営業プロセスの可視化なくしてパフォーマンス向上なし 

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ビジネスマン『法人営業 利益の法則』から「結果管理vs.プロセス管理」を紹介します。

営業は企業にキャッシュをもたらす大切な存在ですから、営業担当者一人ひとりが受注額や売上げといった最終的な数字にこだわるのは当然です。一方で、こうした結果としての数字にのみ過度にこだわることは、さまざまな弊害をもたらすことが知られています。昨今では、結果も重視しつつ、営業プロセス上の数字、たとえば顧客訪問件数や面談時間、あるいは提案から受注に至った比率、受注に至るまでに要した時間などをKPI(重要業績管理指標)として測定・可視化し、アドバイスや育成、最適配置などに活かす企業が増えています。何をKPIにするか、あるいは結果とプロセスをどのようにバランスさせるかなど、考えるべき点は多々ありますが、結果重視だけでは昨今立ち行かなくなってきていることを強く認識すべきなのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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結果管理vs.プロセス管理

営業組織の管理方法は、大きく、最終営業成績に重点を置く「結果管理」のアプローチと、商いを獲得していく過程に重点を置く「プロセス管理」のアプローチに分かれます。

結果管理の場合、営業担当者は自由度の高い環境下で自ら営業戦略を立てて実行し、売上げやマージンといった最終成果に基づいて人事評価を受けます。営業プロセスの設計については担当者の裁量に任されているので、途中でマネジャーが指導やアドバイスをすることは少なく、担当者からの経過報告もあまり求められない傾向にあります。

一方のプロセス管理の場合は、営業マンは会社が定めたプロセスに沿って営業活動を進めるよう求められ、推奨されている活動(例えば、顧客現場でのデモ実施や、既存顧客への紹介依頼など)の実行度や、その活動を実行するためのスキルの習得度など、多数の項目に基づいて評価を受けます。マネジャーは常に営業マンの行動に目を光らせており、営業マンからマネジャーヘの報告や相談も頻繁になされます。

かつての営業現場では、どちらかと言えば結果による管理が主流でした。営業という仕事は、他の仕事(研究開発や人事総務など)に比べて売上げという結果がダイレクトに見えるため、何をしたかというインプットよりも、どういう成果が出たかというアウトプットに意識が向きやすかったからでしょう。

また、営業対象である顧客は、一社一社で要望が異なっており、時間とともにニーズが変わることも多いので、担当者としては画一的なプロセスではなく、自己裁量に基づいて柔軟に動こうとする傾向が強くある点も指摘できるでしょう。こうした営業という仕事の特性が、多くの営業組織がプロセス管理ではなくて結果管理を好んできた背景にあるものと思われます。今でも「営業マンにはノルマがあるのが当たり前」とか、「営業は、一番稼いだ奴が偉い」といった発言が、現場で堂々とまかり通っている会社は少なくありません。

しかし昨今は、経営環境の変化に伴い、結果管理の弊害が目に付くようになってきました。

図

●改善ポイントが見えない

日本経済全体が低成長時代を迎える中、各企業は、売上げが伸びない中でも確実に利益を出せる、筋肉質の組織作りを目指しています。当然ながら営業方法も一段と効率化したいところなのですが、結果管理では営業プロセスが見えていないため、営業マン自身もその上司も、どの部分を改善すべきかの判断がつかないのです。

結果管理の下では、営業成績が不振に終わっても、その原因を、見えてこない営業プロセスよりも相対的に見えやすい外的要因(不景気など)や特殊事情(顧客の方針変更など)のせいにしがちです。こうした中で、営業方法自体の効率化に踏み込むのは極めて困難なことです。

●変化への対応が遅れてしまう

製品ライフサイクルが短命化したり、業界内の競争ルールが急に変わったりと、経営環境が変わるのはもはや当然の前提となっています。結果管理では、最終の営業成績が出てみないと自社のビジネスがうまくいっているか否かを把握できず、環境変化の認識が遅れがちになります。市場ニーズと自社製品とのズレが生じているにもかかわらず、年度決算の数字が出るまで製品改良の必要性に気がつかなかったなど、状況把握が遅れて、問題が長期間放置されてしまう危険性が高まっています。

●人材育成が非効率的になってしまう

企業が取り扱う提供商品やサービスの複雑性は増す一方です。そして、それに伴って、営業に際して高度な技術的理解や幅広い製品知識が必要になり、営業の各段階で踏んでおくべき手順も複雑になっています。つまり、新しく入ってきた営業マンにとって、習得すべきことが非常に増えているのです。にもかかわらず、結果管理では、やるべきことや要求されるスキル、知識が可視化されておらず、人材育成が非常に難しいのです。多くの新人営業マンが、複雑なものを複雑な形のまま、見よう見まねで覚えていくので、戦力化するまでに時間がかかってしまうのです。

●短期志向になりがち

また結果管理については、従来から営業マンが短期的視野になりやすいという点も指摘されています。手っ取り早く結果を出そうとするあまり、顧客満足につながらない営業行為に手を染めてしまい、後で顧客の不信感を買うケースが多いとも言われています。この指摘が正しいとすれば、顧客企業との長期的関係を前提とする本書の顧客深化モデルには、結果管理のスタイルはあまりフィットしないと言えるでしょう。

(本項担当執筆者:山口英彦 グロービス経営大学院教員)

『法人営業 利益の法則』
山口英彦(著)
1382円

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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