堀義人のダボス会議2018速報(3)社会の信頼崩壊を食い止める企業・個人の役割 

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ダボス会議2日目、朝7時前にホテルを出て歩き始めた。まだ辺りは暗い。ダボス会議では、プライベートな朝食会が朝7時から開催される。だからか、道が早朝から渋滞している。賢いのは、ひたすら歩くことだ。

エデルマン社の信頼度調査(トラストバロメーター)朝食会に参加。立食形式で腹ごしらえしながら、参加者と談笑する。会場に着席し、朝7時半にリチャード・エデルマン氏が登壇してセッションが始まった。信頼度に関しては、コラムの最後に僕なりの考えを述べてみたい。

リチャード・エデルマン氏のスピーチの後は、パネルディスカッションだ。登壇者は、NYタイムズ、マイクロソフトやABBなどのリーダーだ。エデルマン社の朝食会は、いつもとても興味深い。

エコノミスト誌主催の朝食会にも参加した。BCG東京オフィスの津坂さんが登壇している。テーマは、「Business Case for Openness」。モデレータは、日本に駐在していたTamzin Boothさんだ。エデルマンの朝食会でも感じたが、ビジネスが本業を通して社会を良くすることの重要性が語られている。

朝食会を終えてコングレスセンターのセッションへ。テーマは、「In Technology We trust?」だ。UBER新CEOとセールスフォースのマーク・ベニオフCEO、WPPのマーティン・ソレルやグーグルのCFOが登壇している。モデレータは、NYタイムズの編集長。注目のセッションだ。ここでも信頼(トラスト)が一つのキーワードになっていた。まさに、世界全体が「信頼崩壊」の状況なのだろう。

今年のダボス会議の基調講演は、インドのモディ首相だ。ちょっとビックリしたのは、モディ首相がヒンディー語でスピーチしていることだ。4年前のダボス会議の基調講演を英語で実施した安倍総理を、改めて評価したい。通訳を通しては、なかなか熱が伝わらないものだ。

メイン会場を出て、ブルームバーグ・ランチに参加するために会場となるホテルに向かった。昨日の大雪からうって変わって、ダボスに晴れ間が見えている。 比較的に暖かいので、路面の雪が溶けてぐしゃぐしゃでちょっと歩きにくい。

ダボス会議で開催されるプライベートイベントでは、朝食・ランチ・夕食会を含めて、着席形式の場合には全てセッションを行い、参加者に学びの機会を与えているのが1つのパターンになっている。参加者は、ネットワークができて、食事もできて、学びがある、一石三鳥だ。(^^)

ブルームバーグ・ランチには初めて招待された。テレビが配置されていて、そのまま配信・放映できる体制になっていた。短い時間に全部で3つのセッションを実施していた。セッションは面白い。だが、ダボスでは食事にほとんど期待できないのがちょっと残念なところだ。

メイン会場に戻った。ほぼ全ての登壇者が女性という珍しいパネルセッションに参加している。タイトルは、「Gender, Power, and Stemming Sexual Harassment」。#MeToo運動があったので、ダボス会議でどういうトーンで議論されるのかに興味を持って参加している。会場の参加者も8割ほどが女性だった。

夕方5時半から6時までは、バイ会談を実施した。ダボス会議では、参加者にアクセスするためのトップリンクというプラットフォームがあり、バイ会談をどんどん申し込むことができる。旧知の仲であれば、メールを使って会いたいと申し入れても良い。

僕はこの日、グロービス・キャピタルと合弁を組んでいたApax PartnersのAndrew Sillitoe社長と談笑した。彼がApaxに入社してすぐ、ロンドンオフィスで机を並べていた仲だ。最近のApaxについての意見交換をした。盛り上がりすぎて、写真を撮るのを忘れてしまった。(^^;;

ダボス会議の夜は、6時から8時のカクテルレセプション、8時から10時のディナー、夜10時から深夜のナイトキャップと大きく3つに分かれている。大学や企業、メディアなどが「ナイト」と称するレセプションを実施している。

僕は、夕方のレセプションの時間帯にハーバードとWSJのナイトに参加した。ハーバードの先輩でもあるリチャード・エデルマン氏とツーショット。

WSJのレセプションにて。ダボス時間は夜7時過ぎになったので、夜8時からのG1戦略ディナー@ダボスの準備のために、コングレスホテルに戻った。

ダボス会議の2日目の夜8時から10時までのディナータイムに、G1戦略会議を実施した。湯崎広島県知事、高島福岡市長、リクルートの峰岸さん、武田薬品工業の平手さん、ユニゾンの川崎さん、TABLE FOR TWOの小暮さん、グローバルシェーパーズから選出された樋口亜希さんなどが集い、ダボス会議で学んだことの共有、世界と日本の課題について徹底的に議論した。仲間と議論することで、今までの理解が深まるものだ。

夜10時にG1戦略会議@ダボスを終えた。早朝から動き回っていたので、かなり疲れてきた。参加予定だった2つのナイトキャップに参加する元気が残されていないので、そのまま明日に備えて部屋に戻り、エネルギーを充電することにした。

今日感じた大きなテーマは、「信頼崩壊」である。エデルマン氏によると信頼度調査を開始してから社会の中で最も分断が多かったのが、英国、米国、フランスの3カ国であった。その結果が先の英国のEU離脱の国民投票と米国のトランプ選挙とフランスの極右の台頭である。

現在は、社会の分断が起こっている。半分以上の人は今や既存メディアを読まない。60%近くの人がSNSによって欲しいニュースだけを得るようになる。その一方では、過半数がFake Newsかどうかの判断ができないという。

こういう分断された社会の中で、どうやって人々に到達(リーチ)して、信頼を得るべきなのだろうか?政府やメディアの役割は、企業や個人の役割は?

答えは、ある意味明白だ。企業や個人が事実に基づき誠実に地道に発信するしかないのであろう。全ての企業はメディアであるという認識を持つとともに、全ての人々がメディアの機能を果たせるという自覚が必要なのだろう。

沈黙は選択肢ではない。疑心暗鬼を生むだけだ。一方、感情に訴えかけるコミュニケーションにも限界がある。常に論理的に事実やデータに基づき、自らが正しいと信じることを、発信し、行動することだろう。これが唯一の信頼を高める方法だと思う。

企業や個人への信頼度が増すと、その企業や個人がメディアとなり、ロールモデルとなる。その企業や個人へのフォロワーが増えると、その企業や個人が社会の中のリーダーになり、信頼された企業や個人が増えると、社会全体の信頼度が向上するのだと思う。

政府やメディア、さらには他の企業・人に頼るのではなくて、自らがそう自覚すべきなのであろう。一人ひとり、1社1社がそう自覚し、発信・行動することによってのみ、信頼に足りる社会をつくることができるのであろう。

まずは、グロービスそして僕個人がその自覚を持ち、発信し、行動していきたい。

2018年1月24日
ダボスにて
堀義人

 

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京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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