『ポスト平成のキャリア戦略』――ハングリーで高貴な仕事人生を送るために 

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リーダー「今の日本にも、貪欲に金銭や名誉を求めるハングリーな人はいます。高貴な気概に満ちたノーブルな人もいます。しかし、ハングリーかつノーブルな人はほとんど思いいたりません」

挑戦的ともとれる書き出しで始まる本書。2人の著者が「ポスト平成の時代に日本の社会・ビジネスはどのように変わっていくのか」「偉大なリーダーになるために、20/30/40代それぞれの年代をどう生きていくべきか」等のテーマについて、自身の知見を余すところなく語っている。自分より若い世代に大切なことを伝えたい、そんな温かい気持ちがひしひしと伝わってくる本だ。

詳細は本書を読んでいただくとして、ここでは知見録読者の関心が深いであろう、「20代・30代向けの年齢別のキャリア戦略」について印象に残った点を記したい。

20代「プライドを捨てて自分をリセットし、“過疎地の駅長”を目指せ」

“過疎地の駅長”と聞くと、どのようなイメージを持つだろうか。過疎地の駅長は花形ではないかもしれないが、自分ひとりで判断をし、多くの仕事をこなさなければいけない。全体の一部の仕事だけをこなせばよく、頼れる先輩がたくさんいる大きな駅での勤務と比べると、仕事の性質が大きく異なるだろう。本書では、こうした“過疎地の駅長”的なキャリアを20代の読者にすすめている。

著者の塩野誠氏は、自身での起業経験に加え、20代でライブドアのフジテレビの買収案件に主担当として携わるなど、小さな組織で自身の責任が問われざるを得ないポジションを複数経験している。そうした自身のキャリアを振り返り、多くの仕事において自ら判断をこなしていくことで、仕事の全体感をつかみ、オーナーシップを持てるようになると語る。

もし、リーダーやマネジャーを目指すのであれば、「自分がやるしかない」という意識を持ち、のめり込んでやりきる力をつけることが非常に大切という著者の主張は説得力がある。裏返せば、たとえ体裁や居心地が素晴らしくとも、「自分で考えなくてもよく、当事者意識が育まれにくい仕事」の割合が高くなってしまっている場合は、危機感を持つべきかもしれない。

多くの仕事をこなし自分で意思決定をしていく過程では、数多くの失敗を経験するだろうし、“自分は何者でもない”という事実にも向き合わざるをえないだろう。これは決して心地よいものではないが、新しく生まれ変わるきっかけにもなりえる。また、一度自分の無力さに向き合えると、謙虚さと客観的な視点を持って自身の能力を開発したり、ロールモデルとなる誰かに私淑することでき、結果的に高速で成長することが可能だ。

「コーチャビリティ=いろいろな人の意見やアドバイスをいったん受け止めて、自分に必要なものを咀嚼する能力」を高め、目の前の仕事を通して信頼を蓄積しながら、自身の目指す方向性を見極めていく。20代の読者の皆さんも、そんなキャリアにトライされてみるのはいかがだろうか。

30代 「リーダーを経験し“人間”を理解する、領域侵犯を恐れず勉強する」

30代では、まずはマネンジメント経験が必須となる。3人でもいいので部下をまとめ、決断を下すことを体験すべき、と著者は説く。

なぜか。1つ目の理由は、リーダーになったことがないと、リーダーの難しさやリーダーの内面を理解することができないからだ。意思決定者であるリーダーがどんな情報を求めているのか、どんな風に彼女・彼をサポートすればいいのか、やってみるからこそ見えてくるものがある。

もう1つの理由は、部下の関心事は何か、何をインセンティブとして働いているのかを考える体験を積めることにある。自分が目をかけている部下は、もしかしたら最近生まれた赤ちゃんのことを考えているかもしれないし、親の介護に集中したいと考えているかもしれない。異なる価値観の人をまとめ結果につなげていくのがマネジメントだとすれば、キャリア全体の中で30代というタイミングはまさに最適なタイミングかもしれない。

日本でも世界でもライフスタイルの多様化が進む。人種や宗教も含めて、様々なパターンに対する理解力はますます重要になっていく。それぞれの価値観やインセンティブを見抜き、多様性を受けとめながらも、普遍的な価値観を提示していくことが求められている。

思想や価値観を語るソートリーダー(Thought Leader)の領域と、ビジネスリーダー(Business Leader)の領域は近づいている、ともいえる。今後のキャリアを考える読者の皆さんにとって、示唆の多いアドバイスではないだろうか。

また、20代でだんだんと明らかになってきた、「この分野で生きていく」という方向性を追求していくことも重要だ。そのために、様々な分野に領空侵犯してもよい、と著者は説く。自分が問題解決に必要だと思うことをインストールし、自分をアップグレードする学習を積み重ねる。複数分野にまたがり知見を深める、いわゆる「キャリアの掛け算」が、自分ならではのキャリア開発にもつながっていくのではないだろうか。

ノーブルなビジョンを持ちつつ、ハングリーに目の前のチャレンジに食らいつく。そんな心がけをもってリーダーを目指す方には、気づきの多い1冊となることは間違いない。

 

『ポスト平成のキャリア戦略』
塩野誠(著), 佐々木紀彦(著)
幻冬舎
1620円

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