堀義人のダボス会議2018速報(2)分断された世界で共通の未来を創る 

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いよいよ今年のダボス会議が始まった。ダボスは大雪だ。歩いてメイン会場であるコングレスセンターに着くころには、帽子からコートまでが真っ白になっていた。

会場に入り全体を眺めていたら、幸いにも最前列に誘導してもらえた。目の前をクラウス・シュワブ会長が通り過ぎたので、軽く会釈をした。そして、大雪のため35分遅れてダボス会議2018がスタートした。まずは、クラウス・シュワブ会長のオープニングスピーチだ。ポイントは4つだ。

1) ダボス会議は、コンファレンスではなくてコミュニティである
2) 問題解決するために関与するマルチステークホールダーである
3) 多様性を重んじて、社会を良くするという明確なダボス精神を持っている
4) そして、魂と情熱を持った仲間だ


シュワブ会長の後は、ピーター神父による特別メッセージだ。今年のダボス会議は、精神性を重んじているようだ。「人間性の向上のために我々は貢献しなければならない」。

クリスタル・アワード授賞式が始まった。世界に貢献した社会起業家を称えることが目的だ。シュワブ夫人は黒い服を着ているが、#MeTooに共感しているのだろうか?最初の受賞者は、Cate Blanchett氏だ。UNHCRの親善大使であり、かつ女優としてアカデミー賞を2度も受賞している。

2人目の受賞者は、インドのボリウッドスター、Shah Rukh Khan氏だ。紹介文には、「俳優、起業家、慈善活動家、インドの俳優の最前線に25年間いる」と紹介されている。彼も全身黒で登場した。

3人目の受賞者は、エルトン・ジョン氏だ。歌手、作曲家であり、財団をつくって活動している慈善活動家でもある。「ダボス会議に参加した人々は、成功したんだ。だが、お金や名声よりも大事なものがある。僕は財団をつくって社会を良くするために活動している。ぜひ一緒に行動を起こそう」という趣旨のスピーチだった。

年をとったけど、いい声をしている。昔からずっとエルトン・ジョンの音楽を聴いていたから、「演奏して歌ってくれないかな」、と密かに期待していた。(^^)

オープニングパフォーマンスが始まった。スカラ座のプリマバレリーナRoberto Bolle氏とCameristi della Scala室内管弦楽団だ。素晴らしい。でも、今からアジアン・フレンズ・ディナーに直行しなければならない。後ろ髪を引かれる思いで、目立たないように途中退席した。

ダボス会議初日の夜は、Lippoグループ総帥のJames Riady氏と共同主催するアジアン・フレンズ・ディナーだ。アジアからはベトナム、タイ、マレーシア、中国、韓国の仲間が、世界からは南アフリカ、英国、カナダの仲間が集まり、20名程度で徹底的に世界情勢、テクノロジー等ディスカッションした。

今年で2回目となるアジアン・フレンズ・ディナーは、CAVEと呼ばれる洞窟的なレストランを借り切って開催。日本からは、広島県の湯崎知事らも参加された。世界に仲のいい友達がいるのは本当に嬉しいことだ。しかも勉強になる。

ホテルに向かって雪道を歩いていると、道端で声をかけられた。帽子をかぶっていたから、すぐにはわからなかったけど、声の本人はリークワンユー公共政策学院のキショール・マブバニ前学長だった。歩きながら色々と情報交換をした。このカジュアルな密度の濃いネットワークがダボスの醍醐味だと思う。

ホテルの部屋に着いた。濃密な1日が終わった。今年のダボス会議のテーマは、「分断された世界で共通の未来を創る」だ。ダボス会議では1000以上ものセッションが開催されるが、それぞれの分野でテーマに基づいた議論が行われる。

ディナーでもそのテーマについて全員で議論した。「分断された世界」とは、保護主義の台頭であり、経済的格差であり、民族間の紛争であり、地球温暖化などにもしっかりと対応できていない国際社会であろう。あるいはFake Newsや#MeTooなどのセクハラ問題に代表される社会的分断だろうか?

ディナーの参加者が興味深いことを言っていた。「ダボスに26年間も来ているが、ずっとダボス会議はリアルな世界だと思っていた。だが、英国EU離脱やトランプの出現をみて、ダボス会議はリアルな世界ではなくて、リアルな世界と乖離してしまった場の様に感じ始めた」と。

その分断をなくすために、ダボス会議では社会起業家を讃える賞を出している。だが、その受賞者も、実際には著名な歌手や俳優だ。これではセレブの会合と批判される可能性がある。僕は、その分断や乖離を極力なくすべく、微力ながらも常に発信し続け、対話して、問題解決するために行動していきたいと強く思った。

その分断された世界で、「共通の未来を創る」ことは本当にできるのだろうか――社会全体が多様化している。ディナーでは家族観についても議論した。家族観ばかりでなく全ての分野でさまざまな価値観を容認し、積極的に受け入れる時代となった。多様性でありグローバルな社会だ。

一方では、アメリカ人は16%しかパスポートを持っておらず、過半数は州さえも渡らないとの指摘もあった。トランプ大統領がダボスでスピーチをするが、彼が結局訴えかける相手は世界ではなくて、彼が大事だと思っている米国人に向けての内向きなスピーチになるのではないかとの意見もあった。

そして、結局トランプ大統領が会期中の最終日にスピーチをして、全てを壊して行くのではないかという指摘もある。

そのようなもやもやとした空気感が漂い、大雪によって交通渋滞や混乱が起こっている中、ダボス会議2018は始まった。

いよいよ明日から本格的な議論が始まる。明日に備えて早めに寝ることにする。

2018年1月23日
ダボスにて
堀義人
 

【ダボス会議2018速報】
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堀義人のダボス会議2018速報(6)今年のダボス会議5つの総括

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堀義人のダボス会議2017速報(1) Brexitやトランプ氏への不安蔓延、「対話」の重要性と「日本」の役割を痛感
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京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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