン・マンデラの行動哲学」(英治出版)等がある。

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